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佐高信の異才面談
五七五のドラマを語る
- 初版年月日
- 2013年5月
- 書店発売日
- 2013年4月30日
- 登録日
- 2013年4月9日
- 最終更新日
- 2013年5月10日
書評掲載情報
2013-06-02 | 産經新聞 |
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紹介
「俳句界」(文學の森)誌人気対談・第5集。女優・有馬稲子、虚子の孫・稲畑汀子、「NEWS23」の岸井成格、女優・梶芽衣子、元首相・村山富市、演歌歌手・城之内早苗、作家・ねじめ正一ほか、底深い魅力を湛える異才17名との饗宴。
目次
はじめに 佐高信
女優・有馬稲子:女優として生きる
芸人・松元ヒロ:ありのままの笑いを伝えたい!
「ホトトギス」主宰・稲畑汀子:我が祖父・虚子を語る
「スルガ銀行」代表取締役社長兼、CEO・岡野光喜:守らずに、攻めていく
ピアニスト・崔善愛:音楽には思想がある
元朝日新聞主筆・若宮啓文:記者だから出会えた 思い出深い人々
毎日新聞特別編集委員・岸井成格:政治と、国土を見つめて
女優・梶芽衣子:俳優の仕事 経験できない役だからこそ面白い
元内閣総理大臣・村山富市:私心を捨てて打ち込む
演歌歌手・城之内早苗:詩の空白を歌う
東大教授・哲学者・高橋哲哉:福島県人から見た3・11
詩人・作家・ねじめ正一:「男の時代」のおやじたち
講談師・神田香織:平和を語り続ける
歌手・クミコ:歌の力を信じる
染色家・吉岡幸雄:古典こそ技術の宝庫
作家・活動家・雨宮処凛:全開で生きていく
医師・作家・鎌田實:命を伝えるストーリー
前書きなど
はじめに
『俳句界』で続けている「佐高信の甘口でコンニチハ!」という対談をまとめた本も、これで五冊目になる。ユニークな人にお願いしているので、今度は『異才面談』というタイトルにした。もちろん「委細面談」のもじりである。
トップバッターとなった有馬稲子さんは、この対談のことをブログとやらに次のように書いてくれた。
〈こわもての評論家の佐高信さんと対談しました。佐高さんといえば、政治経済の分野の鋭い分析で知られる日本の代表的な論客。その方がどうして私と対談を……。
実は『俳句界』という雑誌に「佐高信の甘口でコンニチハ!」というページを持っていらして、その対談相手にぜひ私をとのご指名なのです。
でも、俳句の話など、どうすれば?
私はあわてて大好きな、去年亡くなられた俳人の川崎展宏さんの句集を取り出して、にわか勉強をしました。
とにかくこの人の俳句にはすばらしい作品が多いのです。
私が好きなのは……
熱燗や討ち入りおりた者どうし
赤い根のところ南無妙菠薐草
大和よりヨモツヒラサカスミレサク
三句目は、戦艦大和から送られた電文を作者が受けたと想像して作ったとされる名句です。
おっかなびっくりの佐高信さんとの初対面でしたが、とても優しくわかりやすいお話をなさる方で、嬉しいことに『浪花の恋の物語』から『人間の條件』の娼婦の役までほめて下さいました。
肝心の俳句の話も、私が川崎展宏さんの熱烈なファンとわかると大いに意気投合、無事対談を終えることができました。『俳句界』の五月号、ご期待下さい〉
五月号は二〇一一年の五月号である。
有馬さんと「にんじんくらぶ」で一緒だった岸惠子さんはエッセイストとしても知られているが、有馬さんの文章もとてもわかりやすく見事である。もちろん、これは私が過褒されているから、お返し的に書いているのではない。
それにしても「こわもて」と受け取られ、「おっかなびっくり」で山の上ホテルに現れる人も少なくなかった。
大学同期のスルガ銀行社長の岡野光喜さんやゼミまで一緒の岸井成格さんは、サタカと親しいというだけで多くの友人を失った、などと言っている。誤解とか先入観は恐ろしいものである。
東日本大震災直後の対談が多いので、福島出身の人や原発に警鐘を鳴らしつづけてきた人に意識して登場してもらっている。たとえば東大教授の高橋哲哉さんであり、講釈師の神田香織さん、あるいは歌手のクミコさんや医師の鎌田實さんである。
高浜虚子の孫の稲畑汀子さんは別格で、基本的には俳句の素人の人に対談をお願いしてきた。
しかし、思いもかけずに、突然、俳句の話になることも少なくなかった。
たとえばシャープなお笑い芸人の松元ヒロさんは、「パントマイムは世界共通語だし、それこそ俳句の世界に似ている」と言って、私をドキッとさせた。それこそ委細は面談を読んでほしいが、染織家の吉岡幸雄さんの「僕らの仕事は毎日が歳時記みたいなもの」という発言にも驚かされた。納得の驚きである。
崔善愛さん、梶芽衣子さん、城之内早苗さん、雨宮処凛さんもそれぞれにチャーミングな女性であり、とっておきの話を披露してくれた。女性が対談相手の時はまったく辛口ではなくなるというのが『俳句界』の読者の定評らしい。もともと「甘口対談」であり、私はそれを否定するつもりはない。なぜ、この人たちにお願いしたかも、それぞれの対談で語っているはずである。
ねじめ正一さんは私の郷里の酒田のことを『青春ぐんぐん書店』(新潮文庫、絶版)に描いている。お父さんが俳人だった。
朝日新聞主筆だった旧知の若宮啓文さんには、彼に、
「何ていう話から入るんですか」
と苦笑させるところから入った。
元首相の村山富市さんの底深い魅力はこの対談からもうかがえるだろう。野中広務や亀井静香といった曲者たちを心服させた人柄は並みのものではない。
村山さんを含めて、改めて出ていただいた方たちに感謝したい。
二〇一三年三月十八日 佐高 信
上記内容は本書刊行時のものです。