発行:批評社
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四六判 256ページ 上製
定価:2,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8265-0311-2(4-8265-0311-3) C1045
奥付の初版発行年月:2000年11月
書店発売日:2000年11月10日
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マルコ・ポーロの『東方見聞録』でその存在を知ることができる〈ヤシ酒〉。ヤシの幹に傷を付けて採取した樹液が自然発酵した酒である事実は意外と知られていない。ヤシ酒の全貌を緻密な現地取材で紹介しながら、科学的分析を通して樹液の謎に迫る!
目次
プロローグ
第1章・ヤシ酒との出逢い
スリランカの紅茶とヤシ糖/ヨーグルトとヤシ蜜/スリランカはヤシ酒の国/ヤシらしからぬキトゥルヤシの姿/キトゥルヤシの酒/パルミラヤシの酒/ココヤシの酒/プレオナンシックとハパクサンシック/植物の導管と篩管/導管流の原理/篩管流の原理/甘い樹液は篩管液/ヤシ樹液の醗酵…/ヤシ酒の醗酵は続く/アラックの味/北のブドウ酒と南のヤシ酒/別れ/
第2章・各国のヤシ酒
インドネシアはイスラム教国だった/サトウヤシからつくるヤシ糖/サゴ澱粉の製造/家内工業でつくるヤシ糖/屋の掘出物/ボロブドール遺跡とヤシ糖/ついにマルコ・ポーロの酒を飲む/スマトラ島のヤシ酒/タイのヤシ酒/タイのヤシ糖/ヤシ樹液の変質防止/フィリピンのヤシ酒/ヤシ酒は高級スーパーにない/ヤシ酒の産地ラグナ州リリウ/インドのヤシ酒/その他の国々/幹頂部からの採液法/
第3章・スリランカ再訪
樹液の謎を解くヒント/ネゴンボの居酒屋/ココヤシ研究所/ココヤシの採液法/国道の居酒屋/パルミラヤシ開発局/パルミラヤシの採液法/ヤシ酒蒸留工場/ヤシ酒職人の親子/キトゥルヤシの採液現場/キトゥルヤシの採液法/ミグ二五戦闘機がとりもつ古い縁/植物遺伝資源センター/三〇〇年前のヤシ酒製法/キャンディ地方のヤシ酒とり/再会/
第4章・不思議な樹液の謎に迫る
ヤシ酒に残った最後の謎/植物の光合成/光合成産物の供給器官と受容器官/受容器官における蔗糖/供給器官と受容器官の相互関係/研究用篩管液の微量採取方法/篩管液が大量にとれる植物は希有/シュロの樹液採取/樹液流出をめぐる百家争鳴/導管や篩管は傷がついても漏れない/ヤシの篩管も本来は漏れない/ヤシの篩管に何が起こるのか/樹液流出は篩管制御系の異常/エピローグ/著者あとがき/参考文献
前書きなど
●書評再録『ヤシ酒の科学』
…『ザンジバルの笛』と同じような強烈な探求心に貫かれて、ただしもう一歩だけ趣味の側に寄って書かれたのが『ヤシ酒の科学』である。
日本でこの酒の味を知っている人は少ない。筆者は植物病理学の専門家だが、スリランカで初めてこの不思議な酒に出会って、以来行く先々でこれを追いかけて味わい、製法を調べ、しばしば自分の専門に戻ってなぜこのような酒が存在しうるのかを分析する。
よく誤解されるところだが、ヤシ酒はココヤシの実の中のいわゆるココナット・ジュースから作るのではない。あれは糖分が薄くて酒にならない。ある種のヤシの花序を切って、ここから滲出する液を器に受ける。これを放置しておくと、やがて、アルコール分で五から八パーセントの酒に変わる。これがヤシ酒で、日本酒の半分だがビールよりは強い! 庭にヤシを植えておくだけでいくらでも酒が飲める!
ぼくが飲んだのはミクロネシアのヤップ島だった。懇意な宿の主に頼んでおいたらどこかから調達してきてくれた。軽くて、さわやかで、うまいものだった。
更にアルコール度を高めるのなら蒸留すればいい。スリランカにはちゃんとこの種の酒のブランドがあるという。
不思議は二つある。第一はなぜ放置しておくだけで酒になるのか。ヤシから得られる液の糖分の量が充分だから、まず乳酸醗酵で液は酸性になり、それで酵母によるアルコール醗酵が可能になる。放っておけば醗酵が進みすぎて酸っぱくなってしまう。ヤップ島でもその晩が飲みごろと教えられて、酢になる前にとどんどん飲んだ。
第二の不思議は、なぜヤシから糖分の濃い液が流出するかということ。ヤシは体内に蓄えた澱粉を糖に変えて花序から分泌する。しかしこれは傷口からの出血のようなものだ。普通ならばこんな自損行為はありえない。いわばこれはヤシの血友病のようなもの。どうしてこうなるのか、その推理は植物生理学の根幹に関わって興味深い。
ぼくの家は沖縄にある。ココヤシは無理だが、ここで育つヤシもある。数本植えておけばもう酒には困らないはず。とは言うものの、ヤシの花序は頂にある。毎日朝夕、高さ二〇メートル以上の幹に登ってヤシ液を回収し、花序の切り口を切り直さなければならない。
やはり家でヤシ酒というのは無理か。
(池澤夏樹氏による『週刊文春』2001年7月26日号の書評より)
版元から一言
日本で出版されている「ヤシ酒」に関する唯一の書籍です。カラー前付け4頁と全編にわたる写真図版で、あなたを「ヤシ酒」を探す旅にお連れします。ヤシ酒ができる仕組みについての科学的解説もしっかりと書かれており、専門家の方も必読の一冊!
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著者プロフィール
濱屋 悦次(はまや えつじ)
1929年東京都生まれ。東大農学部卒。農学博士。専攻は植物病理学。現在は各地の食文化についての情報を収集中。著書に『植物組織培養』(朝倉書店)他、訳書に『セイロン島誌』(平凡社)など。
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