快感原則in青木ヶ原樹海
早野 梓:著
発行:批評社 この版元の本一覧
四六判 240ページ 並製
定価:1,400円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8265-0344-0(4-8265-0344-X) C0093
在庫あり
奥付の初版発行年月:2002年06月 書店発売日:2002年07月03日
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紹介

なぜ人を殺してはいけないのか?
なぜ自殺をしてはいけないのか?
なぜ目的もないのに人は生きられるのか?
そんなナゾを、あの青木ケ原樹海に消えた、
3人の男女を追いながら、
脳科学者と知能ロボット研究者と植物学者、
そして女子大生が、
脳という臓器の仕組みの視点から解き明かす、
今までには全くなかった新しい科学ミステリー小説!
新潮社刊『幸福の遺伝子』で知られる著者の待望の最新刊。

前書きなど

1

 青木ケ原樹海へむかう四輪駆動トヨタ・ランクルの中だった。ミヨ子は私に右腕をからませていた。小柄だが、さすがに大学生という時代を主張するかのような弾力のある胸のやわらかさが、私の左腕の生まれて五〇年を経た皮膚感覚からでさえ、脳の体性感覚野に真直ぐに伝わってきた。
 ミヨ子がそのままの姿勢で、視線を遠く、秋のはじまりのぼんやりとした灰色の空に置いたまま言った。
「人間に心というものはないの?」
「ない」
「人間には感覚も感情もある。脳が物質に過ぎないとしても、何かがありそうな気がするわ」
「ない」
「それじゃ、人殺しはなぜ悪いの?」
「悪くはない」
「自殺は?」
「同じことだ」
「ふううん、脳って変な感じね……」
 これだけの年齢差の二人の会話が、お互いの脳の中でどのような世界をつくっているのか、考えたことはない。それで、けっこううまくいっている。
 昨晩はよく眠った。ミヨ子とセックスをした夜は、いつもの日常とはまったく異なる次元の世界にいるかのようによく眠れる。よく眠れると言葉が走る。走りすぎて、後で、その真意を説明するのに苦労することも少なくはないのだが……。
 今日は、アメリカのV大学から来たという脳科学者を青木ケ原樹海に案内することになっていた。昨夕、ミヨ子と、私の友人の富樫さんと、七〇歳だというグレン博士と一緒に食事をとった。その四人で樹海を散策しようというのだ。博士は身長が一九〇センチを超えていると言っていた。毎日ジョギングを欠かさないという、強健なイメージの老紳士だ。


版元から一言

好評シリーズ、第3弾です。

装画=民野 宏之
装丁=臼井新太郎

関連リンク

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著者プロフィール

早野 梓(ハヤノ アズサ)

著書
『ちょっとミステリー1 砂糖と塩のショートショート[新装版]』(批評社)
『ちょっとミステリー2 富士・青木ヶ原樹海事件簿[新装版]』(批評社)
『ちょっとミステリー3 快感原則in青木ヶ原樹海[新装版]』(批評社)
『幸福の遺伝子』(新潮社)

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