ひきこもり
高木俊介:編
発行:批評社
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A5判 224ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8265-0351-8(4-8265-0351-2) C3047
在庫あり
奥付の初版発行年月:2002年06月
書店発売日:2002年06月10日
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紹介

ひきこもる子どもたちの心理と病理を語ることは、この社会のほころびを語ることと同義である。子どもたちを「ひきこもり」の世界から解き放つ方法は、精神医学的ラベリングや「治療」という名の強制力で「ひきだす」ことではない。子どもたちの「ひきこもり」に出会い、邂逅し、真摯に向き合うことをとおして、彼らの「ひきこもり」をまっとうさせるための方法をいかに保証するかが、問われている……。

目次

はしがき……「ひきこもる社会」の私たち[高木俊介]
〈座談会〉「ひきこもり」からみえてくる医療と社会[芹沢俊介+高岡 健+藤澤敏雄+高木俊介]
ひきこもりと小さな思想[塚本千秋]
ひきこもりは人格障害の一症状か?[高岡 健]
コミュニケーションからみたひきこもり—保健所精神保健福祉相談の経験から     [高田知二]
「ひきこもり」の支援—多くの社会資源が連携した支援システムの一員としての精神科医の役割[幸田有史]
「ひきこもり」と漱石の視点[立花光雄]
近代市民社会と精神医療の共犯関係—幻のブレイン・ポリスは誰だ!        [竹村洋介]
一カウンセラーの「ひきこもり」とのつきあい—登校拒否の「ひきこもり」から新しい意匠の「ひきこもり」への個人史[岡村達也]
 ひきこもりと小さな思想……C氏との対話編[塚本千秋]
あとがき[高木俊介]

前書きなど

 この数年の「ひきこもり」という現象に対する精神医療・医学からの反応をながめていると、社会問題をラベリングする、という精神医学に求められている役割は、つくづく変わらないのだなと思う。このラベルが90年代の半ばにマスコミによって使われはじめてから、一挙に市民権を得たのは、もちろんこのような現象が広く目につくようになったからでもあり、また、「ひきこもり」という言葉が時代の雰囲気とよくマッチしたからであろう。
 かつて「しらけ」という言葉がこの社会でリアリティをもっていた時代があり、多くの人が「しらけ」の気分と行動を共有していた。しかし、その気分と行動に至る内面のありようは様々であったはずだ。それと同じように、多くの若者たちが今「ひきこもり」現象をきたしているからといって、その原因がひとつであるはずがない。それどころか、いくつかの類型化すら拒むかもしれない。そのような現象の多様性を吟味するより先に、「ひきこもり」というラベルが一人歩きをはじめてしまった。
 ここで私たちはある既視感に襲われる。そう、同じことが「不登校」という現象をめぐって存在した時期は、そう遠いことではない。かつて子供の神経症の症状であるとされた「登校拒否」は、やがて学校のありかたとある種の子供の間の相互作用による子供の側の反応とされ、ついには「誰でもなりうる」ものとなってしまった。ここにいたって「不登校」の子供の心理とは、病理とは、と語ることは、「人間とは」「子供とは」と語ることと同じことである。私たちにできることは、「人間とは」「子供とは」という理解、さらには「学校とは」「社会とは」という理解を広げながら、ひとりひとりの状況と成長にていねいに寄り添うことである。
 私は「ひきこもり」についても同じようになればよいと思うし、おそらくそうなるだろうと思う。しかし、「不登校」に関しては、学校のほころびが誰の目にも明らかになるのが比較的簡単であったのにくらべ、「ひきこもり」を問題化させているこの社会のほころびは、簡単にこれだと示しにくい。社会は問題のるつぼである。日常の身辺時事から世界的歴史的規模の問題まで、その中のどれが「ひきこもり」気分を醸成しているのか。
 あらゆる社会的ラベリングは、時代の泡として湧き上がり消えていく。「ひきこもり」もいずれ消えていくにちがいない。しかし、今、この現象を問題化させている背景をおぼろげながらでも浮かび上がらせることができたなら、「ひきこもり」という現象が今後どのように変化していくか、この次にはどのような問題として私たちの前にあらわれてくるか、ということにもいくらかの心構えができるであろう。それは次々と私たちの前に現れてくる現象に対してあくせくと粗雑なラベル貼りをするのとは違った成熟した態度を、精神医療・医学にもたらすことになるだろう。
 このメンタルヘルス・ライブラリー「ひきこもり」は、他の業界専門誌やマスコミがこぞって行った「ひきこもり」論議とはひと味違ったものになる。私たちは「ひきこもり」を定義しない。私たちは、「ひきこもり」を特別な問題として切り取って社会に警鐘を鳴らそうとは思わない。私たちは、かまびすしい当面の議論から学問的にも実践的にも一歩距離を置いて、私たちが得た思いのうちに「ひきこもる」。そこから勇ましくなく語ろう。もちろんそれは哲学的サロン談義をしようというのではない。あくまで依って立つところはそれぞれの臨床現場である。しかし、一方で臨床現場に要求される実効性の圧力からは距離をおいてみるということである。それは、もしかしたら私たちの側に、「ひきこもり」の若者たちと同じ高さの視線を獲得させてくれるかもしれない。(〈はしがき……「ひきこもる社会」の私たち・高木俊介〉より)

版元から一言

好評メンタルヘルス・ライブラリーの第7巻です。

装画=サイトウノリコ
装丁=臼井新太郎

●2004年4月25日 好評4刷出来

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著者プロフィール

高木俊介(タカギシュンスケ)

1957年生まれ。京都大学医学部卒業。光愛病院を経て、1992年より京都大学附属病院精神科勤務。著書に、『精神分裂病 臨床と病理1-3』(共著、人文書院)、『インフォームド・コンセント ガイダンス—精神科治療編—』(共著、先端医学社)など。『精神医療』誌(批評社)編集同人。

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コメントとトラックバック 1件 »

  1. 子供たちに限らず、大人たちからも、心理カウンセラーに求めるものは、かなり大きく、広く、深い。しかし、今日の心理カウンセラーの資質は必ずしも「これでよし」とは、言い難い。このような状況に鑑み、「心理カウンセラーの常識」という原稿を執筆致しました。御社で、企画出版を受けるため、A4X100頁の原稿を送付させて頂く御許可を頂けませんでしょうか。宜しく、御高配の程、お願い申し上げます。尚、当方は、人格障害、性科学、医者になる前に読む本(三一書房)などを執筆致してまいりました、61歳の精神科医で御座います。

    コメント by 定塚 甫 — 2008/4/25 金曜日 @ 23:20:12

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