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宝塚・やおい、愛の読み替え 東 園子(著) - 新曜社
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宝塚・やおい、愛の読み替え (タカラヅカ・ヤオイ、アイノヨミカエ) 女性とポピュラーカルチャーの社会学 (ジョセイトポピュラーカルチャーノシャカイガク)

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発行:新曜社
四六判
344ページ
上製
定価 3,400円+税
ISBN
978-4-7885-1416-4   COPY
ISBN 13
9784788514164   COPY
ISBN 10h
4-7885-1416-8   COPY
ISBN 10
4788514168   COPY
出版者記号
7885   COPY
Cコード
C3036  
3:専門 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2015年4月
書店発売日
登録日
2015年2月3日
最終更新日
2016年4月5日
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書評掲載情報

2015-06-28 朝日新聞
評者: 武田徹(評論家、恵泉女学園大学教授)
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紹介

◆宝塚の夢想・やおいの妄想
 今年は宝塚歌劇の創立百周年、華やかなセレモニーが繰り広げられました。一方、「やおい」(ボーイズラブ、男同士の恋愛を描く漫画・小説群)も40年近い歴史があります。なぜ女性たちは、宝塚・「やおい」に熱狂するのでしょうか? 宝塚ファンは、タカラジェンヌの演じる物語から何を読み取り、やおいの「腐女子」たちは、なぜ男同士の友情を恋愛に読み替えるのでしょうか? 日本独自の女性向けポピュラーカルチャーを初めて比較考察して、この謎を解いていくと、女性たちの親密性に対する強い憧れと一体感を見出すことができます。彼女たちの「愛の読み替え」という行為によって、女同士の絆への夢が脈々と受け継がれているのです。著者は大阪大学研究員、気鋭の文化社会学者

目次

宝塚・やおい、あるいは愛の読み替え 目次
まえがき

序 章 宝塚・やおいへの視点―女性と親密性
  1 宝塚・やおいと恋愛
  2 親密性のコード
  3 宝塚・やおいにおける恋愛のコード
  4 本書の方法と構成

第1章 親密性のコードの編成とホモソーシャリティ
  1 ホモソーシャル概念が示すもの
  2 恋愛のコードの中心化
  3 友愛のコードとジェンダー
  4 強制的異性愛と女性のホモソーシャリティ
  5 日本社会における親密性のコードの編成

第2章 タカラジェンヌの四層構造
  1 宝塚の概要
  2 環境分析的な舞台の見方
  3 タカラジェンヌの四層構造
  4 宝塚の〈物語消費〉

第3章 宝塚から読み取られる親密性
  1 役名の物語
  2 芸名の物語
  3 愛称の物語
  4 重ねあわされる絆
  5 宝塚のリアリティ
  6 宝塚の相関図消費と親密性のコード
  7 宝塚が見せる夢

第4章 やおいという解釈ゲーム
  1 やおいの概要
  2 ファン活動としてのやおい
  3 相関図消費としてのやおい
  4 解釈ゲームとしてのやおい
  5 恋愛パラレルとしてのやおい
  6 萌えトークとしてのやおい
  7 やおいにおける相関図消費

第5章 やおいにおける恋愛の意味
  1 恋愛のコードがもつ解釈上の機能―汎用性の高いルール
  2 恋愛のコードがもつ表現上の機能―ホモソーシャリティの強化
  3 恋愛のコードがもつ伝達上の機能―女性の共同体の創出
  4 女性のホモソーシャルな共同体としてのやおいコミュニティ
  5 やおいにおけるジェンダー規範の利用

第6章 宝塚・やおいにおけるホモソーシャリティと女性
  1 宝塚・やおいの相関図消費の特徴
  2 宝塚・やおいが示唆する女同士の絆に対する観念
  3 宝塚・やおいの相関図消費の時代背景
  4 女性のホモソーシャルな欲望と不従順な想像/創造力

あとがき
参考文献・資料
人名索引・事項索引
装画 えすとえむ
装幀 鈴木敬子(pagnigh magnigh)
写真撮影 東 園子

前書きなど

宝塚・やおい、あるいは愛の読み替え まえがき
 ある日曜の午前一一時、兵庫県宝塚市の武庫川のほとりに建つ白壁の大きな劇場。

 開演アナウンスが流れ、客席の明かりが落ちると、場内にひしめいていたざわめきがすっと収まる。音楽とともに緞帳が上がり、真っ暗な劇場に舞台から光があふれる。独特の舞台化粧にきらびやかな衣装を身にまとった出演者たちが、大掛かりな舞台装置に居並ぶ。ここは宝塚歌劇団の本拠地の宝塚大劇場である。二〇一四年に百周年を迎えた宝塚歌劇は、女性だけで男性の役も女性の役も演じ、歌と踊りを盛り込みながら男女のラブロマンスを描いた舞台で知られる。その観客席を見ると、かなりの割合を女性が占めている。彼女たちの年齢はさまざまながら、舞台に注ぐ真剣なまなざしは変わらない。客席に座るファンたちは、華やかなステージの上にいったい何を見ているのだろうか。

 同じ日の同じ時刻、大阪府大阪市の港湾地区にある国際展示場。

 イベントの開始が告げられると、その瞬間を待ちわびていた大勢の人たちが会場内に押し寄せる。朝から何時間も長蛇の列に並んでいた来場者は、大きめの鞄を肩にかけたりキャリーケースを引っ張ったりしている。一〇~五〇代程度の女性が中心で、男性の姿はごくわずかにしか見られない。だだっ広い場内には大量の長机が何列も整然と並べられ、机の上には薄い冊子が積まれている。ここで開催されているのは「同人誌即売会」と呼ばれるもので、自作の漫画や小説を製本した同人誌等を来場者に対して頒布できる、同人誌専門のフリーマーケットのようなイベントだ。アニメや漫画やコンピューターゲームなどを好む「オタク」と呼ばれる人たちの中には、商業的に作られた作品を享受するだけでなく、自らも漫画を描いたり小説を著す人が多くおり、そのような作品を読むことはオタクたちの楽しみの一つである。オタクというといまだに男性のイメージが強いが、実際には女性も多く、ジェンダーによって好まれる作品の傾向に違いがある。この日の同人誌即売会は女性がおもな対象で、頒布されている同人誌の内容は、女性向けに男同士の恋愛的な関係を描いた、「やおい」や「ボーイズラブ(BL)」と呼ばれる漫画や小説が中心である。会場に入ってきた女性たちは、その同人誌を次から次へと買っていく。代金を渡しながら相手と親しげに言葉を交わしたり、会場の片隅で互いの戦利品を見せあっておしゃべりする女性の姿も見られる。彼女たちは何に対してそんなに笑顔を見せているのだろうか。

 ここで描写した二つの光景は、表面的にはまるで異なっているように見える。だが、多くの女性たちが集い、恋愛物語を楽しんでいるところが共通している。宝塚の劇場や同人誌即売会の会場から出てくる女性たちは、同行者と高揚した面持ちで話をしたり、一人で満足感をかみしめるように歩いていたりと、幸せそうにしていることが多い。彼女たちは劇場やイベント会場でいったい何を楽しんできたのだろうか。何が彼女たちを満ち足りた表情にさせているのだろうか。そのことは、この社会の中で彼女たちがおかれている状況とどのように関わっているのだろうか。この本はそれについて考えるものである。

上記内容は本書刊行時のものです。