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誰が平和を殺すのか 佐高 信(編著) - 七つ森書館
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誰が平和を殺すのか (ダレガヘイワヲコロスノカ)

社会一般
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発行:七つ森書館
新書判
264ページ
定価 1,200円+税
ISBN
978-4-8228-1418-2   COPY
ISBN 13
9784822814182   COPY
ISBN 10h
4-8228-1418-1   COPY
ISBN 10
4822814181   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2014年11月
書店発売日
登録日
2014年10月17日
最終更新日
2015年1月29日
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紹介

「今の政治家は戦前を知らなさすぎですよ。それで日韓関係などバカなことを言うなということですね。従軍慰安婦問題もそうです。当時、韓半島から何十万という男女が日本列島に連れてこられ、男性は炭鉱の奥で働かされて、抵抗したら殺されたんですよ」(亀井静香)。『ブラック国家ニッポンを撃つ』『民主主義の的は安倍晋三』に続く、佐高信の緊急対論50選の続刊! 巻頭では、亀井静香氏とのスペシャル対談を掲載!

目次

はじめに(佐高信)

巻頭スペシャル対論 亀井静香が問うニッポンのいま亀井静香

第1章 国家の嘘を見抜く
     『神聖喜劇』にみる上級者無責任論●大西巨人
     こんなにもバカにされているのに、なぜ?●ピーター・バラカン
     「水俣病」──未来への教訓●原田正純
     ある精肉店の話●纐纈あや
     今も繰り返される「国家の嘘」に、どう向き合い、見抜き、抗うのか●田中伸尚
     われら64歳 朝焼けを生きる●落合恵子

第2章 抵抗への招待
     高田渡のダンディズム●井上陽水・小室等
     「そんなこと考えたこともなかったな」●矢野顕子
     「マコトちゃん」の話題はタブーでした●湯浅誠
     自分は無力であることを自覚する●山田太一
     日本人が「イムジン河」を歌う違和感●小室等・李政美
     慰安婦の真実を描き問う、日本人の自我●梁石日
     沖縄が「日本国」から自立する思想●新川明

前書きなど

はじめに

 六月に和歌山に講演に行った時、帰りに新大阪駅で新幹線に乗ろうとして、バッタリ、亀井静香さんに会った。そして、東京までの二時間余りを二人で話してきたのだが、時折り通りかかる人が、
 「エッ」
 というような顔で見て行く。
 多分、亀井さんと私の組み合わせが意外なのだろう。
 それで私は、自民党、社会党、新党さきがけの、いわゆる「自社さ」政権が誕生した時、社会党と会派を組んでいた参議院議員の國弘正雄さんが、
 「政治は、時に"strange bed fellow"つまり、奇妙な同衾者を生む」
 と言っていたのを思い出した。
 同時通訳者としても名高い國弘さんらしい言葉である。
 当時、亀井さんは自らを「ハトを守るタカ」と称していたが、亀井さんは両面を持っている。
 悪いことができない人はいいこともできないのであり、この逼迫した状況下に両方できる人として亀井さんに登場してもらった。この本のための巻頭対談である。
 亀井さんが自民党にいたころは、青嵐会の後を継ぐ国家基本問題同志会などをつくって、右翼的言動を繰り返してもいた。それについては私も激しく批判したが、イラク戦争の時には、加藤紘一さんなどと一緒にイラクへの自衛隊派遣を延長しないよう、当時の小泉首相に申し入れたりもしている。
 亀井さんで一番驚くのは、筋金入りの死刑廃止論者であること。廃止を推進する議員連盟の会長として、森山(真弓)法相が続けて死刑を執行した時には、
 「大臣はすべからく現場に出ることが大切なのだから、どうしても死刑を執行したいなら、それに立ち会え」
 と言ったという。
 この、至極もっともな提案には、彼女は答えられなかったとか。
 二〇〇五年には土井たか子さんらが呼びかけ人の「憲法行脚の会」に招かれ、土井さんと憲法論議をしている。
 亀井さんは、二〇〇一年秋に、ある雑誌で次のように日本の経営者を批判しているが、残念ながら経営者の質はさらに悪くなっていると言わざるをえない。
 「例えば日立でも東芝でも大量のリストラをするでしょう。昔から不景気のときでも、経営者は歯を食いしばって従業員を解雇しないで、日立一家とか東芝一家といって我慢してきた。ところがいまは余剰人員を吐き出すのが構造改革だといってリストラをする。リストラをすれば株価は上がる、そんな簡単な分析がまかり通っている」
 久保田万太郎の「何もかも昔の秋の深きかな」を引いて〝昔〟を持ち上げるわけではないが、たとえばトヨタで、かつて、大量の首切り(いまどきはリストラという)をやった時、社長は自らの首も切った。
 ところが、日立でも東芝でもパナソニックでも、首切りという最も安易な再建策をあたかも自分の手柄のようにして居すわる。鉄面皮も甚だしいと言わなければならない。だから、亀井さんに次のように詰られるのである。
 「自らニュービジネスを創設して余剰人員を吸収するといった努力をするなら話はわかるが、それもしないで簡単に従業員の首を切って政府に突き出して、失業保険などで面倒をみろというのでは、いくら理想論を言ったって大きな政府にならざるをえないじゃないか。改革とは逆なことを民間の経営者たちは堂々と〝そこのけそこのけお馬が通る〟でやっている。それが企業が身軽になるアメリカ的経営であるというんですからね」
 正論だろう。しかし、いまはそれが〝異論〟として脇に押しやられる。
 亀井発言の中の〝民間の経営者〟で一番無責任なのが、あるいは銀行のトップかもしれない。
 亀井さんの弾劾は続く。
 「日本の資本主義はもう死んでいますよ。原始時代に返っているんだ。だって金融がなくなってしまったんだから。金融のない社会というのは原始社会です。貸したり借りたりして経済が動いていなければ資本主義は成り立たない。それが『貸しません』となれば、もう物々交換の経済でしょう」
 亀井さんは死刑廃止論者だけに、その首切り反対論には迫力がある。
 最後に、亀井さんだけでなく、この本への収録を認めて下さった対論者のみなさんに、改めてお礼を申し上げたい。

   二〇一四年十月六日  佐高 信

著者プロフィール

佐高 信  (サタカ マコト)  (編著

 1945年山形県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。高校教師、経済誌編集長を経て、現在、評論家、「週刊金曜日」編集委員。
 おもな著書に『未完の敗者 田中角栄』(光文社)『安倍政権10の大罪』(毎日新聞社)、『佐高信の百人百話』(平凡社)、『世界と闘う「読書術」』(佐藤優と共著、集英社新書)、『飲水思源』『現代日本を読み解く200冊』(ともに金曜日)、『西郷隆盛伝説』(光文社知恵の森文庫)、『福沢諭吉と日本人』(角川文庫)、『昭和 こころうた』(角川ソフィア文庫)、『昭和恐慌の隠された歴史』『民主党の背信と小選挙区制の罪』『竹中平蔵こそ証人喚問を』『自分を売る男、猪瀬直樹』『自分を売らない思想』『自民党首相の大罪』(いずれも七つ森書館)など。

上記内容は本書刊行時のものです。