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この国の医療のかたち 否定された腎移植 村口 敏也(著) - 創風社出版
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この国の医療のかたち 否定された腎移植 (コノクニノイリョウノカタチ ヒテイサレタジンイショク)

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発行:創風社出版
四六判
272ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-86037-098-5   COPY
ISBN 13
9784860370985   COPY
ISBN 10h
4-86037-098-8   COPY
ISBN 10
4860370988   COPY
出版者記号
86037   COPY
Cコード
C0047  
0:一般 0:単行本 47:医学・歯学・薬学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2007年12月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

 愛媛県宇和島市の一病院を舞台に、全国初の臓器売買事件が起こった。続いて明らかになった、病気腎移植。四国の小さな地方都市で相次いでクローズアップされた腎臓移植をめぐる問題は、医療関係者に大きな衝撃を与える一方で、日本の深刻なドナー不足の実情を浮き彫りにした。
 地元テレビ局・テレビ愛媛ではドキュメンタリー番組「この国の医療のかたち ~否定された腎移植~」を制作、まず愛媛ローカルで放送された後、全国の系列局で順次放送され、反響を呼んだ。
 本書は、その制作にあたった著者が、問題の深刻さ、複雑さ、また緊急に対策が求められる事態であることを痛感し、本にまとめたものである。放送同様、病気腎移植だけではなく、生体移植の実情、透析医療の課題、アメリカの最前線の取り組みなど、移植医療の全容を描く中から今回の問題を直視する。

 (渦中の人物となった宇和島徳洲会病院の)万波誠医師がしぼり出すように訴えた言葉。
 「ほんとにせっぱつまった状態だった。それをなんとかしようとするのが臨床じゃないのか」
 そして、日本移植学会の幹部が厳しく非難した言葉。
 「目の前の患者さえ喜んでいれば何が問題あるんだという考えは恐ろしい…」
 病気腎移植をめぐるこの二つの主張の間に横たわる溝が、今回の問題の本質を映し出している。優先されるべきは「臨床」なのか、あるいは「制度」なのか。
                              (「はじめに」より)

 本書では、放送時間の制約の中で描けなかったこと、また番組放送以降の動向も盛り込み、医者、研究者をはじめとする医療関係者はもとより、患者やその家族等、さまざまな現場の実態、生の声を報告する。それは図らずも、この国の医療のあり方を問かけるものとなっている。

目次

目次
はじめに
第一章 「神様」が「犯罪者」にされた日
一 全国初の臓器売買事件 / 二 万波さん! 万波さん! /三 人体パーツビジネスの時代 /四 激動の東南アジア

第二章 もうほんと、せっぱつまった状態だったですわ… 
一 病気腎移植 /二 患者を危険にさらす「人体実験」だ /三 サンダルをはいたカリスマ /四 医療を選ぶのは患者 /五 タンパク尿はなぜ止まるのか /六 「進め! 万波号」 /七 残酷な移植

第三章 「片輪」に偏向する医療のもとで
一 つながれる生活 /二 「移植は危ない…」 /三 数字が示す患者の窮状 /四 「患者」と「患者」の不協和音 /五 臓器移植「しない」法 /六 死体腎確保へ地道な取り組み

第四章 結論ありきの検証
一 理不尽な「見立て」 /二 認められていた病気腎移植 /三 対立の構造 /四 非難の大合唱の中で… /五 「ここは日本ですよ…」

第五章 トライ・アンド・エラーの国
一 「やれることはなんでもやってみよかー」ですわ /二 「ありふれた」脳死移植 
三 信念の「臓器獲得事業」 /四 白石貞一郎さんの苦悩 /五 ドミノ型生体腎移植/六 先進すぎる(!?)研究 /七 作為の手紙 /八 なぜ成果を学ばないのか

第六章 「お約束の」全面否定
一 「医学的妥当性なし」 /二 揃わない結論 /三 伝えるべきことは何か /四 声をあげた専門医 /五 身内ならかまわない…?

第七章 崩れる「絶対禁忌」
一 怒りを和ませる人 /二 「敗者復活戦」 /三 世界的学術誌にも掲載 /四 「癌はうつらない」 /五 海外で進む大規模な症例研究 /六 日本が「周知していた」研究 /七 四二例で転移・再発なし /八 「信念に従え!」

第八章 そこに患者はいるのか…
一 「臨床研究」 /二 聞き流された「声」 /三 不可解な「もう一つの検証」 /四 永田町の「反撃」 /五 「病気腎移植は法的に禁止できない」 /六 もう終わったこと? /七 変わらない現実 /八 そして、きょうも診療は続く
あとがき

前書きなど

<はじめに>
 全国初の臓器売買事件、そして病気腎移植。四国の小さな地方都市で相次いでクローズアップされた腎臓移植をめぐる問題は、医療関係者に大きな衝撃を与える一方で、日本の深刻なドナー不足の実情を浮き彫りにした。いみじくも臓器移植がかつてない関心を集めることになった今回の問題の取材を通して、なんとなくわかっているつもりになっていた移植医療の様々な現実に触れ、複雑に絡み合う要素を垣間見ることになった。
 渦中の人物となった宇和島徳洲会病院の万波誠医師は、日本屈指の腎移植の執刀経験を持ち、その高い技術を頼って全国から訪れる患者が絶えない。肌着のシャツの上に白衣をはおり、素足にサンダル。両手をポケットに突っ込み、方言丸出しで話す万波医師には、およそ日本を代表する移植医というイメージはなく、「近所のおっちゃん」といった雰囲気を漂わせている。取材で彼のもとに通ううちに、患者でない私もそのほのぼのしたキャラクターに引き込まれてしまった。朴訥なゆえに、時としてがさつで独善的に思われることもあるが、実際は繊細で相手に気を遣うやさしい人というのが私の印象である。
 その万波誠医師がしぼり出すように訴えた言葉。
 「ほんとにせっぱつまった状態だった。それをなんとかしようとするのが臨床じゃないのか」
 そして、日本移植学会の幹部が厳しく非難した言葉。
 「目の前の患者さえ喜んでいれば何が問題あるんだという考えは恐ろしい…」
 病気腎移植をめぐるこの二つの主張の間に横たわる溝が、今回の問題の本質を映し出している。優先されるべきは「臨床」なのか、あるいは「制度」なのか。そして、腎臓移植を渇望する患者の願いをどこまで聞くのか。「医の原点」が問われた今回の問題を記録に留めておく必要があると強く感じた。私が勤務するテレビ愛媛では、報道部の私と後輩の山崎加奈子記者の二人でドキュメンタリー番組を制作し、二〇〇七年五月に放送したが、放送時間の制約の中で描けなかった部分も多い。今回、刊行の機会を与えていただいた本書では、そうした要素や番組放送以降の動向も可能な限り盛り込むことに努めた。
(中略)
特定の視点に偏向した動きや報道も相次いだ中で、微力ながら本書が今回の問題の全体像を的確に把握する一助になれば幸いである。

版元から一言

 センセーショナルに伝えられた臓器売買・病気腎移植。それは命と向き合う現場の医師や患者の実態からは乖離した姿を描き出した。丁寧な取材によって編まれたこの本で、その真実を知って欲しい。

著者プロフィール

村口 敏也  (むらぐち としや)  (

村口敏也(むらぐち・としや)
1962年大阪市生まれ。
関西学院大学卒。テレビ愛媛入社後、アナウンサーとして情報番組の司会やニュースキャスターを務めたのち、制作ディレクターに転向。情報番組を担当する傍らドキュメンタリーの制作を始める。現在は報道デスクを務めながらドキュメンタリー制作を続けている。制作した番組は「地方の時代映像祭」「日本民間放送連盟賞」「FNSドキュメンタリー大賞」「ギャラクシー賞」などに入賞している。
著書 『ウリハッキョ~民族のともしび~』創風社出版刊

上記内容は本書刊行時のものです。