発行:長崎出版 この版元の本一覧
四六判 264ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-86095-307-2 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年12月 書店発売日:2008年12月22日
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九〇年代以降というのは大人と子どもの境界線がなくなり、高校生や子どもに対して大人が寛大になった時代といえる。境界線の薄れは、子どもに「何をやるのも自由」という思いを抱かせることになった。九〇年代以降というのは新自由主義<ネオリベラリズム>の時代だ。親や教師は子どもの思いや願い、希望、夢を最大限かなえてあげるのがよいこと、子どもの自由を最大限認めるのが理想的な大人であると考えるようになった。子どもの生き方、考え方の自由を保障し、これを制限しないのが望ましいという風潮が広がっていった。言い換えれば自己実現のすすめである。そう考えると大人と子どもの境界線の消滅は、「個人の自由」「自己実現のすすめ」とセットになっていることがわかる。
その結果、子どもはさまざまな「夢」や希望を持ち(持たなければいけないと思い)、それを達成したいと言い始めるようになった。昔なら「お金がない」「女だから」という理由で、親たちはそれに対処できた。けれども今では「それはあなたに不向きだから、無理なことだよ」「達成できる可能性はほとんどないよ」とか、あるときは「あなたの能力に合っていないから諦めた方がいいよ」と、あからさまに「ノー」と言えなくなったのである。
そして若者は目的のあること、意味のあること、自立することにこだわりすぎるようになり、かえって自分を苦しめている。
学校教育も自己実現にこだわりすぎるあまり、「食」など日常生活の些細で当たり前のことの大切さを伝えなくなった。その結果、ごく簡単な料理すら作る暇もなければそれを作ろうと考えるゆとりも技術もない。周囲には簡単なレシピや安い食材だって沢山あるのに、それらを活用していないのは残念なことだ。
自己実現を追い求めたからといって、生涯安定した仕事に就けるという保障はない。かえって自己実現などを考えないほうが、仕事を持続可能かもしれない。さらに翻って、誰かにもたれかかるなりパラサイトするなりして、自立せずに生きる道だってある。そう考えれば、自分探しとか自己実現にサヨナラすることのほうが、ずっと楽に生きられるのではないだろうか。
著者プロフィール
梶原公子(カジワラキミコ)
家庭科教員として高校に20年あまり勤務。その後、立教大学大学院にて社会学修士。聖徳大学大学院にて栄養学学位、管理栄養士資格を取得。昨今の「食と栄養」に関わる諸現象、ことに若者の食の実態について、社会学的見地から調査、研究を行っている。現在、社会臨床学会運営委員。
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