「韓国の広島」はなぜ生まれたのか〈新装増補版〉ヒロシマを持ちかえった人々
市場 淳子
発行:凱風社
この版元の本一覧
四六判 384ページ 並製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7736-2908-8(4-7736-2908-8) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年06月
書店発売日:2005年06月06日
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紹介

米国は1945年8月6日広島に、8月9日長崎に人類史上初の核兵器・原子爆弾を投下した。その熱線や爆風で、日本人と共に約7万人の朝鮮人が被爆し、約4万人が死んだとされる。生き残った朝鮮人はその後、原爆後障害に苦しみながらもさしたる補償も受けられず、今日まで〈棄民〉扱いされてきた。本書で著者は、在韓被爆者(外国人被爆者)には日本人被爆者と同等の補償を受ける権利があることを訴えると共に、なぜ彼らが当時、広島にこんなにも多く在住していたのかを豊富な研究・取材によって明らかにする。

目次

【第一部】在韓被爆者 闘いの軌跡
◆第一章 見捨てられた在韓被爆者(1945〜1966年)
◆第二章 立ちあがった在韓被爆者(1967〜1978年)
◆第三章 補償を拒みつづける日本政府(1979〜1989年)
◆第四章 人道的支援ではなく補償を(1990〜)
【第二部】「韓国の広島」を生みだしたもの
◆序 章 陜川との出会い
◆第一章 「韓国の広島」と呼ばれる陜川
◆第二章 陜川における日本の植民地政策とその実態
 一、「韓国併合」前夜の陜川
 二、植民地支配の実態
◆第三章 陜川の人々の暮らし
◆第四章 広島と朝鮮人
 一、軍都広島の形成
 二、広島の朝鮮人
◆第五章 陜川から広島への道
◆終 章 原爆地獄から祖国への道
◆(増補)21世紀激動の幕開け、在韓被爆者にさしこんだ希望の光
◆(年表)内外被爆者 不平等の系譜
◆(コラム)アメリカの原爆投下と日本/辛泳洙さんの想いをたどって/沖縄と韓国の被爆者/韓国縦断一五日間の被爆者交流日誌/棉花と移民県広島と在外被爆者/陜川の被爆者へのインタビュー など多数

前書きなど

まえがき

 二〇世紀最後の八月六日、大韓赤十字社ソウル支社において、韓国原爆被害者協会(以下、協会)主催の「第三三回韓国原爆犠牲者追悼式」が行われた。

 追悼式では、在韓被爆者の援護と被害補償を求めて一九六七年に協会を創立し、翌年八月六日に「第一回韓国人原爆犠牲者慰霊祭」を敢行した徐錫佑さんが、祭壇の前で、誰よりも深々と長い祈りを捧げた。

 原爆の火の海のなかで愛娘二人を亡くしてから五五年、協会を創立してからでも三三年。その長い歳月のあいだに、妻が、数多くの協会運動の盟友たちが、補償も援護も受けられず、原爆後障害に苦しみながら、この世を去っていった。徐錫佑さんの静かな祈りは永遠に続くかのようであった。

 日本は、自らが今世紀前半に犯した大きな過ちを、とうとう今世紀中に償うことができなかった。

 わたしは祭壇の前に立ち、そのことを、日本によって人権を蹂躙され、命までも奪われた数万名もの韓国人原爆犠牲者に詫びた。そして、たとえ二一世紀になろうとも、一人でも多くの在韓被爆者が生きているうちに、「生きていてよかった」と思えるような補償と援護を実現するために、力を尽くすことを誓った。

 四半世紀間、協会運動を先導した辛泳洙さんが、苦難の原爆人生と引き替えに遺していった言葉がある。

 韓国被爆者は純全に他意によって、自身の欲望と幸福を踏みにじられたのである。我々は誰一人わかってくれる者さえいないまま、強大国間の戦争の犠牲になり、人類史上空前の非人道的兵器の犠牲になり、言うなれば核時代の十字架を一人背負って死んでいく無念な集団なのである。……人類全体は我々韓国原爆被害者の惨状に目を向けなければならない。その原因を突き止め、明らかにし、考えてみなければならない。その対策を準備し、救済しなければならず、二度とこのような不幸と不条理が地球上で再発されないよう心に銘じることが、必ずや世界平和への道でもあるのだ。……韓国被爆者の問題は、けっして過ぎ去った昔の話ではない。ますます今日的な、我々人類が深く考えなければならない人類自身の課題を抱えた、ますます現実的な主題でもあるのだ(朴秀馥著『声もなく、名もなく——韓国原爆被害者三〇年の記録』の序文より)。

 『ヒロシマを持ちかえった人々——「韓国の広島」はなぜ生まれたのか』は、在韓被爆者が生きてきた二〇世紀一〇〇年の歴史を、二〇世紀後半を生きてきた一人の日本人の視点から、掘り起こし、検討し、記録したものである。これは、わたし自身が親の世代から受け継いだ、大きな負の遺産の記録でもある。

 願わくば、この本が、韓国原爆被害者の惨状の原因を突き止め、明らかにし、その対策を準備するための、一粒の小さな種とならんことを。そして、この本を読んでくださる方の心に、辛泳洙さんの遺した言葉が、たんぽぽの綿毛のごとく飛びひろがらんことを。

版元から一言

在韓被爆者が生きてきた20世紀100年の歴史を掘り起こし、日本現代史における「歴史認識」に一石を投じる歴史書。これで、在韓(在外)被爆者問題のありかがすべて分かる。労作「年表 内外被爆者 不平等の系譜」所収。

関連リンク

凱風社ホームページ

著者プロフィール

市場 淳子(イチバ・ジュンコ)

 1956年、広島県生まれ。1979年にはじめて韓国を訪れ、在韓被爆者の実態に接して以来、「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」の活動にたずさわり、現在は同会会長。大阪外国語大学、神戸学院大学朝鮮語講師。

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