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すぐにわかる 戦争法=安保法制ってなに? 戦争をさせない1000人委員会(編) - 七つ森書館
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すぐにわかる 戦争法=安保法制ってなに? (スグニワカルセンソウホウアンポホウセイッテナニ)

社会一般
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発行:七つ森書館
新書判
240ページ
並製
定価 1,200円+税
ISBN
978-4-8228-1537-0   COPY
ISBN 13
9784822815370   COPY
ISBN 10h
4-8228-1537-4   COPY
ISBN 10
4822815374   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2015年7月
書店発売日
登録日
2015年6月15日
最終更新日
2016年5月25日
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紹介

国会論戦がつづく「戦争法」(いわゆる安保法制ともいう)の分かりやすい解説と、それに反対する著名人の声を一冊にまとめる。また、第一次安倍内閣からの改憲策動、教育基本法改悪、秘密保護法、武器輸出三原則、国家安全保障戦略(NSS)などを踏まえて、戦争法=「安全保障法制」の理解を深める。

目次

まえがき──戦争法を考えてみよう(飯島滋明)

第1章 戦争法って、なに?
 1 戦争法とは?(飯島滋明)
 2 グレーゾーンって、なに?(清水雅彦)
 3 国際平和支援法って、なに?(飯島滋明)
 4 集団的自衛権が行使されると?(清水雅彦)
 5 ガイドラインが再改定されたけれど、どうなるの?(前田哲男)
 6 沖縄の問題はどうなるの?(高良鉄美)
 7 アフガニスタンでは、どうだったの?(清末愛砂)

第2章 私たちも戦争法に反対します!
 政治が越えていけない一線がある、それが立憲主義です(青井未帆)
 究極の使い捨て労働が戦争です(雨宮処凛)
 7月1日は壊憲記念日(上野千鶴子)
 戦争が終わったときの電気の輝きが忘れられません(小山内美江子)
 私たちが多数です。いまや戦争反対が多数の声になりました(鎌田慧)
 たった一つの道ではなく、たくさんの道を残したい(小室等)
 平和のパスポートが、戦争のパスポートに変わろうとしている(佐高信)
「再び戦争をしてはならない」それが俺のただひとつ唱える念仏だ(菅原文太)
 平和の申し子たちへ!──泣きながら抵抗を始めよう──(なかにし礼)
 55年前の先輩の思いを引き継いで、安倍晋三を返り打ちにしよう(山口二郎)

第3章 憲法と平和を考えよう
 この国が、戦争をする国にならないようにするために(高橋哲哉)
 集団的自衛権論の歴史的背景(浦田一郎)
 日本国憲法は平和主義そのものです(高良鉄美)
 哲学の欠如したところからは力は生まれないと、私は信じている(落合恵子)

第4章 最高裁判決Q&A
 砂川事件最高裁大法廷判決Q&A(内田雅敏)
 政府自民党の対応Q&A(内田雅敏)

おわりに──集団的自衛権行使容認は、日本の平和資源を破壊する(内田雅敏)

前書きなど

まえがき──戦争法を考えてみよう(飯島滋明)

 2015年5月14日、安倍自公政権は「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」と称する2つの法案を閣議決定し、15日に国会に提出しました。
 安倍首相は閣議決定後の記者会見で、「もう2度と戦争の惨禍を繰り返してはならない」などと述べて、法案の必要性を力説しました。法案でも、自衛隊の行動は「武力による威嚇又は武力の行使」でないとされています(たとえば国際平和支援法案2条2項)。
 ただ、法案で想定されている内容をみれば、「後方支援」や「機雷掃海」、「船舶検査」など、国際社会では「武力の行使」と看做されるものばかりです。
 自民党や公明党の政治家ですが、戦闘中の軍隊への後方支援などが「武力の行使」にあたらないと本気で思っているのでしょうか? そうであれば、軍事知識の幼稚さには驚くほかはありません。こんなお粗末な知識しか持たない政治家の決断の結果、海外で戦闘をさせられる自衛隊員やその家族はたまったものではないでしょう。
 また、「武力行使」に当たるのは分かっているのに「武力の行使」でないとして、国民を海外に派兵する戦争法を制定しようとするのであれば、主権者である国民をだまして戦争ができる国づくりをしていることになります。いずれにせよ、国民を愚弄する行為です。
 5月14日の閣議決定後の記者会見などで、安倍首相は朝鮮や中国の存在を挙げ、海外での武力行使を可能にする戦争法案を正当化しました。ただ、北朝鮮のミサイルが脅威だと思っているのであれば、原発を再稼働させようとする安倍自民党の政治は支離滅裂です。
 中国との関係でも、たとえばイギリスの新聞The Guardian Weekly, 02.01.2015は、「主流の歴史家たちは、文書や目撃証言などを引用して、戦争が終わるまでに約20万人の女性、その多くは日本に占領されていた朝鮮の女性たちが駆り出されて日本兵の性の相手をさせられたと判断している。安倍首相を含めた、日本の修正主義者たち(Japanese revisionists)は、慰安婦たちは強制されていなかったと主張することで、中国、韓国、アメリカとの緊張関係を高めてきた」と指摘しています。この指摘のように、多くは14歳から20歳の韓国・朝鮮の女性約20万人が「慰安婦」として強制的に日本兵の性の相手をさせられたというのが国際社会の一般的な認識です。
 南京大虐殺に関しても、「6週間で、日本兵は恐ろしい形の戦争犯罪を犯した。25万人から30万人の民間人が殺され、数万人の中国人女性──幼女や老人も──が強姦された」(TIME LIFE WORLD WAR ─GREATEST BATTLES, TIME HOME ENTERTAINMENT, NEW YORK, 2014,p4)というのが国際社会の一般的な評価です。
 ところが安倍首相などの右翼政治家はアジア太平洋戦争の際の日本の非人道的行為の存在を否認したり、戦争を起こしたA級戦犯が祀られている靖国神社に参拝しています。中国との関係悪化を招いた一因、それは安倍首相の言動なのです。にもかかわらず、自分の言動を棚にあげて中国の脅威をあおり、国民を戦場に送る戦争法を成立させようとする政治をどう考えるべきでしょうか?
 そしてほんらい、戦争法の問題については、「権力の監視」「社会の木鐸」を自称するメディアが社会に提起すべきです。
 この点、確かに「権力の監視」の役割を果たし、戦争法案の問題を世間に問う、立派なメディア、ジャーナリストも少なくありません。
 ただ一方で、タイの新聞THE NATION, 26, February, 2015が「日本のメディアは安倍政権のもとで自己検閲を広げている」と指摘するように、安倍政権との関係に配慮して自粛するメディア、「権力の監視」どころか「権力のきわめて忠実な番犬」になり下がったメディアも少なくありません。
 国民主権の父と言われるJ・J・ルソーは『社会契約論』で「国民は欺かれることがある」と述べています。政府やメディアの宣伝により、海外での武力行使が「積極的平和主義」などという見解が国民に浸透した結果として多くの国民が戦争法案を支持すれば、それこそ私たちは安倍自公政権やその忠犬である一部のメディアに「欺かれた」ことになりかねません。これではルソーが危惧したことが現在の日本社会で実現されてしまいます。
 そこで戦争法案の問題を広く社会に提起しようというのが本書の意図です。
 戦争で最大の被害を受けるのは、戦争を起こした政治家ではなく、一般市民です。戦争法に関しても、リスクが高まるのは、戦争法案を成立させようとする安倍首相などの政治家、決して危険な戦場に行く気もない自民党や公明党の政治家たちでなく、戦場に行かされる自衛隊員、日本が戦争に関わることでテロの対象とされるリスクが高まる一般市民です。そうであるからこそ、私たちは戦争法案の問題を自分たちの問題として真剣に受け止める必要があります。
 最近ですが、女の子の赤ちゃんが生まれた際、「女の子で良かった。徴兵されない」と発言された年配の女性の話を聞きました。悲惨な戦争の体験が、こうしたことを言わせた原因だと思われます。ただ、「徴兵制は現在ではあり得ない」などと断言できるのでしょうか?  
 実際、野中広務さんや加藤紘一さんといった元自民党政治家、小池清彦さんといった防衛官僚は、自衛隊が海外で戦争をするようになれば、自衛隊への志願者の減少⇨徴兵制、という危険性を指摘しています。
 また、戦争は女性とも決して無関係ではありません。「海自史上最大の護衛艦」(自衛隊の準機関紙である『朝雲』2015年4月2日付)であり、陸海空の3自衛隊の「指揮中枢艦」(『朝雲』2015年1月1日付)と言われる、ヘリコプター搭載護衛艦の「いずも」ですが、「将来、乗員の半分が女性になることもあるかもしれません」とのことで、「女性の乗艦前提に建造」されています(『朝雲』2015年1月1日付)。働く女性の20人に1人は看護師ですが、実際に湾岸戦争(1990年~91年)の際、アメリカの要請で日本は50人の中東医療派遣団を派遣しています。1999年の周辺事態法や2003年の有事三法の制定の際、自民党は看護師に負傷兵の手当を強制的にさせる法律の制定を検討しました。歴史をみても、アジア太平洋戦争の際、約3万5000人の医療関係者が戦場に派遣され、看護師1120人、医師8人、薬剤師1人が殉職されています(『従軍看護婦たちの大東亜戦争』刊行委員会編『従軍看護婦たちの大東亜戦争』祥伝社、2006年、297頁)。戦争になれば、医師や看護師も戦場に行かされる可能性が高いのです。子どもや孫の世代のためにも、「海外で戦争のできる国づくり」をすすめる安倍自公政権について私たちは真剣に考えることが求められています。
 なお、「戦争をさせない1000人委員会」では、HPやリーフレット、「1000人委員会ニュース」(HPから入手可能)などを通じて、安倍自公政権による、「海外で戦争できる国づくり」に関わるさまざまな問題について問題提起をしています。1000人委員会のそうした問題提起を広く知って頂くことも主権者として適切な判断をするためには極めて有益であると考え、本書では「第4章 最高裁判決Q&A」として掲載しています(HPではhttp://www.anti-war.info/information/1506131/)。
 「戦争をさせない1000人委員会」HPでの問題提起と同時に、本書を通じて戦争法案の問題を考えて頂ければ幸いです。

   2015年6月23日   沖縄慰霊の日70年目の日に

著者プロフィール

戦争をさせない1000人委員会  (センソウヲサセナイセンニンイインカイ)  (

戦争への道を突き進む政府の暴走を阻止し、一人ひとりの平和に生きる権利を守りぬくため、雨宮処凜、内橋克人、大江健三郎、大田昌秀、奥平康弘、小山内美江子、落合恵子、鎌田慧、香山リカ、倉本聰、佐高信、瀬戸内寂聴、高橋哲哉、高良鉄美、田中優子、山口二郎を発起人として、2014年2月に立ち上がった委員会。

上記内容は本書刊行時のものです。