発行:凱風社
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四六判変型 176ページ 並製
定価:1,300円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7736-3101-2(4-7736-3101-5) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年10月
書店発売日:2006年10月20日
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紹介
重慶爆撃から68年、東京大空襲・「ヒロシマ・ナガサキ」から61年、ビキニ水爆実験から52年、日本被団協結成から50年、チェルノブイリ原発事故から20年、湾岸戦争から15年、イラク戦争から3年——「力による平和」がますます加速している現在、加害と被害の二重構造をどう捉えたらいいのか。グローバル・スケールのヒバクの実態と日本の戦争責任をテーマに、日本人一人ひとりが問われている問題の所在を提起し、歴史認識と平和を考えるコンパクトな手引き書。
目次
【1】二一世紀における平和秩序の構築を求めて——今こそ、原爆(核兵器)と劣化ウラン兵器の禁止・廃絶を!木村 朗
【2】〈シンポジウム:主催=グローバルヒバクシャ研究会〉
未決の戦後補償——広島・長崎原爆、東京大空襲、重慶爆撃をむすぶ
●一日でも早く援護行政改革を——原爆症認定訴訟——田中熙巳
●「受忍論」の突破をめざして——民間の空襲犠牲者訴訟——星野ひろし
●加害意識を曇らせた「空からのテロル」——重慶爆撃・中国人被害者対日訴訟——前田哲男
・被害者の立場で戦争責任を追及する意味〈パネリストの発言を受けて〉——内藤雅義
・ドレスデンと東京・重慶を結ぶもの〈パネリストの発言を受けて〉——柳原伸洋
【略年表】被爆者運動のあゆみ
【3】原爆症認定集団訴訟が問いかけるもの——残留放射線による内部被曝の影響——沢田昭二
【4】ビキニとヒロシマ・ナガサキをつなぐ——グローバル・スケールの汚染とABCC——竹峰誠一郎
【5】〈写真が語る〉ビキニの「あの時」そして「現在」——クロスロード作戦から六〇年によせて——高橋博子・竹峰誠一郎
【6】〈写真が語る〉ニュークリア・レイシズム——核による人種差別——豊﨑博光
【7】チェルノブイリ原発事故二〇年——今中哲二
地域社会がまるごと消滅
【8】放射能の脅威は我らが生活の間近に迫る——映画「六ヶ所村ラプソディー」の制作に取り組んで——鎌仲ひとみ
【9】ヒロシマからウラン兵器禁止を訴える——「ウラン兵器禁止を求める国際連合」国際大会報告——振津かつみ
【10】隠されたヒロシマ・ナガサキの実相——民間防衛計画(国民保護計画)にみる核対策——高橋博子
あとがき
前書きなど
あとがき(竹峰誠一郎・高橋博子)
「美しい国」なるものを標榜する安倍政権が誕生した。条件付ながら核武装合憲論を講演会でわざわざ公言した人物が、被爆六〇年を超えて首相の座についた。安倍首相は、侵略戦争や「慰安婦」問題の教科書記述の見直しにも熱心である。そんな安倍首相が率いる政権は「戦後レジームからの新たな船出」を高らかにうたい、「新たな憲法の制定」、つまり現平和憲法の破壊に猪突猛進している。
靖国神社にはせっせと参拝しても、被爆・敗戦六〇年を超えたいま、あの戦争被害者たちが、いわば最期の力をふりしぼり日本政府へ戦争責任を問う訴えを起こしている現実には、全く目をむけようとしない。
本書で取り上げた、中国・重慶空襲の被害者や遺族は今年三月日本政府を相手に集団提訴に踏み切った。さらに東京大空襲の被害者や遺族も、日本政府に対して初となる集団訴訟を起こす準備を進めている。広島・長崎の原爆被爆者団体、日本被団協は今年創設五〇年を迎えたが、一貫して日本政府へ国家補償を求め、最近では原爆症認定を求める集団訴訟も起こしている。
広島・長崎原爆、東京大空襲、重慶爆撃は、「原爆と一般戦災」「加害と被害」などと振り分けられる向きもあるが、それらを複合的視点でどのように結び付けたらいいのか、かれらの訴えに私たちはどう向きあうべきなのか——というテーマで今年六月、グローバルヒバクシャ研究会はシンポジウムを開催した。そこには〈未決の戦後補償〉の姿がくっきりみえてきた。
安倍総裁誕生の報がながれたとき、私は被爆地長崎にいた。「被爆はもうリアルではない」との声がこの長崎でも聞かれる時代になった。確かに長崎の街を歩いてもリアルさはさほど感じない。私がよく行くマーシャル諸島でも同様である。
しかし豊﨑博光氏がいうようにヒバクはそもそも見えないものだ。放射性物質は無色・透明・無臭である。さらにヒバクの影響は、国防と密接に関わりあうため、情報コントロールされる。しかも、核開発国は被害者の人権を無視し、被害の程度を過小評価する。いわば情報コントロール下で、「核兵器による安全保障」体制や「原子力安全神話」が築かれている。情報コントロールに切り込まずして、ヒバクの実相や、核がはらむ平和問題はなかなか見えない。
加えて核開発には差別構造があり、ヒバクの影響は「中心」ではなく「周辺」に押しつけられている。核開発の構造は、世界のヒバクシャや原子力開発のありように目をむけるとよくみえてくる。「周辺」への眼差しと共感がなければ、加害と被害の二重基準の克服はできない。(竹峰誠一郎)
* * *
第二次世界大戦の終戦記念日である二〇〇六年八月一六日(米国時間)、ネヴァダ核実験場に程近い米国ラスベガスの原爆実験博物館を訪れた。この博物館では、広島・長崎への原爆投下によって第二次世界大戦が終了し、その後の米核開発・保有によってソ連との冷戦に勝利した物語が誇らしげに展示されている。米核実験によってネヴァダ核実験場周辺の住民や労働者が被曝したことについて若干の展示はあるが、最後のコーナーでは、被害者の笑顔の写真とともに、これらの被害者には補償金が出されたとして、あたかも決着した問題かのように描写されていた。また戦後初の原爆実験クロスロード作戦で使用されたビキニ環礁は、住民が少なかったので核実験場に選択された、という住民にしてみれば決して認められない説明があった。しかも、核実験によって多少の被害者は出たが、彼ら・彼女らは、結果的に冷戦の勝利に貢献した人々として「冷戦勝利神話」に組み込まれていた。ちなみに、日本では同じころ小泉首相が靖国神社を参拝していた。靖国に参拝される(A級戦犯を含めた)第二次世界大戦の死者の「愛国心」を称え、戦後日本の繁栄のために貢献した人々とする物語に彼ら・彼女らを組み込むために。
その後、メリーランド州ベセスダにあるアメリカ国立衛生研究所を訪れた。そこでは核実験に使用された動物をテーマとした企画展示が行われていた。ここでも核実験に使用された動物は「人類の友」であり、冷戦の勝利に貢献した存在という説明がされていた。
さらにワシントンDCのスミソニアン博物館群の一つである米国立歴史博物館では、入り口に、九・一一事件の翌日にペンタゴンに掲げられた大きな星条旗が展示されていた。同館の三階は、かつては軍事史の展示室として空いている状態であったが、「アメリカ・アット・ウォー」という、戦争でいかに米国は「自由」を獲得してきたのかをテーマにした展示に模様替えしていた。入り口には列ができるほど人気がある展示に変わっていた。そこで描かれているのは、廃墟の光景は見せるが人間の被爆の実相を全く見せない勝利の象徴としての原爆、そして冷戦の勝利神話を裏打ちするかのような米核開発である。
このような核や戦争を肯定する「原爆神話」「原子力安全神話」「冷戦勝利神話」、そして「テロとの戦い神話」に対して、どのような対抗軸を打ち出せばよいのであろうか? そのためには、広島・長崎の被爆者、グローバル・ヒバクシャ、戦争犠牲者の視点からこれらの「神話」の欺瞞性を深く検討することしかない。(高橋博子)
版元から一言
「核時代」に現れた「グローバル・スケールのヒバク問題」と日本政府を相手に集団提訴された「戦後補償問題」に共通する課題とは何か。手遅れにならないうちに考えてみよう。
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著者プロフィール
高橋博子(タカハシ・ヒロコ)
広島市立大学広島平和研究所助手。一九六九年生まれ。アメリカ史専攻。日本平和学会の分科会「グローバルヒバクシャ」共同代表。編著書は、「核時代における国家と国民——原爆医療情報と民間防衛」(紀平英作編『帝国と市民』山川出版社)、『隠されたヒバクシャ』(共編著、凱風社)など。
竹峰誠一郎(タケミネ・セイイチロウ)
早稲田大学・大学院生(国際関係学専攻)。一九七七年生まれ。日本平和学会の分科会「グローバルヒバクシャ」共同代表。和光大学の公開講座で「平和学」を担当。主な著作に『隠されたヒバクシャ』(共編著、凱風社)、『ヒバクの島マーシャルの証言』(共著、かもがわ出版)などがある。
木村 朗(きむら・あきら)
一九五四年生まれ。鹿児島大学教授(平和学・国際関係論)。地域から市民が「創る平和」という視点で、安保・沖縄基地問題、原爆投下・核問題、ナショナリズム、世界秩序等の研究に取り組む。主な編著書は『危機の時代の平和学』『核の時代と東アジアの平和』(いずれも法律文化社)など。
田中熙巳(たなか・てるみ)
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局長。一九三二年旧満州生まれ。父の死後六歳で帰国。旧制中学一年のとき長崎で被爆、祖父、叔父、伯母など身内五人の命を奪われる。その後大学で材料工学の研究・教育に従事しながら、四〇年近く被爆者運動に関わる。
星野ひろし(ほしの・ひろし)
東京空襲犠牲者遺族会・会長。一九三〇年生まれ。旧制中学二年のとき、三月一〇日の東京大空襲で被災し、叔父と叔母を失った。戦災後、勤労動員され凄惨な現場を駆け巡り無残な遺体を収容した。こうした体験が活動の原点にある。
前田哲男(まえだ・てつお)
軍事史研究家・評論家。一九三八年生まれ。ビキニ核実験の住民被害調査、重慶爆撃の実態調査、自衛隊・日米安保問題が主領域。編著書は、『棄民の群島』(時事通信社)、『岩波小辞典・現代の戦争』(編著、岩波書店)、『隠されたヒバクシャ』(監修、凱風社)、『新訂版 戦略爆撃の思想』(凱風社)など。
内藤雅義(ないとう・まさよし)
一九五〇年生まれ。一九七七年から弁護士になり、百里基地訴訟、市民平和訴訟、HIV訴訟、ハンセン病国賠訴訟、原爆症認定訴訟(松谷訴訟、東訴訟、原爆症認定集団訴訟)等に関与。「ワークショップ原爆被害と国家補償」代表、「核兵器廃絶市民連絡会」世話人。
柳原伸洋(やなぎはら・のぶひろ)
東京大学・大学院生。一九七七年生まれ。二〇〇六年一〇月よりドイツ学術交流会奨学生としてポツダム大学歴史学研究所に留学中。専門はドイツ現代史で、空襲・民間防空を中心に研究。
沢田昭二(さわだ・しょうじ)
名古屋大学名誉教授(素粒子物理学)。一九三一年生まれ。広島原爆で母を助け出せなかった体験をもつ。学生、科学者として原水爆禁止運動に取り組み、現在は原水爆禁止日本協議会代表理事。著書は『核兵器はいらない!——知っておきたい基礎知識』(新日本出版)など。
豊﨑博光(とよさき・ひろみつ)
フォトジャーナリスト。一九四八年生まれ。一九七八年から核被害と被曝者の取材を始める。著書は、『アトミック・エイジ』(第一回平和・共同ジャーナリスト基金賞、築地書館)、『マーシャル諸島 核の世紀 1914—2004(上下巻)』(二〇〇五年JCJ賞、日本図書センター)など。
今中哲二(いまなか・てつじ)
京都大学原子炉実験所・助手。一九五〇年広島県生まれ。専門は原子力工学で、原子力利用にともなうデメリットな側面を研究課題とする。主な共著書に『チェルノブイリを見つめなおす』(原子力資料情報室)などがある。
鎌仲ひとみ(かまなか・ひとみ)
映画監督。一九五八年生まれ。代表作に「ヒバクシャ——世界の終わりに」(二〇〇三年)、「六ヶ所村ラプソディー」(二〇〇六年)、主な著作に『内部被曝の脅威』(共著、筑摩書房)などがある。東京工科大学メディア学部・助教授を兼任。
振津かつみ(ふりつ・かつみ)
医師。一九五九年生まれ。原爆被爆者やチェルノブイリ原発事故被災者への支援活動などを通じて、放射線の健康影響について学ぶ。「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」事務局担当。「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)評議員。
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