発行:吉備人出版
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A5判 163ページ 並製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-86069-106-6(4-86069-106-7) C0021
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年11月
書店発売日:2005年11月25日
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紹介
吉備にある石棺と陶棺の形や大きさ、材質の特徴、素材の供給ルートの変遷、納められた墳丘の形や規模の違い、分布などを徹底分析。古墳時代から飛鳥時代の吉備国の盛衰や首長のネットワークが見えてくる!
目次
第一章 考古資料としての棺
はじめに
第一節 石棺の種類と特色
第二節 陶棺の種類と特色
第二章 前方後円墳の時代の石棺
第一節 前期の石棺
第二節 中期の石棺
第三節 後期の石棺
第三章 前方後円墳以後
第一節 「竜山石」製の家形石棺
第二節 無突起の小形石棺
第三節 横穴式石室と横口式石槨
第四章 吉備の陶棺
第一節 陶棺の分布について
第二節 発掘調査で出土した陶棺
第三節 陶棺の複数使用例
第四節 陶棺の移り変わり
第五章 石棺・陶棺からみた吉備的世界
第一節 多種多様な石棺
第二節 石棺の独自供給と秩序
第三節 陶棺の盛衰と仏教思想
新しい時代への動き
前書きなど
おわりに 新しい時代への動き
本書で飛鳥時代と呼ぶ七世紀代は、律令国家に向けた胎動期として、さまざまな改革や新制度の導入がはかられた時代である。その前半代は、有力氏族の蘇我氏を中心とする政治体制のもとで推移し、六四五年にそれが瓦解した。以後、いわゆる大化の改新と呼ばれる一連の改革を皮切りに、中央集権体制に向けた動きに拍車がかかる。
その背景には、風雲急を告げる東アジア世界の情勢があった。久々の中国統一王朝として五八九年に興った隋は、六一八年には早くも唐に取って代わられる。唐は、東方への膨張策として六四五年に高句麗に侵攻し、六六○年には新羅と連合して百済を滅ぼした。斉明朝は、百済再興のために派兵したものの、六六三年に白村江の戦いで敗れたことによって、朝鮮半島での足がかりを事実上失う。そして、新羅は唐の勢力を駆逐して半島統一を果たす。六七六年のことである。
要するに、とくに白村江の戦い以降は、半島情勢に気を配りながら防衛強化に努める一方で、内政に力を注いで中央集権化を加速せざるを得なかったのである。その途上、六七一年に、一連の改革を事実上推進してきた中大兄皇子、すなわち天智天皇が死去した。その後、壬申の乱と呼ばれる皇位継承争いを制した、天智天皇の弟である大海人皇子すなわち天武天皇と、その皇后である持統天皇の時代に、中央集権体制に向けた諸改革は最終局面を迎える。これが七世紀第4四半期のことである。
前方後円墳の築造は、推古朝(五九二〜六二八年)のうちに停止されたものとみてまず間違いない。以後、方墳が主流となり、少数ながら八角形墳も築造された。墓制を規定した「大化の薄葬令」の実体に関してはなお検討を要するが、局地的に分布する横口式石槨墳は、中央集権化に欠かせない官僚の姿を髣髴とさせる。なぜならば、一墳一葬を前提とするその作りは、横穴式石室墳とは対照的に、各地首長の累代にわたる地域支配を否定しているかのように映るからである。
しかし、横口式石槨墳はあくまでも少数派であり、依然として横穴式石室墳が数多く築造され続けた。中でも、定古墳群から大谷一号墳に至るまでの北房勢力の隆盛は、伝統的な陶棺を多用したこととも併せて、中央集権化の歩みが単純ではなかったことを教えてくれる。
また、国防という点から言えば、鬼ノ城や大廻り小廻りという、岡山県南部に位置する二つの山城の存在を忘れてはならない[文献129]。北部九州から瀬戸内海周辺にかけては類似施設が点在しており、各々に特色をもつものの、戦略的に配された一連の軍事施設であったと思われる。さらに、仏教思想の浸透に伴って氏寺の建立も盛んにおこなわれた。このような営造行為には、前方後円墳の築造をはるかにしのぐ労力が注ぎ込まれたことであろう。
前方後円墳という共通要素が消え去ったことにより、吉備という枠組みもまた曖昧模糊なものとなった。むしろ、かつての吉備のうちで、局地的な個性がより強まったようにみえる。このような飛鳥時代の枠組みをどのように描き出し、局地的な個性をどのように関連づけていくか、また別の意味で考古学の真価が問われているように思える。
版元から一言
吉備にある石棺と陶棺の形や大きさの特徴、材質、素材の供給ルートの変遷、納められた墳丘の形や規模の分布などを徹底分析。古墳時代〜飛鳥時代の吉備の盛衰や首長のネットワーク、大和政権との関係なども見えてくる。
著者プロフィール
倉林 眞砂斗(くらばやし まさと)
1958年、東京都調布市に生まれる。東京大学文学部史学科を卒業した後、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、同博士課程を中途退学。東京大学助手、金沢大学助手を経て、1992年、新設の城西国際大学に専任講師として着任。同助教授を経て、人文学部教授。物質文化研究センター所長。現在の主な研究テーマは、前方後円墳や前方後円墳の墳丘築造企画であり、これと遺物研究との整合的理解の上に立つ首長ネットワークの実体化に取り組んでいる。
主な著作は、「石棺」(『吉備の考古学的研究』〈下〉 山陽新聞社 1992年)、「倭人社会の文字」(『歴史の文字 記載・活字・活版』 東京大学総合研究博物館 1996年)、「遺跡内分析の方法論的展望」(『住の考古学』 同成社 1997年)、「前方後円墳秩序の素描」(『美作の首長墳』(共編著) 吉備人出版 2000年)、「川東車塚古墳にみる墳丘築造企画の要点」(『川東車塚古墳の研究』(共編著) 吉備人出版 2004年)、「山陽」(『日本玉作大観』 吉川弘文館 2004年)等。
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