あるドイツ人少女の回想記ヒトラーに抱きあげられて
イルムガルド・A・ハント, 菅野 圭子:訳
発行:松柏社
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四六判 380ページ 並製
定価:1,900円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7754-0121-7 C0098
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年03月
書店発売日:2007年03月22日
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紹介

本書はナチスの時代に生まれ、ヒトラーの隠れ家のあったアルプスのふもとで育ったドイツの少女の回想記です。
 著者イルムガルト・A・ハントは1934年にバイエルンの美しい村ベルヒテスガーデンに生まれました。その一年前にすでにヒトラーは首相となり、圧倒的な権力を握っていました。第一次世界大戦後、国土が縮小され、膨大な賠償金を課された当時のドイツは、物資は不足し、失業者は巷にあふれるという悲惨な状況におかれていました。インフレはすさまじく、ドイツ経済は混乱のきわみにありました。人々の政治に対する不信も高まる一方で、力強い指導者が望まれていたのかもしれません。彼女の両親を含め、その土地の多くの人がヒトラーを支持し、ドイツの窮状を救ってくれると期待したのです。ヒトラーが私邸と山荘本部を構えたことで、その土地の人々は総統に選ばれたという誇りすらもっていました。
こうした土地で育った著者が、子供の目から見た当時のドイツ(バイエルン)の普通の人々の暮らしを、美しい自然を背景にして丁寧に描いたのがこの本です。
 少女時代の最大の出来事は、ブロンドで典型的なアーリア人の美しい少女だった著者が偶然ヒトラーの膝に抱き上げられたことでしょう。この「事件」に両親は歓喜し、祖父は苦々しくその場を去ります。大好きな両親と祖父の間で、著者の心は揺れ続けることになります。
戦争が始まるとすぐに彼女の父は召集され、まもなくフランスで戦死します。子供二人を抱えて未亡人となった母の苦労は大変なものでした。終戦間際や戦後の食糧難、買い出しなど、戦争を経験した方なら、日本でも同じだったと共感を覚えるところです。
 敗戦が決まると人々の態度はがらりと変わりました。残されたナチス高官の建物を略奪する人々。あわててカトリックに改宗するナチ党員。多くの大人が過去のことを無視しようとしました。
しかしなぜ庶民はヒトラーを支持したのでしょうか? この本はその問いに直接答えるものではありません。ただ、著者はそのことを考える契機にはなるはずだと考えました。ナチスやヒトラーに関しては多くのすぐれた研究書があり、ホロコーストについても様々な検証が行われ、ナチスの負の遺産を抱えるドイツでは徹底して過去の清算をしてきましたが、普通のドイツ人による生の声はあまりに少なかったのです。
 第二次世界大戦終結六十年となった節目の年に、映画「ヒトラー〜最後の十二日間」は日本でも大きな反響を呼びました。映画はヒトラーの若き個人秘書、トラウデル・ユンゲが著した「私はヒトラーの秘書だった」をもとにしていますが、ヒトラーを人間としてとらえ、その素顔にせまることが戦後六十年たってようやくドイツ国内でも許されるようになったということでしょうか。ユンゲ自身、自分の回想記を世に出すのに五十年以上の年月がかかっています。このことは過去をタブー視することなく見つめることができるようになってきたとはいえ、ドイツの普通の人々が声を上げるのがいかに大変だったかを示しています。
 当時のごく普通の人々はどのようにナチスドイツとかかわり、戦後どのようにしてその過去と折り合いをつけてきたのでしょうか。著者ハントは、ほとんどの大人が忘れようとしたあの時代の耐え難い現実を直視しようと決めたのです。率直で素直に書かれたこの本はナチ時代のドイツを生きた少女の貴重な回想記となっています。

目次

序文:子供時代の回想記を書くにあたって

第1部:1906—1934
ペ−ルマン家
1 不満の原因
2 未来を求めて

第2部:1934—1939
ヒトラーの信奉者
3 暮らしの中のしきたり
4 「ハイル ヒトラー」
5 不吉な底流
6 ヒトラーとの出会い
7 暗雲立ちこめる

第3部:1939—1945
戦争と陥落
8 初期の犠牲
9 学校を憎む
10 戦争中の友情が教えたもの
11 ゼルプでの暮し
12 苦難と分裂
13 戦禍、ベルヒテスガーデンにまで迫る
14 ついに終結

第4部:1945—1948
にがい正義、いや正義はなされるのか?
15 星条旗の下での復興
16 過去の呪い
17 暗闇からの脱出

結び
謝辞
訳者あとがき

著者プロフィール

イルムガルド・A・ハント(ハント,I.(イルムガルド)A)

1934年、ドイツ、ベルヒテスガーデンに生まれる。1958年、アメリカ合衆国に渡る。長年自然保護団体の役員を務め、非営利団体の顧問としても活躍。引退後、この回想記を著した。コロンビア大学で学士号、ハーバード大学で行政学修士号を取得。二人の子供、二人の孫がいる。ワシントンD.C.在住。

菅野 圭子(カンノ ケイコ)

1953年、北海道生まれ。東北大学教育学部心理学科卒業。出版社勤務を経て実務翻訳の仕事に携わる。訳書に「イエスの弟」(共訳、松柏社)。仙台市在住。

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