米軍再編と前線基地・日本
木村 朗:編著, 石原昌家, 舟越耿一, 荒川 譲, 田村順玄, 湯浅一郎, 金子豊貴男, 成澤宗男, 高良鉄美
発行:凱風社
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四六判変型 208ページ 並製
定価:1,400円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7736-3106-7 C0031
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年05月
書店発売日:2007年05月25日
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紹介

憲法改悪をもくろむ国民投票手続き法の立案、防衛庁の「省」昇格、自衛隊を事実上「軍隊」として扱う有事体制の確立、地域住民を「戦時体制」に組み込む現代版国家総動員法「国民保護法」「機密保護法」の強化・策定——これらは、米・英・豪・日一体となった「新しい帝国秩序」の形成を目ざす米国の世界戦略を抜きにしては理解できない。米軍再編とは一体何なのか——その本質と実態を、在日米軍基地や自衛隊基地の存在に苦しむ地域住民の目線で報告・批判・検証。

目次

まえがき——木村 朗

【1】地域から問う米軍再編の本質——加速する日本の最前線基地化〔木村 朗〕

●冷戦後の新世界秩序構想と軍事同盟の生き残り戦略——米軍再編の背景(一) ●冷戦終了と日本の安全保障政策の転換——米軍再編の背景(二) 1●米軍の世界的再編と日米安保体制の変質——加速化する日米軍事一体化と変貌する自衛隊 ●日本の軍事社会化に歯止めを!——「平和のためのガイドライン」の構築に向けて

【2—沖縄県】米軍再編下の基地被害状況——危急存亡の秋に立つ沖縄、問われる住民の選択〔石原昌家〕

●「茹でガエル」状態にある日本国民 ●『琉球新報』の見出しに見る、米軍再編下の基地による重圧 ●〝殺人的爆音地獄〟の嘉手納町屋良地区 ●占領軍的米軍を排除できない沖縄の史的状況 ●沖縄住民は覚醒できるか

【3—長崎県】佐世保から見える「戦争をする態勢づくり」——表裏一体で進む「米軍再編」と地方自治体の「国民保護計画」〔舟越耿一〕

●米原子力空母「ロナルド・レーガン」入港に海上から抗議 ●「ロナルド・レーガン」佐世保入港の背景 ●「被爆地も例外とせず」vs.「被爆地であるが故に」 ●佐世保市国民保護計画——着上陸侵攻を想定した図上訓練 ●米軍再編と佐世保基地 ●米軍再編の真実——海上自衛隊佐世保地方隊の実動演習 ●戦争をする態勢づくり——米軍再編と国民保護計画

【4—鹿児島県】鹿屋に米軍空中給油機はいらない——自治体と地域住民が一体となって反対運動〔荒川 譲〕

●ある日の鹿屋運動公園 ●鹿屋市と海自航空基地 ●鹿屋基地への米軍空中給油機の移駐計画 ●関係自治体の動き(二〇〇五年五月〜二〇〇六年五月) ●周辺地域住民と県民の動き(二〇〇五年一〇月〜二〇〇六年三月) ●日米軍事同盟一体化への洞察が重要
【5—山口県】「岩国基地沖合移設事業」にゆれる岩国市民——「愛宕山地域開発事業」と「厚木基地艦載機移駐」問題〔田村順玄〕

●本当の顔は、江戸時代創建の錦帯橋 ●市民の基地感情と、実現した住民投票 ●「ロードマップ」の中身 ●岩国の戦後六一年間 ●岩国基地沖合移設事業の本質 93  ●愛宕山地域開発事業 ●「再編反対」を訴える岩国市長への県・国のいじめ政策 ●「密約」の存在と本格的な事業開始 ●9・11事件と岩国基地 ●CH53D大型ヘリコプターの配備と沖国大の墜落事故 ●「米軍再編」撤回まで、岩国市民は絶対に負けない

【6—広島県/山口県】米軍再編下のヒロシマの基地群——新たな派兵の拠点となりつつある呉と岩国〔湯浅一郎〕

●被爆県にひしめく自衛隊と米軍 ●海外派遣の拠点としての海上自衛隊基地・呉 ●広島から見た岩国基地の再編・強化

【7—神奈川県】進む基地強化に批判の声を高める市民と行政——キャンプ座間・厚木基地・相模総合補給廠〔金子豊貴男〕

●日米両軍一体となった、極東アジアの戦域司令部をめざすキャンプ座間 ●市民と自治体が協力して行なっている基地反対運動 ●相模総合補給廠の一部返還と強化策 ●厚木基地の騒音被害と岩国への空母艦載機移駐問題

【8—神奈川県】恐るべき侵略出撃拠点の実態——横須賀基地の原子力空母配備を中心に〔成澤宗男〕

●太平洋の要石・横須賀基地と米第七艦隊 ●横須賀基地が象徴する安保の虚構性と犯罪性

【9—東京都】戦略的中継基地から日米の軍事中枢へ——横田基地「共同統合運用調整所」が意味するもの〔成澤宗男〕

●米軍の戦略的中継基地 ●「共同統合運用調整所」とは何か ●「ケニー司令部ジャパン」とは何か ●先制攻撃の一翼を担う危険性をはらむMD

【10—沖縄県】憲法原理と九条のシステム——「基本的人権」「国民主権」「平和主義」の敵、米軍再編〔高良鉄美〕

●問題の所在 ●日本人の戦争体験に基づく憲法九条の理念 ●帝国議会の平和理念への向き合い方 ●憲法構造と憲法九条 ●九条システム ●平和的生存権を脅かす基地の存在


あとがき——木村 朗

【付録】 在日米軍再編の最終報告文

前書きなど

まえがき

 防衛庁の「省」昇格と自衛隊の海外活動を「本来任務」に格上げする関連四法が二〇〇六年一二月一五日に成立し、「防衛省」が今年(二〇〇七年)一月九日に誕生した。その直後の一二日に安倍晋三首相がNATO理事会で演説し、自衛隊の海外派兵を積極的に進める意向やNATOとの連携を強化する方針を示した。また、三月に来日した豪州のハワード首相との間でも安全保障面での協力合意に達した。これらの一連の出来事は、世界の平和・安全保障を米国が主導し、日本・欧州・豪州等が補完する形で取り仕切る体制がすでに出来上がりつつあることを意味している。9・11事件以後の米国は、グローバリゼーションで拡大した自国の国益確保(資源と市場の力による支配)を至上命題として、「新しい帝国秩序」の形成を目指す姿勢(「対テロ戦争」「予防戦争(先制攻撃)」戦略の採用)を見せている。現在急速に進められつつある世界的規模での米軍再編は、こうした米国の新しい世界戦略との関連で位置づける必要がある。

 日本では、「米軍再編」を「基地の負担軽減と抑止力維持の均衡」という矮小化された構図でとらえ、単なる在日米軍基地の再配置計画であるかのような報道が一般に見受けられる。しかし、そうした見方は、政府とマスコミが一体となった意図的な情報操作によるごまかしであり、事態の本質を見誤らせるものである。憲法改悪のための国民投票手続き法案と政府の意向に「従う程度」によって交付金を与える米軍再編特措法案の今国会での成立が強権的に進められているように、米軍再編と憲法改悪はまさに連動しており、その背後には米国の強い意思が働いている。その共通の狙いが、海外での日米共同の軍事作戦を可能にすること、すなわち日本社会の全面的改造による「戦時体制作り」にあることは明らかだ。「軍隊」ではない自衛隊を事実上「軍隊」として扱い、現在の政府解釈でもできないはずの「集団的自衛権の行使」や「海外派兵」をなし崩し的に行う環境=有事体制が出来上がりつつある。

 本書では、加速化する米軍再編の世界的背景とその本質的狙いとは一体何なのか、その中で日本は何を選択してどのような役割を果たそうとしているのか、を明らかにしたいと考えている。また、過剰な基地負担と経済的依存に苦しむ沖縄をはじめ、在日米軍基地・自衛隊基地周辺の住民生活や自然環境への影響の実態はどうなっているのか、日本政府が進める機密保護法制の強化や国民保護計画策定とその訓練実施によって日本社会がいかに変わりつつあるのか——といった米軍再編に伴う様々な問題を、あくまでも地域住民や普通の市民の目線でとらえて問題解決の糸口を見いだすことを大きな課題としている。

 本書は、米軍再編の背景とその意味を押さえた上で、沖縄の基地被害状況を起点に、佐世保から見える「戦争をする体制作り」、鹿屋での米軍空中給油機受け入れ反対闘争、「岩国基地沖合移設事業」に揺れる岩国、「ヒロシマ」の基地群(呉と岩国)、神奈川(キャンプ座間・厚木基地・相模原補給廠)で進む基地強化と立ち上がる市民、恐るべき侵略出撃拠点(横須賀基地)の実態、戦略的中継基地から日米の軍事中枢へ(横田基地)、と全国各地の基地をめぐる状況を市民の視点で分析し、最後に再び沖縄から平和憲法の神髄を米軍再編との関係で問い直す構成となっている。米軍と自衛隊の一体化や(日本)本土の沖縄化が「日米安保のグローバル化」の中で急速に進むと同時に、「前線基地」日本の実態、すなわち日本全体の軍事社会化・監視社会化がそれと表裏一対のものとして既成事実化されつつあることが、本書全体を通じて具体的に明らかにされたのではないかと思う。

 最後に、現在も戦場であるイラク・クウェートに派遣されて米軍への後方支援という形で「参戦」している航空自衛隊の即時撤退を強く求めるとともに、憲法改悪や共謀罪創設等を通じて、日本を戦争国家・警察国家に造り替えようとするあらゆる動きを阻むために、一人ひとりの市民がいまこそ声を挙げて行動を起こすことを呼びかけたい。手遅れになったあとで後悔する、というかつて犯した過ちを再び繰り返さないためにも……。


 二〇〇七年四月一八日

木村 朗 

版元から一言

憲法改悪と連動して進められている米軍再編の本質的狙いとは何か。アメとムチで恒久基地化される地域の住民の目線でその問題点を批判検証。

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著者プロフィール

木村 朗(キムラ・アキラ)

1954年生まれ。福岡県北九州市小倉出身。院生時代(九州大学法学研究科)に旧ユーゴスラビアのベオグラード大学政治学部に留学。主な研究テーマは、原爆投下・核問題、安保・沖縄問題、民族・ナショナリズム問題、など。「平和問題ゼミナール」顧問(ホームページのアドレスはhttp://www.ops.dti.ne.jp/~heiwa/)。長崎平和研究所客員研究員。日本平和学会理事。
 単著『危機の時代の平和学』、編著『核の時代と東アジアの平和』、共著『時代のなかの社会主義』、高田和夫編『〈改訂版〉国際関係論とは何か』(いずれも、法律文化社)など。

石原昌家(イシハラ・マサイエ)

941年生まれ。沖縄国際大学教員、全戦没者刻銘碑「平和の礎」刻銘検討委員会座長、沖縄県平和祈念資料館監修委員等を歴任。「沖縄県知事の代理署名拒否裁判を支援する市民・大学人の会」運営委員。主要著書として、『沖縄の旅・アブチラガマと轟の壕〜〜国内が戦場になったとき』(集英社新書、2000年)、『空白の沖縄社会史——戦果と密貿易の時代』(晩聲社、2000年)、編著『岩波DVDブック オキナワ 沖縄戦と米軍基地から平和を考える』(岩波書店、2006年)など。

舟越耿一(フナコエ・コウイチ)

1945年生まれ。長崎大学教育学部教授、教育学部平和多文化センター長。憲法、法律学、平和学、平和多文化教育論、平和講座などの授業を担当。社会的活動としては市民運動ネットワーク長崎代表、長崎平和研究所副所長、長崎県地方自治研究センター理事長など。主要著書として『天皇制と民主主義』(社会評論社、1994年)、編著として『デモクラシーと憲法』(ミネルヴァ書房、1999年)、『これが平和学習だ』(アドバンテージサーバー、2001年)など。

荒川 譲(アラカワ・ユズル)

1933年東京生まれ。1963年東京大学大学院修了(ドイツ文化)後、鹿児島大学教養部にてドイツ語・平和論(ドイツの「過去の克服」等)を担当、1999年定年退職、鹿児島大学名誉教授。1978年より鹿児島県憲法を守る会会長、鹿児島原水禁議長として反戦・反核・護憲運動に従事。鹿教組教研集会平和教育分科会共同研究者。鹿児島県民教育文化研究所代表委員。かごしま九条の会代表幹事。

田村順玄(タムラ・ジュンゲン)

1945年生まれ。山口県岩国市在住。中国(旧満州)生まれ。61歳。岩国市職員・岩国市職労委員長を経て95年に岩国市議会議員初当選。06年10月の合併後の市議選で2期連続トップ当選、4期目の議席を確保した。市議会内では「リベラル岩国」という一人会派で奮闘。基地を抱える自治体議員と連携し議員集団「リムピース」を運営し、開設するホームページ「追跡在日米軍」は07年2月にアクセス数200万件を突破した。約30の市民団体で構成する「ピースリンク・広島・呉・岩国」の世話人、市民劇団「のんた」の事務局長でもある。

湯浅一郎(ユアサ・イチロウ)

1949年東京生まれ。東北大学理学部卒業。産業技術総合研究所職員。科学技術の社会的あり方を問う契機として、瀬戸内海汚染、原発、火電、松枯れ空散など公害反対運動に関わる。1984年からはトマホーク配備を契機に平和運動に関わり、現在、ピースデポ副代表、ピースリンク広島・呉・岩国世話人、環瀬戸内海会議顧問など。著書に『科学の進歩とは何か』(第三書館)、『平和都市ヒロシマを問う』(技術と人間)など。

金子豊貴男(カネコ・フキオ)

1950年生まれ。57歳 厚木基地爆音防止期成同盟副委員長。1991年より相模原市議。1996年よりホームページ「リムピース追跡!在日米軍」の発信開始。「第1軍団の移駐を歓迎しない会」事務局長。「日米軍事再編・基地強化と闘う全国連絡会」共同代表。

成澤宗男(ナルサワ・ムネオ)

1953年新潟県生まれ。『週刊金曜日』編集部企画委員。著書に『ミッテランとロカール——フランス社会党戦国史』(社会新報ブックレット)、『「9・11」の謎——世界はだまされた!?』(株式会社金曜日)など。

高良鉄美(タカラ・テツミ)

1954年生まれ。琉球大学法科大学院教授、同法科大学院長。憲法学。沖縄県憲法普及協議会会長。1994年以来、帽子をかぶって基地問題を訴え続けている。主要著書として『沖縄から見た平和憲法』(未来社、1997年)、監修『CDブック 群読日本国憲法』(高文研、2007年)、発行者『21世紀版わたしの憲法手帳——いきいき沖縄ライフ第四版』(沖縄県憲法普及協議会、2006年)など。

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