1970年代論
三上 治
発行:批評社
この版元の本一覧
四六判 224ページ 上製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8265-0389-1(4-8265-0389-X) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2004年02月
書店発売日:2004年02月25日
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紹介

 1969年に始まった赤軍派の結成に至るブント(共産主義者同盟)内部の党派闘争を、独立左翼の思想と運動の系譜を通して徹底批判し、自己総括する貴重な時代の証言集。全共闘運動の崩壊に象徴される運動の後退局面を吉本隆明の思想に依拠しつつ、叛旗派の指導者として度重なる獄中生活にも耐え抜いた三上治の思想としての新左翼運動史。理想を失った反権力思想には何の意味もない!

目次

序 飛翔だったのか遅滞だったのか
  わが1960年代

1 国分寺駅で逮捕された〜東京拘置所の中で
1 国分寺駅で逮捕されて
2 数知れぬ学生たちと出会った東京拘置所
3 母親からの手紙は切なかった
4 希望という名の希望
5 高度成長と反抗思想
6 心身の健康(?)を回復させた拘留生活
7 長引いた三角関係
  8 新左翼運動は複雑な局面にあった


2 後退戦と赤軍派の登場〜独立左翼とは別系譜の運動の登場
1 全国全共闘連合と赤軍派の登場
2 試されていた暴力という思想
3 枯渇していた権力と革命のイメージ


3 後ろ向きに前進する道〜革命と権力についての考察
1 黒く塗りつぶされた新聞と「よど号」事件
2 過渡期世界のイメージをめぐって
3 揺れ動いていた東大裁判
4 慌ただしくなされた叛旗派の結成


4 飲み屋のテレビで見た三島由紀夫事件〜究極の自由は死の選択の中にあるか?
1 飲み屋のテレビで見た三島由紀夫事件
2 時間によって変わる印象と深まる謎
3 三島由紀夫と全共闘との思想的差異
4 究極の自由は死の選択の中にあるか?


5 「差別論」から沖縄闘争へ〜南島論の中にあった豊かな可能性
1 「寅さん」は文句なく楽しかった
2 「差別論」が思想的な流行りだった
3  最後の闘争の場としての三里塚
4  南島論とその豊かな可能性


6 衝撃の連合赤軍事件〜死の恐怖と戒律 共産主義化という幻想
1 突然たずねてきた古い友達に驚いて
2 赤軍派から連合赤軍への必然的な道程
3 内部粛清事件の発覚のその衝撃
4 田中角栄の登場と一九七二年


後書き

前書きなど

 やっと発刊にまでこぎつけることができた。前作の『1960年代論』『1960年代論2』の後、1970年の前半のことを書きはじめた。原稿はかなり前にできあがってはいた。が、諸事情があって完成は延び延びになってしまった。その一つは吉本隆明研究会の雑誌『吉本隆明が語る戦後55年』に「独立左翼論」を連載していて内容的に重複するところが出てきたためである。その連載が終了した地点で重複を避けた構成に手直ししようと思った。具体的には東京拘置所で吉本隆明の『共同幻想論』や『言語にとって美とは何か』を繰り返し読んでいた箇所などは本書では割愛した。それらは「独立左翼論」の方で詳しく展開されているからだ。三島由紀夫に言及している部分も大幅な手直をした。また、僕は1973年に横浜刑務所に服役し、一九七五年には叛旗派を辞めた。これによって実践的な政治活動の場からは離れた。当初はこの部分まで書く構想だったが、叛旗派をやめるいきさつについては「独立左翼論」の方で展開したのでこちらでは取りやめた。興味のある人はこちらも読んでほしい。「独立左翼論」と併読していただければ当時のことはより詳しく分かるかも知れない。

1969年に始まったやがて赤軍派の結成に至る部分との政治集団(共産主義者同盟)内部の党派闘争はさまざまの問題を提起していた。それらはまだ思想的には整理された形では析出されてはいない。僕はこの党派闘争の中から発生した赤軍派やそれに続く蜂起戦争派を1960年闘争を通して出てきた独立左翼的な思想と運動とは系譜を異にするものと位置づけた。この党派対立の根底には第一次ブントが内包していた初源の理想(左翼的理想)を維持するかどうかの思想的生命がかけられていたからだ。それは急進的な戦術という次元を超えたものだった。この点について特に暴力の問題を中心に僕の考えを展開した。これは現在の「テロリズム」の評価に連続していると思っている。僕にとって切実だったのは独立左翼的な初源の理想を保持するか、それを踏みにじっていくかだったが、その思いは今も変わらないで僕の中ではある。僕が保持したかったのは組織でも党派でもなく第一次ブントがちらりと示してみせた初源の理想だけだったからだ。理想を失った左翼や反権力思想には何の意味もない。

 1970年代の前半に起こった三島由紀夫事件と連合赤軍事件はともに衝撃的な事件だった。彼らが掲げた政治的目的(制度的言説で、例えば三島たちの檄文など)はほとんど問題にならなかった。滑稽な印象すら抱いたと思う。にもかかわらず、彼らが行動を通して伝えようとしていたものには別の衝撃があった。それは謎めいていて理解するのは難しいことに思えた。この解明はまだ途上のものだが、彼らの死生観などを通して析出した。その出来は自信はないが手掛かりのようなものは得たと思っている。三島由紀夫と連合赤軍の面々の死についての考えは同じではないが、日本文化の様式という視線を媒介にすると死生観としては類似するところも見えてくる。これらについてはいずれ別の機会に掘り下げて見たい。

 発刊までに時間がかかったことも考慮して「図書新聞」でのインタビューを最初に入れることにした。これは『1960年代論』『1960年代論2』の続きというより、独立した読み物として手に取ってもらうための工夫である。三部作として続けて読んでもらえればなおいいが、この本から入られた読者が『1960年代論』『1960年代論2』の方にも目を向けられんことを願う。   (「後書き」より)

版元から一言

三上治の好評『1960年代論』『1960年代論2』に続く第3段です。

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著者プロフィール

三上 治(ミカミ オサム)

1941年,三重県で生まれる
1960年,中央大学法学部入学
1966年,同大中退
【著書】 『戦後世代の革命』『三島・角栄・江藤淳』(以上彩流社)『解体される場所』(吉本隆明・中上健次との共著,集英社),『今、戦争について考えることの一つとして』『1960年代論』『1960年代論2』(以上批評社)他。

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