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辺野古って、なに? 沖縄の心はひとつ
7月27日 沖縄「建白書」を実現し未来を拓く島ぐるみ会議結成大会 発言録
- 初版年月日
- 2014年10月
- 書店発売日
- 2014年10月17日
- 登録日
- 2014年10月6日
- 最終更新日
- 2015年1月29日
紹介
「辺野古強行をやめさせよう─沖縄の心をひとつに 沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議結成大会」(2014年7月27日、沖縄・宜野湾市民会館)が開催されました。米軍普天間飛行場の県内移設を断念させ、辺野古新基地建設強行をやめさせるための大会です。全発言を記録し、建白書と関連資料を収録します。
目次
目次
はじめに──私たちには、人間としての普遍的で「不可侵の権利がある」──島袋 純
建白書
●建白書共同代表から開会の挨拶
建白書に盛り込まれた課題を実現する取り組みを強化していこう──仲村信正(前連合沖縄会長)
●共同代表から
安心して暮らせる沖縄の島をとりもどすために──大城貴代子(元県女性政策室長)
オスプレイ配備を撤回させるために、新たな基地建設を許さない──大城紀夫(連合沖縄会長)
ウチナンチュの尊厳、基本的人権、平和な暮らしを守ることがもっとも重要──呉屋守將(金秀グループ会長)
沖縄の人の魂を奮い立たせて、日本政府にNOを突きつけて、沖縄から日本を変えていく──平良朝敬(かりゆしグループCEO)
サバイバーとして生き抜いてきた私たちのこの力で、辺野古を止めましょう──高里鈴代(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会代表)
全軍労は「基地を返せ!」という闘いをした──友寄信助(元社民党県連委員長)
心ある自由民主党は、何としても公約を守ってやらなくちゃいかん──仲里利信(元沖縄県議会議長)
沖縄は存在するだけで、日本にとっては大きな国益になっている──宮城篤実(前嘉手納町長)
それぞれの場でそれぞれの人たちが、それぞれのやり方を発揮しよう──由井晶子(元沖縄タイムス編集局長)
要求だけでなく、国の中に具体的に話を持ち込んでいくアクションを──吉元政矩(元沖縄県副知事)
●議員団代表から
私たちは決して諦めない、屈しない、そして、許さない──仲宗根悟(沖縄県議会・社民・護憲ネット代表)
オール沖縄をつくることが、日本政府が、もっともおそれることであります──奥平一夫(県民ネット議員団代表)
建白書に込められた沖縄県民の総意は、断じて揺るがない──渡久地修(日本共産党県議団代表)
沖縄の未来、基地のない沖縄のために、党派を超えて闘って勝利をしよう──大城一馬(沖縄社会大衆党県議団代表)
同じ仲間であった自民党県連が、れわれを処分するのは理解に苦しむ──金城 徹(那覇市議会自民党新風会議員団代表会長)
●今後の取り組みについて
現地を基本に県内を包囲し、国内世論を喚起し、世界に沖縄の現状を訴えていこう──玉城義和(建白書島ぐるみ会議執行委員・沖縄県議会議員)
●辺野古強行を止めさせよう、沖縄の心をひとつに、沖縄建白書を実現し未来を拓く島ぐるみ会議結成アピール
●論壇から
建白書実現へ再結集を──民意と尊厳否定する新基地建設(島袋 純)
辺野古強行を阻止へ──「島ぐるみ会議」を結成(うつみ宮城恵美子)
新基地反対 直接行動を──県庁前から辺野古 毎週バス運行(宮城恵美子)
市民参加で新基地阻止を──「辺野古バス」毎週運行(宮城恵美子)
●声明
辺野古新基地強行工事の中止を求める抗議声明
●沖縄県議会の意見書
辺野古でのボーリング調査等の強行に抗議し、新基地建設工事の即時中止を求める意見書
●これまでの主な動き
●沖縄の米軍基地
●辺野古新基地計画
●沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議 発起人と事務局
*肩書は大会当日のものです
前書きなど
はじめに──私たちには、人間としての普遍的で「不可侵の権利がある」
■沖縄・辺野古で起きていることの意味
太平洋戦争末期、鉄の暴風と言われた激戦後、米軍による直接的な軍事占領は、琉球・沖縄の島々が私たち自身のものであり、私たちこそがこの島々の歴史と文化を継承しまた創り出していく主体者であることを圧殺しました。
その典型的なできごとが、一九五五年、伊江島と伊佐浜の住民の居住地、家屋と農地を火炎放射器で焼き払い、ブルドーザーでなぎ倒し、銃剣を突きつけて強制排除した歴史です。「何の権利もない」として沖縄の人びとを虫けらのように扱ったのです。
私たちには、人間としての普遍的で「不可侵の権利がある」のです。沖縄の人びとが戦後はじめて米軍の支配に異議申し立てをし、起ち上がったのは、権利を侵害される悲しみ・苦しみの共有・共感と権利意識の覚醒による社会的な連帯に基づくものなのです。その全琉的な連帯が、米軍の弾圧下において一〇万人を超える集会を自主的に立ち上げていくことをはじめて可能としたのです。そこから自分たちの島を自分たちで切り拓いていく主体性回復の基盤を築き上げていったといえます。一九五六年に始まる島ぐるみ闘争は、米軍が剥奪した権利と主体性の回復の闘争です。
しかし、一九七二年の沖縄施政権の日本への返還は、必ずしも沖縄の人びとの権利と主体性の回復を願う心、沖縄の心に沿うものではありませんでした。不法に権利と主体性を剥奪して建設された米軍基地の、復帰前と変わらぬ存続こそが、復帰後の日本政府の対沖縄政策の本質だったのです。沖縄の人びとの権利や主体性の回復に関する願いや要望は決して聞き入れず、「まず基地ありき」であり、その容認を前提にして沖縄への制度や政策が整備されてきました。
一九九五年に起こった一二歳の少女に対する海兵隊員複数による暴行事件後、人権蹂躙の我慢の限界を超えた沖縄からの基地閉鎖や撤去の要求は、日米両政府によって整理縮小と銘打ちつつ、すべて県内移設あるいは移設に見せかけた新設、つまり基地の強化の取り決めにすぎませんでした。沖縄の人権と主体性の回復の要求は無視され続けてきました。
オスプレイの普天間配備や辺野古への新基地建設もその延長上にあり、さらにひどい沖縄の人びとの権利の侵害と主体性の破壊の上に成り立っています。
■「島ぐるみ会議」結成の意義
それに対して二〇一三年一月二八日、沖縄県議会の議長と全会派代表、全市町村の長および議会議長、主要経済社会団体代表の直筆署名と捺印をともなう建白書が安倍総理大臣に手渡されました。この建白書は、島ぐるみでオスプレイの配備撤回、普天間基地の即時閉鎖と県内移設断念を要求するものです。
私たちには不可侵の普遍的な権利があり、建白書を当然の要求として掲げます。
私たち自身が沖縄の未来を拓いていく主体です。「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」は、一人ひとりの権利の覚醒とともに幅広い連帯を求め、歴史を創造していく主体性の回復を基盤に、島ぐるみで建白書の要求を実現していくものです。実現するまで息の長い運動となります。
そのために組織加盟、組織団体代表による連合という協議会型の仕組みをとっていません。あくまで個人参加を基礎とする市民連帯の運動組織です。
このブックレットは、二〇一四年七月二七日に開催された「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議結成大会」における代表者らの発言記録です。島ぐるみ会議共同代表や会派代表の結成大会における言葉は、組織を背負った言葉ではなく、個々の方々に参加を呼びかけ連帯する市民の言葉として受け取ってください。多くの方にこの呼びかけに応えてもらいたいと思います。
■この本を手にとっているあなたへ
沖縄の基地問題の本質は、たとえ戦勝国といえども市民の基本的人権を侵してはならないとする国際人道法、ハーグ陸戦条約を無視し、沖縄の人びとの所有権を認めず、反抗するものの逮捕など、はなはだしい人権侵害のもとに米軍基地が建設されたことにあります。
さらに、日本への施政権返還後でさえも、世界中の国々で市民の安全や環境を守るために制定されている航空法、刑法等、ごく当たり前の法規範が、日本政府により米軍に関しては適用除外とされました。治外法権的に基地の自由使用の権利を与えてしまったために引き起こされる多種多様、大量の人権侵害にあります。この人権侵害は、金銭的な見返りによって解決できるものではありません。
一九九五年の少女暴行事件は、氷山のほんのかけらにすぎず、日本の刑法及び刑事手続が適用されないため、多くの米軍の事故や犯罪が野放しとなっています。二〇〇四年には沖縄国際大学に墜落して校舎を破壊し、学生や付近住民を恐怖の底にたたき込み震撼させた米軍機事故が起こりました。事故現場を米軍が差し押さえ警察による調査の立ち入りさえ拒否されました。なんらかの重大な過失があったが故に墜落した可能性があるのに、日本側はそれを調査も追究することもいっさいできず、米軍の関係者は誰一人として処罰されませんでした。
一九五九年、石川市(当時)の宮森小学校に墜落し多数の児童を殺傷したジェット機墜落事故のころと米軍の特権は何も変わらない状況です。日常的に小中学校、高校、大学の上空を低空で爆音を響かせて飛ぶ米軍機は、子どもや若者にとってもっとも重要な基本的人権である教育を受ける権利を侵害し、さらには児童生徒の平穏のうちに生きる権利を侵害しているのです。
辺野古に普天間基地の代替を名目にさらに機能を強化した新基地を建設するということは、このような人権侵害を人口密集地から比較的人口の少ない地域へ転化することにすぎません。普天間と辺野古は、わずか五〇キロも離れていない場所にあります。札幌市や広島市などに当てはめれば、同じ市内での移設となる距離であり、日常の人権侵害を受ける地域や人びとの比重が少し変わるだけにすぎないのです。
大浦湾、辺野古の海は、古来より地元の人びとが誰でも自由に入れる入り会いの海として慣れ親しんできた海です。海に入り生活の一部とする権利があります。国は大浦湾の大半にブイを浮かべて囲み、暴力によって大浦湾に入ってくる人びとを排除して建設を進めています。基地そのものが人権侵害を引き起こすものですが、建設過程も沖縄の人びとの人権侵害そのものです。
名護市では、一九九七年に市民投票を行い、市民の総意として辺野古への新基地建設反対の意思が確定しました。さらに二〇一四年一月、辺野古新基地建設の賛否を争点とする市長選挙においても、反対を公約とする候補者が圧勝しています。地元で示された明白な反対の意思にもかかわらず、強制的な建設を強行するということは、さらなる人権と民主的な意思の蹂躙です。
原発の問題で似た構造をもつと言われる沖縄の基地問題ですが、原発の問題を問う住民投票において明白な拒否が示された地域に、警察、海上保安庁、はては自衛隊まで出動させて国が建設を強行するというということは、日本の歴史上ありません。国は沖縄にだけ差別的な暴力による強行建設を実施しているのです。沖縄の憤りは限界を超えています。「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」は、このような状況に島ぐるみで立ち向かうため結成された市民的ネットワーク組織なのです。このブックレットに収められたそれぞれの発言に耳を傾けてください。
沖縄「建白書」を実現し未来を拓く島ぐるみ会議事務局 島袋 純
上記内容は本書刊行時のものです。