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サーカス村裏通り 久田 恵(著) - 七つ森書館
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サーカス村裏通り (サーカスムラウラドオリ)

文芸
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発行:七つ森書館
四六判
304ページ
並製
定価 2,200円+税
ISBN
978-4-8228-7003-4   COPY
ISBN 13
9784822870034   COPY
ISBN 10h
4-8228-7003-0   COPY
ISBN 10
4822870030   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2011年9月
書店発売日
登録日
2011年8月12日
最終更新日
2013年2月22日
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書評掲載情報

2013-02-03 読売新聞
評者: 大野更紗(作家)
2011-09-18 日本経済新聞
2011-09-18 読売新聞
2011-09-18 朝日新聞
2011-09-11 東京新聞/中日新聞
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紹介

都会暮らしに疲れ果て、子どもと一緒に飛び込んだのはサーカスのテント村。
犬と駆け回る子どもたち、風雨と布一枚で区切られた生活……。
炊事係として旅をしながら見つめた、舞台で、裏方でいきいきと働く人々の姿。
テレビドラマにもなった名作。
ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよん。行き詰まったときにページをめくりたい。

目次

序 章 ここがサーカス

第1章 テント村メインストリート
     サーカスで暮らしたい
     炊事係初年兵
     テント村の昼下がり
     天幕に陽は落ちて

第2章 大天幕の芸人たち
     丸盆という名のショー舞台
     ひとりぼっちの綱渡り
     鳥のように翔べたら

第3章 テント暮らしの夢と現実
     れんれん、サーカスに狂う
     台風五号接近す
     喧嘩に強くなりたい
     現代の風の又三郎
     男なしじゃ暮らせない

第4章 テント村の裏方たち
     角さんと“宇宙からの帰還”
     逃げだしたチンパンジー
     キグレのチョンちゃん
     カズエ姐さん、昔語り

第5章 名古屋白川公園
     テント村の恋人たち
     カズエ姐さんの憂鬱
     お風呂場は社交場
     家族ごっこのクリスマスイブ
     公園の浮浪者たち
     年越しの大パーティー
     テント村に雪が降る
     一輪車の初舞台
     さよなら、ビニールおじさん

第6章 サーカスは何処へ行く
     もしも明日が晴れならば
     芸能会社キグレサーカス
     炊事場の貼紙
     団長の三色スミレ

終 章 さよならサーカス

あとがきに代えて

本シリーズにあたってのあとがき
解説 佐高 信

前書きなど

本シリーズにあたってのあとがき

 時々、考える。
 「サーカスって、私にとってなんだったのだろう?」と。
 三十五歳という微妙な年齢の女が幼い子どもを連れてサーカス団に入り炊事係となる。その日本のサーカス団のテント暮らしの体験をつぶさに書いて物書きの道を切り開いた。体当たり取材の書き手と、言われた。
 確かに、結果的にそうではあるのだけれど、正直言って、サーカスについて書きたいと思っていたわけではなかった。
 物書きとして自立しようという野心に燃えていたわけでもなかった。
 サーカスに行こう、と突拍子もない思いにとりつかれた時、私は、完全に人生に煮詰り、言葉にし難い疲労感と挫折感の中にあった。
 子どもがいなかったら、他の選択肢もあったろうが、四歳の幼児を抱えて行く当てのない心境にあった。
 翔べ! どこかで声がしていた。
 そして、翔んだのである。
 翔んで着地したところから、また、人生を歩き始めようと思ったのである。
 本部と呼ばれるテントの中で、風に吹かれながらじゃがいもの皮をひたむきに剥き続けていた時の安堵感を私は忘れることができない。幼い息子が、「かーたん」と呼びながらやってきて、こんなことがあった、あんなことがあったとしゃべりまくって、また駆けて行く後姿を眺め、もう、人生について思い煩うことはしない、と決めた時のやすらぎを覚えている。
 サーカスには恩義がある。
 サーカスを離れる時、私は切実に思った。一九八四年の某月某日、日本の滅びゆくサーカスの像使いの鈴木さんが、信じ難いほど美しい夕焼けの空を眺めていたというような小さな、小さな事実をなんとか記録して残しておきたい、と。……

版元から一言

<シリーズ頭辞>
■主役は人間
 すべてのドラマの主役は人間である。あらゆる悲劇も、あらゆる喜劇も人間が紡ぎ出す。
 小説について、人間が描かれているとか、描かれていないとか、よく言われるが、それはフィクションに限らない。むしろ、ノンフィクションにこそ、それが要求されるのであり、人間が躍動していないノンフィクションは読むに堪えない。
 あくまでも事実を追うノンフィクションは、それゆえに制約があるが、困難な取材を諦めずに続けて、そこに限りない人間の魅力をクローズアップさせようとする書き手は、佐木隆三氏が言うように「事実に近づく興奮」に身体を震えさせながら、その旅を続ける。
 残念ながら、現在、ノンフィクションの傑作は薄っぺらなベストセラーの洪水の波間に埋もれてしまっている。佐木氏の『越山田中角栄』をトップバッターとして発掘されるこのシリーズは、まちがいなく、熱い読者の支持を得るだろう。私はそれを確信している。(佐高 信)

著者プロフィール

久田 恵  (ヒサダ メグミ)  (

1947年、北海道生まれ。人形劇団「ひとみ座」で台本を書いたのを契機に執筆活動に。
PR誌記者や広告代理店を経てフリーに。
『フィリッピーナを愛した男たち』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

上記内容は本書刊行時のものです。