
シリーズ・叢書「メンタルヘルス・ライブラリー」の本一覧
発行:批評社 この版元の本一覧
A5判 224ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-8265-0355-6 (4-8265-0355-5) C3047
在庫あり
奥付の初版発行年月:2002年09月 書店発売日:2002年09月10日
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カウンセリング・心理療法・精神療法、さらにさまざまな症状や症候群、資格の名が巷に飛び交う。こうした臨床心理ブームの背景にある諸問題を、「基礎の問題群」−臨床心理学の対象認識−、「実践の問題群」−開業・教育・医療・産業・司法・福祉−、そして「倫理・資格の問題群」−倫理的省察・患者の人権、資格とは何か・資格化の動向−として捉え、臨床心理が担うべき原点とその実際をあらゆる角度から多面的に明らかにする恰好の入門書。
目次
はしがき
臨床心理の問題群をめぐって
岡村達也
座談会
カウンセリングとは何か
浜田寿美男+高畠克子+羽間京子+野口昌也+岡村達也
1●カウンセリングの幻想と現実/2●カウンセリングの終わりかたをめぐって—終わりの保証、現実/幻想/幻滅、自然の壁/人間の壁/こころの壁、断念—/3●カウンセラーに相談すること、友人に相談すること—治るとは—/4●治癒と成長—いまのここを生きること、希望と幻想—/5●物語—自白とカウンセリング—/6●本当の自分—関係性と一人でいること、かなしめること—/7●動機論あるいは因果論—こころの構図、被害意識—/8●「わからない」と言えること—安心感、より深いカウンセリング—
■■■臨床心理の基礎の問題群
臨床心理学のスケルトン
岡村達也
1●臨床心理学の目的—こころのwell-being—/2●臨床心理学の対象—病理と発達—/3●臨床心理学の実践方法論—理解と関与—/4●臨床心理学の実践領域・資格・倫理/5●付論:臨床心理学実践の研究方法論
精神病理学・それ以前にあるもの
松本雅彦
1●はじめに/2●心をコトバにすること…その1(精神療法)/3●心をコトバにすること…その2(精神病理学)/4●命名、分類…心の精神医学化(精神医学概念の創出)/5●外部からの観察/6●犯罪、その精神医学化/7●精神病理学の背後にある精神鑑定/8●精神療法と精神病理学:乖離と統合
精神発達を記述する土俵をどう構えるのか
浜田寿美男
1●素朴心理学というもの/2●さまざまな心理学/3●発達心理学の出自/4●「力」というもの/5●「個」ということ/6●「物語」ということ
診断と査定の構造
高岡 健
1●はじめに/2●診断/3●査定/4●共同体内への回収/5●まとめ
「精神療法」理念の基本的転換
森山公夫
1●はじめに/2●「精神療法」の三領域の登場(対・集団・身体)/3●精神療法の三段階/4●「精神療法」の理念(倫理)の基本的転換
■■■ 臨床心理の実践の問題群
教育とカウンセリング
●スクール・カウンセラーの導入をめぐって
保坂 亨
1●はじめに/2●スクール・カウンセラー導入の問題点
児童養護施設における心理的援助
●福祉領域の一例として
高田 治
1●児童養護施設の現状/2●どのような心理的援助が考えられるのか/3●援助の実際/4●自己研鑽について/5●おわりに
「非行少年」への心理的援助の課題
羽間京子
1●はじめに—「非行少年」というコトバへのイメージの多様性—/2●「非行少年」の法律的定義と処遇/3●「非行少年」の心理的多様性—アセスメント(そして、援助のありようを検討)する際のいくつかの視点—/4●「非行少年」の心理的一般的特徴/5●「非行少年」への心理的援助の課題
県立精神病院における心理的援助の実際
木寺静代
1●はじめに/2●男子開放病棟での院外作業者のための心理グループ/3●おわりに
精神医療における臨床心理のありかについて思うこと
箕浦亜子
産業領域に臨床心理は必要か?
●専門家活動の位置付けと課題
小林孝雄
1●産業領域において、臨床心理・カウンセリングは必要なのか?/2●産業組織が「心理」の専門家に期待すること/3●教育領域と産業領域との比較/4●臨床心理・カウンセリングにおける産業領域/5●産業領域と臨床心理・カウンセリング/6●再び、産業領域で臨床心理・カウンセリングは必要か?/7●産業領域における臨床心理・カウンセリングの専門性/8●最後に
開業をめぐる諸問題
芳野紀子
1●はじめに/2●開室当初からの経緯/3●開業の特質について/4●開業が抱える困難さと問題点/5●おわりに
■■■ 臨床心理の倫理・資格の問題群
心なおしの倫理性とは
藤澤敏雄
倫理の実際をめぐって
●特に技能と秘密保持の倫理について
岡村達也
保坂 亨
1●技能の倫理について—資格制度にふれて—/2●秘密保持の倫理について—スクールカウンセラーを例に—
臨床の制度化と臨床的課題の生成
●科学的臨床心理学と資格の循環的構造
三輪寿二
0●はじめに/1●1970年代の日本臨床心理学会の学会改革路線に関説して/2●臨床の制度化—臨床心理士資格化後の臨床心理学の動向—/3●誰が臨床を欲しているのか—臨床ブームの本質と行方—/4●現実は臨床家を欲しているのか—あるアンケート調査より—
〈参考〉臨床の制度化の一局面としての資格
●心理臨床の資格を問う視角に関する覚え書き
三輪寿二
あとがき
岡村達也
前書きなど
本書の前身は、『精神医療』誌としては異色の特集だったかもしれません。2000年4月、縁あってただ1人の心理屋として編集委員会に参加させていただくことになりました。と言って、私が仕掛けた特集というわけではありません(当時も今も、もう物を書くのはたくさんです)。編集委員会で、精神医療でコラボレートする〈臨床心理の特集〉が望まれたのでした。もっとも、もっと精神医療に近いかたちで取り上げることが期待されたのだと思います。実際、編集委員会でそうした議論もありました。が、藤澤敏夫雄先生のはげましと編集委員の先生方のご協力で、まずは、より総論的なかたちで取り上げさせていただいたのでした。同誌での〈精神医療における臨床心理〉の特集は、いまだ後日を期しています。
雑誌の方は、その特集が棹さし、本書が棹さす「臨床心理ブーム」のお陰か、私が授業の副読本にしたかったのもあって、その分多めに印刷してもらったのですが、それでも、かろうじて授業の分が確保できるほど急速に売れ、半年で品切れとなってしまいました。そこで、雑誌の紙幅制限を緩和し、雑誌特集時の欠を補って、雑誌刊行1年後に、こうして単行本として新刊ということになりました。雑誌をお買い上げ下さったみなさまには感謝しています。あらためて本書をお買い上げ下さって、もう一度感謝させていただければ、なおさいわいです。改訂の機会があれば、新しい状況をそのつど加え、このたびはなりませんでした「養成の問題群」や「BOOKガイド」を加え、「実践の問題群」をもう少し補強してみたいと思っています。また、座談会御出席の先生方の中には、補論ないしは新稿を希望された先生もいましたが、今回は見送らざるを得ませんでした。それも加えられたらと思っています。そうした機会が与えられますように。
「はしがき」は、雑誌特集時、執筆依頼に添えた「編集趣旨」と「執筆依頼趣旨」とをほぼそのままもととして加筆しましたが、その末尾に記したように、雑誌特集時の旧稿も単行本化に伴う新稿も、依頼意図をはるかに凌駕した論考群が得られたことは、編者として無上のよろこびです(旧稿とは言っても、それぞれなりに、しかるべく手入れされています)。ご執筆の先生方の選択が正しかったと、かなり自己愛的になると同時に、先生方にはいくら感謝しても感謝し切れません。雑誌特集も、同僚の伊藤研一先生はじめ、思わぬ高評をいくつか頂戴しました。
期せずして、いくつかのことが各論考を超えて論じられています。共同体の問題、あるいは、新しい共同性をどう切り開くかの問題。因果論の問題、あるいは、因果論とは異なるエピステーメーをどう切り開くかの問題。「治癒」「発達」「こころ」という物語の問題、あるいは、幻想という現実、ないしは、専門家のもつ物語と生活者のもつ物語の問題。
「いずれも切実な臨床実践の中からこそつかみ取られた論点だ。これに抽象性を感じる人があるとすれば、その人の臨床実践に現実の切実さが欠けているのだ。ここに現実の切実さを見ることができるほどに、その実践の現実性を確かなものにする必要があるだろう。」
これが編者としての率直な読後感です。
私たちは現実の切実さから離れずにいたい。そう思います。
なお、この「ブーム」の一端についての一精神科医の見解として、『精神医療』第24号「特集:メディアと精神科医−メディアゲームと情報消費の病理」(2002年11月30日)所収の、滝川一廣「精神科医から見たマスメディア−私のスタンス」はぜひご覧いただきたいと思います。また、『精神医療』第20号「特集:学校の崩壊」(2000年9月25日)所収の、拙書評「日本社会臨床学会(編)『カウンセリング・幻想と現実』」もお読みいただければさいわいです。大学教員として、また、街の一カウンセラーとして感じるブームの一端を、書評そっちのけで(?)記しています。
藤澤敏雄先生のご快復を、こころから念じつつ。
(「あとがき」より)
版元から一言
好評メンタルヘルス・ライブラリーの第8巻です。
関連リンク
著者プロフィール
岡村 達也(オカムラ タツヤ)
1954年生まれ。
東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻第1種博士課程中退。
東京都立大学学生相談室助手、専修大学文学部心理学科助教授を経て、現在、文教大学人間科学部臨床心理学科教授。
著書に、『思春期の心理臨床』(共著、日本評論社)、『カウンセリングを学ぶ』(共著、東京大学出版会)、『カウンセリングの条件』(垣内出版)、『子どもの成長 教師の成長』(共編、東京大学出版会)など。
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