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すぐにわかる 集団的自衛権ってなに? 戦争をさせない1000人委員会(編) - 七つ森書館
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すぐにわかる 集団的自衛権ってなに? (スグニワカルシュウダンテキジエイケンッテナニ)

社会科学
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発行:七つ森書館
新書判
232ページ
並製
定価 1,200円+税
ISBN
978-4-8228-1404-5   COPY
ISBN 13
9784822814045   COPY
ISBN 10h
4-8228-1404-1   COPY
ISBN 10
4822814041   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2014年6月
書店発売日
登録日
2014年5月2日
最終更新日
2015年1月29日
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紹介

 昨年12月、安倍政権は多くの人々の大きな反対を押し切り、「特定秘密保護法」を強行採決・成立させました。今後は「解釈改憲による集団的自衛権行使容認」「国家安全保障基本法強行」へ踏み込もうとしており、日本が戦争に参加できる国になろうとしています。このままで、いいのでしょうか?
 本書では、第一次安倍内閣からの改憲策動、教育基本法、秘密保護法、武器輸出三原則、国家安全保障戦略(NSS)、日本国憲法との関係を示しながら、「集団的自衛権」とは何なのか。また、行使が容認されるとどうなるのか。次代を担う、中高生でもわかるように、やさしく解説します。

目次

序 章 考えてみましょう「集団的自衛権」──飯島滋明

第1章 集団的自衛権の行使容認に反対します!
     雨宮処凛・大江健三郎・奥平康弘・小山内美江子・落合恵子
     鎌田慧・香山リカ・組坂繁之・佐高信・辛淑玉
     高橋哲哉・高良鉄美・山崎朋子・山内敏弘

第2章 集団的自衛権ってなに?
  1 集団的自衛権は日本国憲法に違反しませんか?──飯島滋明
    (1) 集団的自衛権とは?
    (2) 平和主義とはこういうものです
    (3) 平和主義を日本の政府はどう考えてきたのでしょう?
    (4) 集団的自衛権についていろいろな考えがありますが?
  
  2 集団的自衛権にはどんな法律が関係しますか?──清水雅彦
    (1)解釈を変えればできるのでしょうか?
    (2)国家安全保障基本法案というのもあります
    (3)自民党の「日本国憲法改正草案」ってどんなものでしょう?
    (4)憲法を変えようとして政治が動いています

  3 集団的自衛権を世界はどうしているのでしょう?──飯島滋明
    (1)集団的自衛権をこうやっています
    (2)戦争に行った兵士はどうなったのでしょう?

  4 集団的自衛権ができると自衛隊はどう変わるのでしょう?──前田哲男
    (1)防衛政策3文書とはなんですか?
    (2)集団的自衛権で自衛隊はこうなるかも
    (3)安保法制懇の報告書ではどうなるのでしょう?

  5 集団的自衛権の行使容認となると中国や韓国とはどうなるのでしょう?──内田雅敏
    (1)最悪な日中・日韓関係
    (2)日中共同声明による日中国交正常化
    (3)安倍首相の靖國神社参拝は日中共同声明違反
    (4)靖國神社参拝と自民党改憲草案、集団的自衛権行使容認の思想的水脈

  6 安保法制懇第2次報告書と安倍首相の「基本的方向性」は?──飯島滋明
    (1)集団的自衛権の問題について
    (2)集団安全保障の問題について
    (3)グレーソーンについて
    (4)「国民主権」「立憲主義」「議会制民主主義」から

第3章 集団的自衛権ができるとどうなる?
  1 秘密保護法との関係は?──矢崎暁子
  2 教育政策はどうなるのでしょう?──飯島滋明
  3 メディアの報道姿勢は?──山口正紀
  4 原発推進と関係しますか?──澤井正子
  5 武器輸出三原則がゆるめられましたが。──飯島滋明

あとがき やっぱりダメでしょう。──清水雅彦
戦争をさせない1000人委員会とは?──福山真劫

前書きなど

序 章 考えてみましょう「集団的自衛権」──飯島滋明

 いままでの日本政府は、徹底した「平和主義」を採用している日本国憲法との関係で、海外での武力行使や戦争はできないとしてきました。ところが第2次安倍政権では、海外で武力行使や戦争ができる体制づくり、軍備の増強を目指す政策が着々と、しかも国民に気づかれないように進んでいます。こうした政治の動きを簡単に紹介しましょう。
 第2次安倍政権で防衛費は11年ぶりに増加しました。その後、防衛費は2年連続で増加しています。2013年10月、日本の外務大臣、防衛大臣とアメリカの国務長官、国防長官との会談である2+2で「防衛費の増大」も約束したので、今後も防衛費が増大するかもしれません(庶民には増税、負担が次々にのしかかってきていますが)。13年12月6日、国民世論の大反対を押し切って、安倍自公政権は「秘密保護法」を成立させました。本文で紹介されますが、「秘密保護法」もアメリカと一緒に海外での武力行使を目指す安倍首相の政治の一環です。
 13年12月17日、「国家安全保障戦略」と、新しい「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」が策定されました。「国家安全保障戦略」では、海外での武力行使を積極的に行う「積極的平和主義」が基本原理とされ、「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」では海外で武力行使ができる装備が整えられようとしています。
 2014年の通常国会では、安倍首相は集団的自衛権に関する政府解釈を変更しようとして臨時国会では、「自衛隊法」「周辺事態法」「船舶検査法」などを改正して、やはり海外での武力行使を法律的に認めようとの動きをみせています。
 14年4月「武器輸出三原則」に代わり「防衛装備移転三原則」が閣議決定され、武器輸出へ途が開かれました。海外での武力行使のために安倍首相が重視しているのが「教育」であり、「国家安全保障戦略」や「国家安全保障基本法案」にも「教育」が盛り込まれています。
 自民党は最終的には「武力の行使」を禁止する日本国憲法の改正を目指していますが、簡単に憲法を改正できるようにするために、憲法の改正要件を定めた96条を改正しようとしています。また、憲法改正のためになされる国民投票で教師や公務員に反対させないため、公務員の「地位利用」に罰則をつけようともしています。安倍首相は国民世論では反対が多数となっている「原発」についても再稼働させようとしています。その背後には、「核の潜在的抑止力を維持するため、原発をやめるべきとは思いません」(石破茂氏)のように、「核の潜在的保有能力」を持ちつづけたいという自民党政治家の思惑があります。大幅な盗聴が可能になる「盗聴法」の改正、犯罪の計画を話し合っただけで犯罪とされてしまう共謀罪制定の動きも進んでいます(『東京新聞』2014年5月15日付)。
 このように、安倍自公政権のもとでは海外での武力行使が可能になる政策、軍備の増強を目指す政策が足音を立てずに進んでいます。そして、ほんらいであれば、「権力の監視」「社会の木鐸」であるべきメディアがこうした問題を指摘し、市民に提起すべきですが、一部の良識的なメディアを除き、「権力の番犬」となっている大手メディアもあります。
 ただ、海外での武力行使ができる国になっても本当に良いのでしょうか。国際社会の歴史を振り返ると、第1次世界大戦、第2次世界大戦という、言語に絶する戦争を経験した国際社会では、戦争や武力の行使が原則として違法とされました(国連憲章2条4項)。現在でも国連の人権理事会では、「平和への権利」を国際法典化しようという動きがあります。こうした国際社会の流れに逆行して、海外での武力行使、戦争のできる国になっても本当に良いのでしょうか。近隣諸国の民衆2000万人~3000万人、日本国民310万人もの犠牲者を出したアジア・太平洋戦争のような戦争を2度としないとの決意に基づく「日本国憲法」を空洞化、改正しようとする安倍政権のような政治を認めても本当に良いのでしょうか。
 2014年5月15日、安保法制懇の報告書を受け取った安倍首相は記者会見で、「まさに紛争国から逃げようとしている、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、子どもかもしれない。彼らが乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない」と発言しました。子どもと一緒にいて、赤ん坊を抱いている母親の絵などを見せられて、こうしたことを言われると、「集団的自衛権は必要」と思ってしまうかもしれません。
 ただ、「戦闘地域から日本に避難する日本人を乗せたアメリカ艦艇への攻撃」という事態が実際に起こるのでしょうか? 戦闘地域にいるアメリカ艦艇が日本人を避難させるために戦場を離れて日本にむかうことがありうるでしょうか? 実際に攻撃されたとしても、アメリカ艦艇は自力で撃退できないのでしょうか? 日本人が乗っている艦艇であれば、集団的自衛権の問題ではなく、「個別的自衛権」の問題でないでしょうか?
 「国民主権の父」と言われたフランスの思想家であるJ・J・ルソーは『社会契約論』で、「国民は欺かれることがある」と述べています。集団的自衛権に関しても政府の非現実的・虚偽の説明やそうした説明を垂れ流すだけの一部のメディアに流された状態では、主権者である国民は誤った判断をしてしまう危険性があります。
 では、集団的自衛権に関して、「抽象的・神学的な9条論議」でなく「具体的事例」とはなにか。
 「集団的自衛権」の行使が認められるようになれば、自衛隊員(憲法が改正されれば「国防軍人」)が海外の戦争で人を殺してくるのです。あるいは、自衛隊員が殺され、夫や子ども、孫を戦争で失う家族が出ます。戦場に送りだされた夫や親を心配する家族が増えます。
 そうした事態になっても良いのでしょうか? ベトナム戦争での韓国軍のように、集団的自衛権が認められれば、アメリカの戦争にアメリカ人の代わりに日本人が血を流す事態が生じるかもしれません。それで良いのでしょうか?
 政治の善しあしは、主権者である私たちが政治にどのように関わるかで決まります。また、将来の世代、私たちの子どもや孫に良い日本を残すためにも、私たちはいまこそ適切に政治に向かい合うことが求められています。
 本書を通じて、海外での武力行使、軍備増強を目指す安倍政権の問題を認識していただくことを願ってやみません。
 そして最後になりますが、政治は主権者である私たちがどう関わるかで大きく左右されます。現在、集団的自衛権を認めようとする安倍政権に対し、全国各地で市民の反対運動が活発になりつつあります。そうした運動の代表的なものとして、「戦争をさせない1000人委員会」の活動を紹介します。市民のとりくみを知っていただくことを通じて、主権者としての政治の関わり方も考えてみてください。

著者プロフィール

戦争をさせない1000人委員会  (センソウヲサセナイセンニンイインカイ)  (

戦争への道を突き進む政府の暴走を阻止し、一人ひとりの平和に生きる権利を守りぬくため、雨宮処凜、内橋克人、大江健三郎、大田昌秀、奥平康弘、小山内美江子、落合恵子、鎌田慧、香山リカ、倉本聰、佐高信、瀬戸内寂聴、高橋哲哉、高良鉄美、田中優子、山口二郎を発起人として、今年2月に立ち上がった委員会。

上記内容は本書刊行時のものです。