心の痛手の精神医学トラウマ
藤澤敏雄:編
発行:批評社
この版元の本一覧
A5判 160ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8265-0338-9(4-8265-0338-5) C3047
在庫あり
奥付の初版発行年月:2002年01月
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紹介

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、1960年代以降の新しい時代転換時に起きた反体制運動や人権運動とともに生まれ、成長してきました。ベトナム戦争の帰還兵に対する心理的サポートやフェミニズム運動がレイプサバイバーの支援と結合したこと、さらに子どもへの性的虐待、家庭内暴力、政治的・宗教的「監禁」など、社会・政治状況と深く関わっています。社会防衛的精神医学の歴史的再検討を踏まえ、トラウマの心的構造を新たな視点で解読する、心的外傷論の新展開。



目次

はしがき−心的外傷、PTSD、AC、そして再生●藤澤敏雄
「トラウマと被害」試論−戦争のトラウマを題材として●小西聖子
トラウマ(心的外傷)論議の暗点●岩井圭司
PTSDとわたし●半沢ひろし
新しい外傷論の出発−『心的外傷と回復』(ハーマン著)から●森山公夫
心的外傷後ストレス障害、その概念の混乱を考える●小川恵
訴訟字案からみたPTSD●黒木宣夫
〈座談会〉PTSD概念の革新性●岩館敏晴+富田三樹生+山口直彦+[司会]森山公夫
BOOKガイド●浅野弘毅
あとがき●藤澤敏雄

前書きなど

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)が、わが国で広く話題となったのは、1995年初頭に相次いで起こった阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件のあとでした。
 PTSDは、1980年の精神障害の診断・統計マニュアル、アメリカ精神医学会に初めて登場した診断名であり、ICD-10(国際疾病分類、WHO)の1992年6月の最終案にも、取りいれられました。
 PTSDはおよそ以下のような障害です。尋常ならざる心的外傷を被ったあとで発症し、その事件が持続的に再体験される。くりかえし意識に侵入する事件の想起、たとえば、事件の反復的で苦痛な夢、あたかもその事件が再び起きたかのような行動や感情(再び生き生きと体験する感覚や錯覚、幻覚、フラッシュバックなど)、事件を象徴、類似する事件に出会うと激しい心理的な苦痛が生じる。あるいは、心的外傷と関連した刺激を持続的に回避したり、感情の鈍麻が起こる。心の痛手に関連した思考や感覚を回避しようと努力する。重要な局面の追想不能(心因性健忘)。重要な活動に対する興味の著しい減退、他人から疎遠になった、孤立しているという感覚。「愛という感情が持てなくなった」といった感情の範囲の縮小。未来が縮小した感覚が起こり、長い人生の見通しを持てなくなる。そして、過覚醒といわれる一連の症状。入眠困難、中途覚醒。易刺激性、かんしゃく発作。集中困難、過度の警戒心、驚愕反応。事件を象徴したり、類似したような出来事に触れたときの生理的反応、などです。
 そして、障害の持続は少なくとも1ヶ月は続き、障害の長い持続の結果ときには人格の変化さえ引き起こします。
 こうして生活や人生の広範な部分に影を落とすPTSDについて、アメリカでまず問題となったのは、ハーマンのいうように、ベトナム反戦運動の高揚がベトナム帰還兵の心理的サポートの形成につながっていったことや、フェミニズム運動がレイプのサバイバーの支援と結合したという、政治的状況と深く関係していました。精神障害の問題も、きわめて政治的なものです。
 阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件のあとのPTSDの浮上は、それまでにも始まっていた様々な、ささやかな試行にも光をあてる結果となりました。小西聖子編著の「犯罪被害者遺族」(1998年10月)などもその成果のひとつです。PTSDからの回復と再生は、デリケートで辛抱強い支援と協力のネットワークを必要としていることが示されています。
(「はしがき」より抜粋)

版元から一言

シリーズ【メンタルヘルス・ライブラリー】の第5巻です。

著者プロフィール

藤澤敏雄(フジサワトシオ)

1934年生まれ。新潟大学医学部卒。
現在、医療法人社団東迅会理事長、にしの木クリニック所長。東京精神医療人権センター代表。著書に、『精神医療と社会』(批評社)、他。

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