果てしなきホープレス社会の病理〈差別〉という名の暴力
花園大学人権教育研究センター:編
発行:批評社
この版元の本一覧
四六判 256ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8265-0369-3(4-8265-0369-5) C3036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2003年03月
書店発売日:2003年03月20日
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紹介

もはや状況はすべて煮詰まりの極点に到達しつつある。
憲法の外堀は、愛国心教育を鼓吹する教育基本法の改悪策動によって、埋められつつある。これといった対抗言説はいまのところ登場していない。他者の血を舐めて、血だらけのわが顔面を鏡に映して見て、なおも人々は〈癒し〉を感得しつつあるのが現状である。何もかも手遅れかも知れぬ。
だが、しかし…………。

本書は、花園大学人権教育研究センターが発行する数々の出版物の中で、唯一、市販しているシリーズ『花園大学人権論集』の第十巻である。
研究センターに結集する人々および花園大学の人権教育・研究に賛同される方々の論考から、研究センターの方向性をお読み取り願いたいと思う。

目次

■はしがき

■学ぶこと変わること
灰谷健次郎
●子どもと学校の惨状●メディアの犯罪性●三人の校長先生の話●追記

■ちゅら海に基地はいらない
浦島 悦子
●普天間基地移設問題の経過●差別としての基地押しつけ●私たちの闘い●ジュゴンの危機は人間の危機

■インターネット犯罪について
若林 義夫
●〈2ちゃんねる〉の差別書込み●差別・排除の社会的文脈●〈2ちゃんねる〉の設置責任者と利用者●教育と啓発の質的転換を●メディア・リテラシーを身につけよう

■父を語る・〈らい〉者の息子として
林 力
●子ども心に気づいた「父の異常」●とりかえしのつかない痛恨の思い●親子の心情をひき裂く〈差別〉●光田健輔とらい予防法●浄土真宗を剛信した人●同和教育の実践者と「父」を語る

■ドメスティック・バイオレンス防止法と女性の人権
戒能 民江
●ドメスティック・バイオレンス防止法の制定●問題の顕在化●なぜ被害者のほうが逃げなければならないのか●暴力の複合性●暴力を許容してきた社会●追跡の恐怖●子どもも被害者●ドメスティック・バイオレンスの実態●国際社会の動き—女性の人権—●ドメスティック・バイオレンス防止法立法へ●ドメスティック・バイオレンス防止法の問題

■原理主義
沖本 克己
●はじめに●ユダヤ教とキリスト教●イスラム教について●テロリズム●原理主義ということ●おわりに

■視覚障害者のホームからの転落事故をめぐる裁判
愼 英弘
●視覚障害者のホームからの転落事故をめぐる裁判としては、これまで三つある●駅ホームの安全対策●駅ホームを形から大別すると二種になる●視覚障害者の一人歩き(単独歩行)の特性として四つのことを手掛かりにしながら歩行している●佐木理人さんがホームから転落した時の状況と提訴●国の基準と大阪市営地下鉄の状況●原告と被告の主張

■同性愛者排除の論理—日本基督教団を事例として
堀江 有里
●はじめに●「同性愛」をめぐる問題構成●事例:日本基督教団における同性愛者差別事件●事例から浮上してくる問題●むすびにかえて

■老人虐待と人権
山崎イチ子
●はじめに●今後の課題●まとめ

■キャンパス・セクシュアル・ハラスメント—アンケート調査結果を踏まえて
八木 晃介
●調査目的と調査方法●調査結果の概要●セクシュアル・ハラスメント被害の概況●深刻な本学の状況●「甘えの構造」とセクシュアル・ハラスメント●セクシュアル・ハラスメントをめぐる〈自己分断〉の悲劇●コンセンサス不成立の現状について●取り組むべき課題●結論

前書きなど

なにかとてつもなく不快で不安な風が吹いている。
 その風は、東からも西からも、上からも下からも吹いてくる。

 何一つ疑問が解けないままになっている〈ナイン・イレブン〉以後の世界に、一種名状しがたい、 しかも吐き気をともなう〈癒し〉の風が、時にやわらかく、時にしなやかに流れている。もちろん、 全体としては風雲急を告げる、そのようなサインを見せたり隠したりしながら。
〈癒し〉こそ、この時代のエトスを象徴するキーワードではあるまいか。人は他者を差別することで癒され、まとわりついてくるナショナリズムによって癒されている。病や飢渇や心の悩みを、まさにそれらの症候を引き起こしてくる当の原因の積極的または消極的な受容によって、癒されると信じ込む倒錯。
 他者をはげしく非難する言説当事者には、多くの場合、非難の対象は見えていない。実のところ、非難の対象は実在してもしなくてもよいのである。他者を非難するにはそれなりのエネルギーが必要である、昇華もまた〈癒し〉の一種なのだから。だからこそ、非難対象が不在であれば、捏造してもよいといわんばかりの言説が横行するのであろう。これは純粋経済学的にみても間尺のあう話ではあるまいに、何故に人は費用対効果のリアリズムを棚上げしてまで、かくも無残に他者を非難できるのか。
 いわゆる拉致被害者家族の一連の言動は、この国の大衆意識のルサンチマンに見事に照応していて不快である。「戦争してでも取り返せ」と煽る首都の知事の言葉は、核兵器や生物化学兵器があってもなくてもフセインを倒せと金切り声をあげるブッシュの言葉に連動しながら、拉致被害者家族および拉致被害者家族との疑似家族感情にとりつかれているこの国の大衆意識をあたたかい真綿で首を締めるようにして、劣情を刺激しながら組織していくのである。狡猾だと言わねばならぬ。

花園大学人権教育研究センター所長(文学部教授)・八木晃介

関連リンク

花園大学人権教育研究センター
多民族共生人権教育センター
大阪府人権ホームページ
人権情報ネットワークふらっと
部落解放・人権研究所
近江渡来人倶楽部
大阪府人権協会
ヒューライツ大阪(財団法人アジア・太平洋人権情報センター)
人権関係図書の 明石書店
国際連合

著者プロフィール

花園大学人権教育研究センター(ハナゾノダイガクジンケンキョウイクケンキュウセンター)

●本号の執筆者
灰谷健次郎 作家
浦島 悦子 フリーライター(沖縄県名護市在住)
若林 義夫 岡山県部落解放研究所所長
林   力 九州産業大学名誉教授
戒能 民江 お茶の水女子大学教授
沖本 克己 花園大学文学部教授
愼  英弘 花園大学社会福祉学部教授
堀江 有里 花園大学非常勤講師
山崎イチ子 花園大学社会福祉学部助教授

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