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「備中神楽」衣装の色彩
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2011年10月
- 書店発売日
- 2011年10月31日
- 登録日
- 2011年8月21日
- 最終更新日
- 2011年10月24日
紹介
岡山の国指定重要無形文化財「備中神楽」。その衣装の色に着目し、130点もの衣装素材から神楽衣装の誕生と発展の過程を解き明します。オールカラー。
目次
はじめに いま、「色」が語るものを考えたい
第1章 備中神楽の変容と衣装の誕生
備中神楽の「はじまり」
初・色彩の視点からのアプローチ
文化文政期における「神代神楽」創案
西林国橋が「神代神楽」に込めた思い
「神代神楽」導入以後の備中神楽の展開
神代神楽の二面性
明治期における神楽の担い手の変化
演劇化と衣装の「はじまり」
第2章 神能における衣装の色彩展開
陣羽織と袴
金刺繍とデザイン
「命舞」の袴
無彩色と「荒舞」衣装
狩衣と役柄による色分け
分析方法について
国譲り「両神」衣装の色
国譲り「大国主命」衣装の色
国譲り「事代主命」衣装の色
大蛇退治「奇稲田姫」衣装の色
大蛇退治「素戔嗚命」(命舞)衣装の色
色系統の一致と微妙な色差が意味するもの
「神服」の衣装化と「色分け」のはじまり
衣装の「華美化」
石見神楽衣装の影響
観光化と衣装の色の変化
揺れる神事と魅せる神楽
五色との試行錯誤
第3章 神事における色彩
猿田彦の舞と衣装の色
「赤・白・黒」の舞
千屋保存会の衣装ルートと木山組の衰退
荒神神楽における五色
「五行」衣装の色
中国古代の五色と後世の五色
衣装の色に見る神楽の本質
総括 概要
おわりに 「色」は生きている
神楽師系譜図
前書きなど
「赤」魔除け、「白」ケガレ、「青」冷静、「黄」元気、「紫」高貴……
どれもよく耳にする言葉である。その通りであるし、インテリアやファッションにも取り入れれば実践的即効性もありそうだ。「色」に関しては、昨今、多くのメディアでその魅力について語られる機会が増えたように感じる。私自身も色についてのあれこれが大好きである。
しかし、一つの疑問がある。
殊に見た目の美しさ(ファッション)やビジネス、心の充足(癒し)ということに関してのみ、色の価値や大切さを唱えすぎてはいないだろうか。たしかに色彩シンボリズム、色彩心理、流行色というものは、大切な情報である。
ただ今ひとつ、なんとなく、ぬくもりに欠けている気がするのだ。アナログ感とでも言うべき何ものかが、(それは確かに「色」であるが)まだ見ぬ正体を潜めている気がしてならない。
「色」の魅力は何かと問われたなら、私はこう答えたい。
「『色』は私たちひとりひとりに素直でまっすぐなメッセージを投げかけてくれている。単にきれいだとか豪華だということではなく、目の前にある色をよくよく観察すれば、その奥にある歴史までが見えてくる。『色』とはそういう生きものではないだろうか」
「色」というのは生活の中で単独で存在するのではない。いろいろな「色」が組み合わさっているから、複雑であるし、おもしろくもあり、それが最大の魅力であると私は信じている。
まっすぐな気持ちで「色」を観察していると、ある瞬間に「色」は不思議なメッセージを語ってくれる。「色」は、そんな、しなやかな「生きもの」でもあるのだ。
日本では伝統文化や民俗芸能の存在意義が薄れて久しい。一方で、いま伝統という存在に救いを求めるかのような一種の「和」ブームのようなものも沸き上がってきている。「あたりまえ」のように存在しているはずなのにどこか遠い存在に感じてしまう日本の伝統文化や民俗芸能。日本人なのに緊張しながら対面してしまう自分さえいる。
さて、このどうしようもない「緊張」という壁を打ち破ってくれるものもまた、「色」という存在であるからおもしろい。
岡山県備中地方に伝わる民俗芸能「備中神楽」(国指定重要無形民俗文化財)。そのなかで「あたりまえ」のようにして着続けられ、県内外、ときには海外でも披露されてきた「神楽衣装」。全国の神楽ファンの存在や先行研究がありながら、あえて明らかにされることのなかった神楽の「色」。
「単純だけど複雑、曖昧だけどゆるぎない」色彩宇宙の根源を解明したくなった。ただ単に視覚的な一面をきっかけに神楽を覗くことになった「不思議」。振り返れば、貴重な体験であった。
衣装の「色」を客観的に観察することが、やがて民俗芸能「備中神楽」の本質を理解することにつながっていくという「不思議」をこの本で味わっていただけたら幸いである。
版元から一言
岡山の国指定重要無形文化財「備中神楽」。その衣装の色に着目し、130点もの衣装素材から神楽衣装の誕生と発展の過程を解き明します。オールカラー。
上記内容は本書刊行時のものです。