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徹底検証 日本の電力会社
- 初版年月日
- 2014年9月
- 書店発売日
- 2014年9月17日
- 登録日
- 2014年8月13日
- 最終更新日
- 2015年1月29日
紹介
東京電力のような巨大な株式会社を国民の税金で救済するというのはどういうことか? それがヒューマニズムなのか? これは基本的な問題なのだが、東京電力の事故が起こって、実際に国民の税金がこの会社に投入されているにもかかわらず、そのことの意味が論じられていないのはどうしたことか……。
本書では、長年、著者が提唱し続けた「会社学」の観点から東京電力を論じるとともに、単に東電だけでなく、日本の電力会社全体の実態を明らかにする。
目次
第1章 東京電力の事故は何を物語るか?
第2章 会社=法人の責任
第3章 経営者の責任
第4章 危機に陥った株式会社
第5章 10電力体制
第6章 電力会社はなぜ“地域独占”なのか?
第7章 国有化とは何か?
第8章 電力会社と政・財界との関係
第9章 原発を推進した労働組合
第10章 発送電分離は実現するのか?
第11章 会社を解体、分割せよ!
第12章 脱原発へ──新しい企業像を求めて
前書きなど
あとがき
私が株式会社の研究を始めてから半世紀以上たった。当初は株式所有の問題から出発して、株式会社を理論的、そして歴史的に研究していこうとしたが、その際、何よりも「現実の上に立った研究」ということをモットーとしてきた。
一般に、株式会社の研究といえば、アメリカとイギリス、あるいはドイツの経済学者や法学者の書いた本や論文を読み、せいぜいのところ、それを日本に適用するというのが日本の学者のやり方である。
これに対して私は、何よりもまず日本の「現実の上に立って研究する」という方針を貫いてきた。
この本でもそういう態度で一貫している。
この本は、いわゆる「企業の内幕もの」ではない。書店に並んでいる企業に関する多くの本は、会社の宣伝用のものか、それとも会社内部の人事や、会社が起こした事件についての「内幕もの」である。
これに対して、私は会社を客観的にとらえ、理論的に会社を解明しようとしてきた。
そこで、東京電力をはじめとする日本の電力会社について展開したのがこの本で、電力会社について書かれたさまざまな本や雑誌、そして新聞を材料にし、さらに社史などを利用して書いた。
福島第一原子力発電所の事故のあと、2011年10月に東洋経済新報社から『東電解体』を出したが、それ以後の動きに重点を置いている。
また、取り上げた問題は単に東京電力、あるいは日本の電力会社だけに限られたものではなく、日本の大企業体制全体にかかわる問題である。その大企業体制がいま危機に陥っている。そのあらわれが東京電力の原発事故であるという見地からこの本を書いたのであるが、これまで私が書いてきた本を利用している。
先の『東電解体』のほか、『日本の株式会社』(東洋経済新報社)、『無責任資本主義』(同)、『倒産はこわくない』(岩波書店)、『株式会社に社会的責任はあるか』(同)、『21世紀の企業像』(同)などである。
私の提唱する「会社学」については『会社学入門』(七つ森書館)、『会社はどこに行く』(NTT出版)、および『会社の哲学』(東洋経済新報社)を参照されたい。
最後に、東京電力はこれからどうなるのか、そして10電力会社はどうなるのだろうか。その見通しはむずかしいが、少なくとも現状を維持することはできない。にもかかわらず政府は現状を維持しようとしている。
そこからさまざまな問題がこれからも起こってくるだろうが、それについて読者はこの本を参考にして判断していただきたい。
二〇一四年八月 奥村 宏
上記内容は本書刊行時のものです。