私のハンメは海を渡ってやってきた旅する名前
車 育子
発行:太郎次郎社エディタス
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四六判 192ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-8118-0724-9 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年08月
書店発売日:2007年08月02日
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紹介

雨宮処凛さん(作家)評

 名前が変わるとは、いったいどういうことだろう。人から様々な名前で呼ばれるというのは、どんな気持ちだろう。逆にそのことは、自分自身の「核」を強く意識させることになるのではないだろうか。
 彼女の名前は何度も変わる。本名、本名だけど読みが「日本式」、通名。しかしだからこそ、彼女は揺るぎない「自分」と対峙しているように見えるのだ。けっして肩ひじを張らない軽やかさで。
「在日」として生きる一人の女性の幼い頃の記憶、家族、仕事、恋、結婚、子育て、そして自分との、歴史との真摯な対話。日常から綴られる、私たちのすぐ傍にある物語。

目次

■小石川の家
ハンメ  食事の作法  ファンタジア  アボジのウリマル  ねみちゃん  帰還船
二人のハラボジ  風邪  チュサ  ドブロク  ハンメの買い物

■坂の上の学校
理科室と図書室  私の夢  セツラー  教会  アッポ  私の叔母  隣の姉さん
満さん  高校のバスケット部  国籍条項

■セブンティーズ
私の就職事情  旅券  再入国許可書  母語  成人式  処女  結婚狂想曲
カワジエンピツ君  真面目君  披露宴

■あらたな家族
年賀状  誕生日  過去帳  生協活動  子育て百科  再就職  読書

■蘇生した名
指紋押捺拒否  私の朝鮮語  梶村秀樹  国籍  投票所入場券  叔父の葬式  韓国旅行

■ハンメちゃん
夫の地域デビュー  生涯学習  息子の卒業式  パラム(風)の会
色・いろいろ水彩画  スジとニンニク  キムチ  ハンメちゃん  ミックス
高校野球の正しい応援の仕方  ハンメちゃん家とユーくん家  イルム(名前)を旅して

前書きなど

 家族じゅうから祝福されて誕生した無邪気な女の子は、学童期になると、悩みを抱えるようになる。その悩みは、まわりの大人に聞くことがはばかられた。どう切りだして話をすればいいのか解らず成長する。
 社会に出て、およそ両親には経験できなかったであろう世界のなかで彷徨する。ひとなみに恋愛もしたが、別離が前提の恋物語だった。
 私のなりたかった職業は選べなかった。運よく正社員にはなったが、キャリアを積み上げられる仕事は、高卒の女性には容易になかった。先が見えない苛立ちを抱え、衝動的に結婚をした。結婚したらなんとかなると、自身が蓋をした苦悩から安易に逃げようとした。
 しかし、逃げられなかった。
 苦悩の正体を手探りでさぐりあててからは、結婚相手との格闘が始まった。
 まず、いちばん身近な他人である夫に説明できないようでは、苦悩からの解放は望めないと思ったからだ。
 それと同時期に、同じように苦悶している仲間たちを知るようになる。解決はしないが、心は軽くなった。ひとり悶々と悩みに対峙していても、堂々巡りのくり返し。共有する「問題」への共通理解は、思考を柔軟にしてくれる。
 二十四歳で結婚し、二十五歳で第一子、二十七歳で第二子、三十歳で第三子を得て、現在五十三歳。数値的には標準的な女の半生である。けれども、どこかが違っていた。
 そんな想いを文章にしてみた。
 ごく個人的な日々の生活からうかがえる、世間との違和感を表現してみたいとの思いは、日本人の夫との暮らしのなかで深まっていった。
 在日一世がつぎつぎと他界し、通名のまま墓におさまっていくなかで、その衝動をこらえることはできなかった。

著者プロフィール

車 育子(チャ ユッチャ)

4歳になる孫から「ハンメちゃん」と呼ばれ、悦んでいる。
ハンメとは、韓国の南の地方の方言。
いわゆる「標準語」では、ハルモニ(祖母)。
私が幼い頃、祖母をハンメと呼んでいた。
懐かしく、あたたかい響き。
手放すことはできなかった。
今後の老年期を謳歌すべく奮闘中の「道端のたんぽぽおばさん」。
たんぽぽの種のように、私の想い、自由にどこまでも飛んでいけ。
1953年、東京都生まれ。

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