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これからどうなる海と大地
海の放射能に立ち向かう
- 初版年月日
- 2011年8月
- 書店発売日
- 2011年7月25日
- 登録日
- 2011年8月12日
- 最終更新日
- 2011年8月12日
紹介
現在私たちに求められているのは、核とともに暮らすことの意味、まさに核文明の恐怖について感じ知ることである。共業の所産として立ち向かってゆかなければならない。
目次
はじめに
第1章 海へ放出された福島第一原発の放射能
1 海のチェルノブイリ
2 海への影響について知っておくべきこと
第2章 放射能がクラゲとやってくる
1 まず、再処理工場とはどんなものか説明しましょう
2 再処理工場は、放射能を空気中や海に捨てるのです
3 放射能は少ないと言っていますが……ゴマカシです
4 再処理工場があるイギリスで暮らした家族の話をしましょう
5 イギリスやノルウェーの海の放射能汚染の話をします
6 再処理工場は、放流管から海へ放射能を捨てるのです
7 これが、青森・岩手・宮城の海における放射能の流れです
8 風評被害が心配です
9 二人の方の新聞への投稿を考えてみましょう
10 「海に放射能を捨てないでください」と言うことが大事です
おわりに
第3章 これからどうなる海と大地
福島県のホッキガイからコバルト60が検出
みんながともに、どう食べ続けていくか
原発現地の人びとの厳しい選択
放射能測定をどのように公表するか
チェルノブイリ事故と輸入食品
原発が海と漁業に及ぼす影響
原発から出る放射能のゴミ捨て場
きちんと対応すれば、風評被害を恐れることはない
原発抜きの地域振興を
調査報告 福島第一原発周辺海洋生物の放射能汚染──放射能汚染調査グループ(福島・東京)
調査結果とそれのもつ意味
測定された数値と住民の生活
放射能汚染に対する漁業協同組合と原発設置者の対応
あとがき
前書きなど
はじめに
海の放射能汚染と食べものとしての魚についてこの三ヶ月いろいろ考えているうちに、原発推進の呪縛から逃れられない水産庁や研究者、国や県の担当者に対する生産者や消費者の立場からの意思表明への助言としては、“心配だったら食べないほうがよい”としか言いようがないことに気づいた。
また、こわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだという寺田寅彦の指摘とラッセル声明中の「われわれの調査の結果明らかになったかぎりでは、これら専門家の見解は、個々の専門家自身の知識の広さだけに左右されているのである。従って、最も多く知る人が最も悲劇的となっている」という見切り方にはさまれて私たち生きることの専門家は立往生してしまう。
ただこれから次々と公表される魚介類の放射能汚染値に立ち向かう際には「原水爆実験」(一九五七年岩波新書)の中でラッセル声明に言及している武谷三男のいう許容量は「一警告単位」と呼んで再検討すべしという提唱を肝に銘じておくことが必要である。批判されてきた許容量の代りに基準値が平然として使われている現状への対応でもある。
本書はこれまで生産者(漁民)や消費者と共に原発をつくらせないことをやってきた中で発言し、書いたものをまとめたものであるがそのような作業はこれからも続けてゆく。
昨年は川内原発一、二号機の運転により温廃水による漁業被害に苦しむ羽島漁協と現在建設中の原発が運転されたらマグロが獲れなくなることを心配する大間漁協に通い調査を行なった。そこからまとまってきた「温廃水による漁業被害」を夏から秋にかけて、「まぐろと原発」を来年上梓する。
また、本書二三ページ冒頭の二行「福島第一原発事故による海洋生態系や水産生物への影響を調べる場合には、海流と水産生物の単位群と回遊移動の関係を把握してから調査・検討しなければならない」という考え方をもとに、いつまでも魚を獲り続け食べ続けるための海図と羅針盤のようなものをつくり上げたい。
二〇一一年六月一六日 いすみ市資源維持研究所にて 水口憲哉
版元から一言
品切れになった『放射能がクラゲとやってくる』を第2章で収録しています。
上記内容は本書刊行時のものです。