おいしく育てる菜園づくりコツの科学
西村 和雄
発行:七つ森書館
この版元の本一覧
四六判 320ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8228-0623-1(4-8228-0623-5) C2061
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年07月
書店発売日:2006年07月01日
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紹介

有機農業の篤農家に学ぶ“うまくいくコツ”を集大成! 35年の経験を積んだ農学博士が、85種の野菜の育て方と料理のポイントをまとめる。『有機農業コツの科学』の西村先生、待望の新刊!

目次

前書きのひとりごと
本書の使い方

第1章 菜園をはじめる前に
1 農具の選び方
  どんな農具を使うか/農具の手入れ
2 畝の作り方
  畝を立てる意味/農地が平坦/水はけが悪い
  畝の立て方/季節と畝の方向
  コンクリートを使用して/瓦が!
  畝換えは必要か
3 耕起と不耕起
  なぜ耕すのか/耕さないとどうなるか
  不耕紀ワザの数々
4 土つくりについて
  土の匂い/多様性とは/有機物の意味
  生きている土/どうすればいい?

第2章 種の播き方から収穫まで
1 種の播き方と苗の選別
  種を播くテクニック/種子に貯蔵される養分の意味
  発芽時の大事なポイント/種を播くときの注意点
  間引きについて/いい苗の見分け方
  ポット苗を育てるコツ/育苗用の培土について
  ポット苗の育て方
2 苗の植え方と育て方
  植え方/支柱の立て方・選び方
  作物の結わえ方/収穫方法は?
  水やりはどうする?/栄養状態の判断/葉の形
3 肥料のやり方
  生ゴミ肥料の作り方
  気をつけること——その1
  気をつけること——その2
  ボカシ肥の作り方/発酵温度について
  元肥/追肥/葉色は顔色とおなじ
4 草と虫の対策
(1) 草の対策
   草はどうすればいい/はびこる野草をどうするか
   悪い種ほどよく眠る/草で草を抑えること
   草を利用する/畑の奮闘記/草のまとめ
(2) 虫の対策
   健康な野菜には虫がつかない/ヨトウムシ
   アブラムシ・ハダニ/ネキリムシ/その他の虫
(3) モグラと地ネズミの対策
   モグラ・地ネズミについて/駆除の方法は
5 収穫の仕方
  収穫するところが空中/収穫するところが地際
  収穫するところが土の中
6 後かたづけ
  収穫後の残滓/後始末の仕方
  石灰について

第3章 作物の育て方85種
  アサツキ アズキ アスパラガス イチゴ
  インゲン エシャロット エンドウ オクラ
  カウピー カブ カボチャ キクイモ
  キャベツ キュウリ ゴボウ ゴマ
  コマツナとサントウサイ ササゲ
  雑穀 アマランサス アワ キビ シコクビエ
     ソバ ハトムギ ヒエ ホウキグサ
     モロコシ ライムギ
  サツマイモ サトイモ シカクマメ シソ
  ジャガイモ シュンギク ショウガ 食用菊
  スイカ ズッキーニ セロリ ソラマメ
  ダイコン ダイズ タマネギ 中国野菜
  チンゲンサイ ツケナ トウガラシ トウガン
  トウモロコシ トマト ナス 菜っ葉類
  ニガウリ ニラ ニンジン ニンニク ネギ
  ハーブ類 カモミール キャラウェイ クミン
       コリアンダー バジル ミント ローズマリー
  ハクサイ パセリ 二十日ダイコン ピーマン
  ブロッコリー ホウレンソウ マクワウリ ミツバ
  モロヘイヤ ヤーコン ヤブツルアズキ
  ヤマイモ・ナガイモ・ツクネ・イチョウイモなど
  ユリネ ラッカセイ ラッキョ レタス ワケギ

第4章 野菜料理のレシピ集
  カボチャのサラダ ベンガルカレー
  キュウリの漬物 さば水煮のサラダ
  ミョウガご飯 ラッキョの直接漬け
  小芋のコロッケ 小芋のネギ味噌和え
  そうめんパスタ 大葉ご飯
  鉄火味噌 肉じゃが
  はりはり水菜と味つけ豚唐揚げのサラダ
  ニガウリの酢の物 シソの実醤油漬け

第5章 ひとりごと
  農地は取得したが……
  国内農業の切捨て
  超低自給率
  さらなるごまかし
  ゴマメの菜園
  本当の野菜
  栄養失調の野菜?
  健康な野菜を食べるには
  自給を高めよう
  輸入農産物がストップしたら

緑肥作物として利用できる植物
作物の栽培時期一覧

前書きなど

前書きのひとりごと

 承前
「西村さんは農家の生まれですか?」
「いえいえ、私は都会育ちですよ。まるっきりの。生まれも育ちも京都市のど真ん中です」
「エエッ! ほんとうですか。わからないなあ」
 いろいろな人と出会う機会が増えるにつれて、こんな問答が、よく出てくるようになりました。そこで考えたのです。ここらでひとつ、私の有機農業遍歴というか、さまよい続けてきた三十数年を振り返ってみて、そこで出会ったさまざまな篤農家の人たちに教えてもらった知恵や技術を書きだしてみよう。
 そうすればこれだけの知識や技術を、けっして私だけで工夫できたわけはないのだと納得していただける、そして、これから小さな菜園をやってみたいが、どうすればいいかわからない? という人たちの背中をポンと押して、一歩踏みだすきっかけにはならないか。そう思ったのです。
 作物を育てるというのは、簡単なようでけっこうむつかしいものです。いや、ややこしいと、言ったほうが正確かもしれません。というのは私自身が菜園をやってみて、冷や汗をかくこともしばしばあるからです。そういう私の失敗談ももちろん紹介してみましょう。それが何より、実際に役立つはずですから。

 一九九八年に京都市内から居を京都中部の山間部に移しました。JR山陰線の胡麻駅から徒歩で二〇分。町道に面した小さな谷の行き当たりは自然真っただ中の一軒家です。駅から車で帰る夜道には、毎晩のように鹿が跳梁し、ときには車にぶつかるような勢いですぐ前を横断してゆきます。狸や狐が昼間でも時折姿を見せ、目が会ったときには、「ここは俺たちの棲むところ。お前たち新参者は遠慮しろよな」と言いたげで、すぐにフンと知らんふりをして、走り去ります。雉は玄関脇の小さな藪で卵を抱き、孵化した雛にとっては私の畑が格好の遊び場所。玄関に近い栗の木は、毎年大きな実を落としますが、猪が戸口で、大好物の栗を食べながらブヒーッブヒーッと鳴き声をあげると、わが家の愛犬の豆柴は尻尾を下げて家の中で震えるのです。春ともなれば、蕗の薹にはじまる山菜が、次々と食卓に出て、田舎暮らしを満喫できるのですが、そんないいことずくめではありません。それはともあれ、心配事が増えるのも田舎でした。その心配事は、日本の食糧事情の行く末です。ですが、これについては、別の機会にグチることにして、話を進めます。
 本書の前に『有機農業コツの科学』という本を出版しました。それは、有機農業にまつわる技術的な問題をとりあげ、ともすれば「江戸時代に戻る気なのか」といわれることがあるように、的はずれな反論をかわして、きちんとした有機農業の技術論を書いてみよう、それもわかりやすく、と思い立ったのがきっかけでした。そういう意味ではまとまりのある本になったと思います。しかし、「よくわからない」とか、「むつかしい」といった声をいただいたこともあって、もう少し菜園向きのやさしい内容にならないだろうかと思っていたのです。
 本書は、有機農業をなさっている篤農家で、それぞれの作物については右に出る者もないと言われるほどのプロ——それも農薬や化学肥料を使ってはいなくて、虫も病気も引き起こさない実践家の知恵や技術と粋を、わかりやすく解説したものだといえます。
 そこで、本書は技術論にまつわる植物の栄養や、土そのものの育て方など、込み入った話をできるだけ省いた入門書にしたつもりです。
 こうした意味では、本書を読まれてから、前著をお読みになれば、専門的な内容も含めて、有機農業に関してはいっそうの知識・技術と理解が深まるはずです。本書を読まれて、さらに興味深く有機農業について知りたいと思われた方は、手前ミソですが、セットで読んでいただくことをお勧めします。
 さて元に戻りますが、なによりも本書を執筆しようとした動機は、田舎暮らしで私が満喫している生活の一端を担っている菜園——それを小規模でもよいから、小さな菜園を出発点として、安心できる野菜を納得づくで作る経験を、いろんな方に味わって欲しかったからです。それが契機となって、「農」に関心を持つに至って欲しかったからにほかなりません。

 ほんとうに美味しい野菜は、どさっと肥料をやってできるものではありません。むしろ「こんなに小さくていいのかな」と疑問を持つほど小ぶりでも虫がつかず、健康に育った野菜は栄養をたっぷりと含み、美味しさもひとしおです。そして何より葉の色が鮮やかな新緑を表現しているはずです。市販の野菜から、まともに育った、本物の美味しい野菜を選ぶコツについては、誰にでも見分けがつくポイントを、いずれまとめて写真集にでもしたいと思っていますが、その前に、まずは自分で作ってみて、味に納得がいくかどうか、野菜の育ち方を見るのもいいだろうと思い、手軽に野菜作りができるようなポイントを書きました。北海道から沖縄にいたる長い旅の中で、私が出会った、篤農家やプロといわれる方に教えていただいたことが、本書に盛り込まれています。
 おもしろいことに作物の育ちは、けっして肥料のやり方や、管理の仕方だけで決まるものではありません。むしろ、それ以外の大きな要因が、野菜の生育をひそかに支配しているように思えてならないのです。その要因とは人です。
「作物は人を見て育つ」
 そう思えるようになりました。三十数年にわたる、有機農業や自然農法の遍歴をかさね、自分でも作ってみて、やっとこの言葉が言えるようになりました。そういう意味では、作物を手にとって見ると、その作物を作られたご本人の人柄が手に伝わってくるのです。物言わぬ作物の姿形が、どんな言葉よりも雄弁に、育ちを語っているからです。なぜなら、その作物は生きていて、なによりも命そのものの表現だからです。
 さあ、生き生きとした命を作ってみましょう。それこそが私たちの食べるべき、本当の食べ物であるはずの作物を。そうして、人を見て育つ作物の姿がどのようになるか、挑戦してみませんか。

  二〇〇六年五月  西村和雄

著者プロフィール

西村 和雄(ニシムラ カズオ)

1945年、京都市生まれ。京都大学農学部修士課程修了。同大学農学部助手などを経て、現在、京都大学フィールド科学教育研究センター講師。選考は、植物栄養学、植物地球化学。京都大学農学博士。NPO法人京の農ネットワーク21理事長、(財)自然農法国際研究開発センター理事、安全農産供給センター顧問、京滋有機農業研究会幹事。金を蓄積する植物で金鉱脈を探索(NHKテレビ放映)。著書『有機農業コツの科学』(七つ森書館)他。

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