書店員向け情報 HELP
日本の今を問う
沖縄、歴史、憲法
- 初版年月日
- 2014年9月
- 書店発売日
- 2014年9月26日
- 登録日
- 2014年8月13日
- 最終更新日
- 2015年1月29日
紹介
特定秘密保護法の制定で、国民から「知る権利」を奪った安倍政権。そして、武器輸出の事実上の解禁に続き、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更が閣議決定されました。
これは日本を再び、戦争のできる国へと回帰させるものです。日本国憲法が大きな危機に直面する中、沖縄、歴史、憲法をテーマに日本のこれからを考えます。
目次
はじめに(佐高 信)
1 沖縄から撃つ安倍政権(三上智恵・照屋寛徳)
2 戦後保守政治と憲法(佐高 信・早野 透)
3 孫が祖父に聞く歴史認識、そして現代へのまなざし(村山富市・雨宮処凛・佐高信)
戦後五〇年に際しての談話(「村山談話」全文)
前書きなど
はじめに
沖縄県名護市辺野古に米軍基地を建設するために、安倍政権は住民の必死の反対を無視して、暴力的にそれを強行しようとしている。そこまでしてアメリカに気に入られたいのか。
かつて、「琉球処分」された沖縄は、いままた、それを再現されんとしている。
一方、東京にオリンピックを招致したいがために、安倍は「アンダー・コントロール」などと言って、東京は大丈夫だと強調した。それは原発に汚染された福島を含む東北は切り捨てるということである。これを「東北処分」と言わずして何と言うか。
再度の「琉球処分」が強行される沖縄と「東北処分」が進行する東北──この国の矛盾を最前線で背負わされる二つの地方で、社民党はまだ根強い支持を得ている。先頭に立って闘っていることを認められているということである。
ここから反転攻勢しよう。
そんな思いで「日本の今を問う」三連続対談を企画した。
最初の対談は、「標的の村」を撮った映画監督の三上智恵さんと沖縄選出の社民党代議士、照屋寛徳さんの「沖縄から撃つ安倍政権」。
「三上さんは映画カントクとなってまもないけれども、私はカントクを六八年やっている」
意表をつく照屋さんのダジャレで始まったこの対談は、笑いの中に沖縄の現在、そして「日本の今」をくっきりと浮かび上がらせた。
この土地は我等のものだ
この空も我等のものだ
と始まる「高江の空」という詩は、
それでもオスプレイが来るなら
取り返しに行こう
我等の土地を
と続く。高江は「標的の村」にされた沖縄の集落であり、「高江と辺野古は不離一体」と照屋さんは指摘する。
二番目が、『田中角栄 戦後日本の悲しき自画像』(中公新書)の著者、早野透さんと『未完の敗者 田中角栄』(光文社)を書いた私の「戦後保守政治と憲法」。つまりは「田中角栄論」である。
早野さんは、田中の秘書だった早坂茂三の『オヤジの遺言』(集英社インターナショナル)の序文で、こう言っている。
「驚きましたよ、『越山会』には元共産党員も元社会党員もいるんですね。戦前の小作争議を闘った人たちですよ。もう戦争はいやだ、せっかく農地解放で生きるすべを手にしたんだ、もっと豊かになりたい、そんな思いで角栄さんを担いでいるんですね。こりゃ利益還元政治というより民衆同盟だな。盟主の角栄を裁こうとする東京のエリート権力への抵抗の気持ちがあるんだな」
ある意味で社会民主主義者と言ってもいい田中に社民党は先を越されたのではないか。
クリーンなタカの小泉純一郎よりダーティなハトの田中角栄をと私は主張してきたが、それがあまり理解されないまま、私たちはアホなタカ(それだけに恐い)の安倍に引っかきまわされている。
最後は、その安倍が目の敵にする「村山談話」の村山富市さんと作家の雨宮処凛さんの「孫が祖父に聞く歴史認識、そして現代へのまなざし」である。これは何度かやって一冊の本にしたらいいと思うほどの組み合わせだった。
六月二〇日に行われ、けっこう評判となったこのユニークな三連続対談を活字にしてほしいという声がかなりあったので、ここに刊行の運びとなった。
企画を手伝った者として「はじめに」を書いた次第である。
二〇一四年八月二〇日 佐高 信
上記内容は本書刊行時のものです。