発行:長崎出版 この版元の本一覧
四六判 240ページ 並製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-86095-217-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年11月 書店発売日:2007年11月19日
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はじめに
序章ー三浦宏文
第1章 絶対弱者とは
教育現場における絶対弱者
社会における絶対弱者
絶対弱者の問題点
第2章 絶対弱者の風景
国立大学附属中学校には入ったものの
一度落ちることの意味
さまよう心
素直ないい子
クレーマー化する親子
第3章 絶対弱者の社会背景と時代
絶対弱者はいつ生まれてきたのか〜その時代背景
絶対弱者はなぜ生まれたのか〜その社会的背景
絶対弱者は障害者ではないのか
絶対弱者の生きる時代
終章 絶対弱者とどう向き合うかー対談
絶対弱者の発見
教育現場における絶対弱者の現状
絶対弱者とどう向きあうか〜処方箋はあるのか
あとがき
参考文献
前書きなど
「いや、まじ平気っすよ」
二週間ぶりに予備校に出てきた彼は、こともなげにそう言った。受験の山場といわれる夏は過ぎ、もう一一月に入ろうかという時期だった。
彼は、高校を卒業したいわゆる「浪人生」であるが、なぜか四月から予備校に入学した生徒ではなく、九月頃からポツポツと顔を見るようになった子だ。
後から入学してきたこともあってか、予備校内に友人もいないようで、どちらかというといつもぽつんと一人でいるイメージが強い。
成績は、学力別クラスで社会科だけは上位クラスであったが、他の科目は全て基礎クラス。本人はそれが気にくわないらしく、英語や、私の担当する現代文の授業は欠席しがちであった。
「本当に大丈夫なの? もっとしっかりやんないと、厳しいよ。志望校は結構(偏差値が)高い所なんでしょ?」
「いや、まあ……。でも先生、ぶっちゃけ、MARCH以下は、行く価値ないっしょ?」
このMARCH(マーチと発音する)とは、首都圏の有力大学である、明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学のアルファベット表記の頭文字をとった略称である。語呂合わせが好きな受験界の業界用語だ。
この子は、よくこういう他者を見下すような発言をする生徒だった。しかし悲しいことに、彼自身のその時点での学力は、おそらくそのMARCHと呼ばれる大学群よりかなり入りやすい大学でも、合格は厳しい状況であった。私はまず、その偏差値至上主義的な偏見に釘を刺したうえで、彼の傲慢さをたしなめた。
「そんなことはないよ。それぞれの大学の個性ってのがあるんだから、偏差値だけでみてもしょうがない。それより、そんな贅沢言える状況なの? ちなみに、模試はどれぐらいとってんの?」
「いや、模試は受けてないっすよ。つうか、あれ、金の無駄じゃないっすか?(大学)入試で同じ問題が出るわけじゃないんだし」
「いや、意味あるよ! 模試は大学を目指す受験生の中で、どれくらいの位置にいるかを知る大事な資料になるんだよ。それによって、どれくらい君が頑張らなければいけないかがわかるんだから。ていうか、模試全く受けてないの?」
驚くことに、二年目の受験生であるにも関わらず、彼は過去に模擬試験を一度も受けたことがないというのだ。大学入試の模擬試験は、全国規模のものだけでも3〜4種類あり、少なくとも大学進学を目指す、いわゆる「進学校」の高校ならば、いずれかの業者の模擬試験を受けさせるのが通例だ。私はにわかには信じがたかった。
関連書
「下流志向」内田樹(講談社)
「社会的引きこもり」斎藤環(PHP)
「下流社会」三浦展(光文社)
「他人を見下す若者たち」速水敏彦(講談社)
「若者を見殺しにする国」赤木智彦(双風舎)
関連リンク
http://homepage3.nifty.com/sbtetuya/
著者プロフィール
三浦宏文(ミウラヒロフミ)
1969年長崎市生まれ。東洋大学文学部印度哲学科卒業。同大学院文学研究科博士後期課程修了・博士(文学)。インド哲学専攻の大学院在学中から、塾・予備校・公立高校・私立高校・養護学校など様々な教育現場を経験する。
現在、複数の予備校・高校の講師及び、東洋大学東洋学研究所奨励研究員。
著書『インド実在論思想の研究-プラシャスタパーダの体系-』(ノンブル社)
渋井哲也(シブイテツヤ)
1969年栃木県生まれ。東洋大学法学部卒。長野日報記者を経て、同大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了。フリーランスライター、ジャーナリスト。主なテーマはインターネットコミュニケーション、少年犯罪、依存、自傷行為など。「生きづらさ」を抱えた若者たちの取材を続ける。
著書に、『アノニマス』(情報センター出版局)、『ネット心中』(NHK出版)、『「ケータイ・ネット」を駆使する子ども、不安な大人』『若者たちはなぜ自殺するのか』(小社)、『気をつけよう! ネット中毒・全3巻』『子どものためのパソコン・IT用語事典』(汐文社)、『ウェブ恋愛』(筑摩書房)、『明日、自殺しませんか−−男女7人ネット心中』(幻冬舎)など多数。
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