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民主主義の敵は安倍晋三
- 初版年月日
- 2014年8月
- 書店発売日
- 2014年8月5日
- 登録日
- 2014年7月1日
- 最終更新日
- 2014年10月17日
紹介
「『下々のみなさん』と呼びかけるような感覚の二世三世の政治家が多くなり、ますます弱者が見えなくなってきている。そんな中で安倍晋三が登場してきたことの意味を考えると恐ろしい」。『ブラック国家ニッポンを撃つ』に続く、佐高信の緊急対論50選の続刊! 巻頭では、本書のために行った芸人・松元ヒロ氏とのスペシャル対談を掲載!
目次
はじめに
巻頭スペシャル対談 安倍晋三の敵は松元ヒロ●松元ヒロ
第1章 民主主義に希望はないのか
電力を通じたこの国の再建●古賀茂明
いま「言論の自由」を考える●加藤紘一・小森陽一・鈴木邦男・早野透
右翼の言論テロとナショナリズム●鈴木邦男
右翼と左翼の交差点●鈴木邦男
日本人全体に戦争責任がある●本島等
丸山眞男と戦後民主主義●雨宮処凛
第2章 受け継ぐもの、引き継ぐもの
徳間康快「豪快漢の真実」を語る●森村誠一
久野収「か!」が付かない知識人●中山千夏
受け継ぐもの、引き継ぐもの●四方田犬彦
原田正純の立ち位置と目線●栗原彬
藤沢周平 その人と文学●田中優子
藤沢周平 雪冤の文学●蒲生芳郎
前書きなど
はじめに
安倍晋三は典型的なマザコンのためか、母洋子の父、岸信介の話しかしない。しかし、父晋太郎の父、安倍寛も政治家で、戦争中の翼賛選挙に非推薦で当選した政友会の代議士だった。
骨の髄からの官僚で統制派の岸信介とは対照的なリベラリストだったのである。
『毎日新聞』記者出身で元外相の安倍晋太郎はそれを誇りに思い、
「私は岸の女婿ではない。安倍寛の息子だ」
と言うのが常だった。
晋三は、父親を疎ましく思うエディプス・コンプレックスを充満させ、晋太郎のことにもほとんど触れない。この安倍晋太郎の異父弟が日本興業銀行元頭取の西村正雄だった。西村は二〇〇六年八月一日に急逝したが、私は作家の高杉良に紹介され、愚かなる甥の晋三を心配する手紙をもらったりした。たとえば、二〇〇五年四月十六日付の手紙には、こうある。
〈安倍晋三に関しても、かねがね「直言する人を大事にしろ」と言っておりますので、厳しく批判して頂きたいと存じます。私にまで「次期総理確実ですね」などとお世辞を言う人もおりますが、その都度「未だ十年早い」と答えています。小泉(純一郎)離れとネオコン的体質からの脱皮が総理になる条件です。然し『文藝春秋』の五月号で彼を総理候補に挙げている人が圧倒的に多く、このような世間の風潮には危惧を感じざるを得ません〉
西村は小泉首相の靖国参拝を『論座』という雑誌で厳しく批判するような、骨のあるバンカーだった。
晋三にとって、西村は煙たい叔父だったのだろう。西村が亡くなって三日後の八月四日付の新聞に、晋三が四カ月前の四月に靖国神社にこっそり参拝していたことが報道された。晋三は頭の上がらない叔父にそれを隠していたのである。西村が亡くなって、そのニュースが流れたことがそれを証明している。
こんな姑息な男が、いま、日本の首相なのである。西村は晋三の周囲に「過去の戦争を肯定するなど歴史認識が欠如している」若手議員や、調子がいいだけで無責任な学者やジャーナリストしかいないことを憂えていた。
西村にとっては、晋三が首相になる前に亡くなったことが、あるいは幸せだったかもしれない。
直言する人間もいなくなって、晋三は「過去の戦争を肯定する」どころか、日本を「戦争のできる国」にし、いますぐにでも、戦争を始めかねないありさまである。
集団的自衛権の行使容認がそのスタートだが、晋三は自衛隊の統合幕僚会議議長だった栗栖弘臣が二〇〇〇年に出した『日本国防軍を創設せよ』(小学館文庫)の次の指摘はどう思うのか。制服組のトップはこう言っているのである。
「自衛隊は国民の生命、財産を守るものだと誤解している人が多い。政治家やマスコミも往々この言葉を使う。しかし国民の生命、身体、財産を守るのは警察の使命であって、武装集団たる自衛隊の任務ではない」
自衛隊は「国民の生命、財産を守る」のではなく、「国の独立と平和を守る」のだという栗栖は「国」を次のように規定する。
「(国とは)わが国の歴史、伝統に基づく固有の文化、長い年月の間に醸成された国柄、天皇制を中心とする一体感を共有する民族、家族意識である」とし、「決して個々の国民を意味しない」と念を押す。
つまり、「個々の国民」と「国」は別のものだと栗栖は主張するのである。
あるいは、安倍晋三はそれを誤りだと指弾するかもしれないが、晋三自身が、東京にオリンピックを招致するに際して、東京はアンダー・コントロール下にあるとアピールした。あれは、原発災害に悩む福島を含む被災地を、いわゆる国が主導するオリンピックのために犠牲にした発言だろう。
どんなに否定しても、安倍晋三も栗栖弘臣やその弟子のような田母神俊雄と同じ考えなのである。この巻のタイトルを『民主主義の敵は安倍晋三』とした理由もそこにある。この巻のために新たにやった松元ヒロさんとの対談から、まずはお読みいただきたい。
二〇一四年六月二十五日 佐高 信
上記内容は本書刊行時のものです。