1997.7〜1998年 問われる日本の針路政治を民衆の手に
新崎 盛暉
発行:凱風社
この版元の本一覧
四六判 272ページ 上製
定価:2,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7736-2807-4(4-7736-2807-3) C0331
在庫あり
奥付の初版発行年月:2004年02月
書店発売日:2004年02月25日
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紹介

本書は、沖縄の日本復帰(1972年5月15日)の前後から、沖縄および日本が孕む様々な政治的・社会的問題について沖縄の独自性を踏まえながら、真の平和創造とは何かという視点で発言しつづけてきた沖縄戦後史研究者の評論集・第8巻。新ガイドラインの策定、米軍基地の質的強化、アメリカの世界戦略への追随は、日本を本当に平和で豊かな国にするのだろうか。戦争協力の責任を問われる時代を自ら招き寄せようとしている日本に、著者は鋭い警鐘を鳴らす。

目次



はじめに

[I]アメリカの世界戦略とガイドライン——安保再定義とは何か
1 沖縄から見たガイドライン改定
2 海上基地と新ガイドライン
3 安保再定義の裏に何があるのか——CO2・臨界前核実験・対人地雷そして……
4 政府は沖縄に何をしてきたか
5 四月十七日を忘れまい
6 冷戦後の世界をどうとらえるか——『相対化の時代』(坂本義和著)を読んで
7 参院選挙で何が変わるのか
8 わたしたち自身の敵は作るまい

[II]韓国の反基地運動とともに——東アジアの平和創造に向けて
1 二つの韓国
 【補記】沖韓民衆フォーラムはできないか
2 沖縄の反基地闘争と東アジアの平和創造
3 世界的矛盾と地域の問題
4 ミサイル騒動に想う
5 韓国の実情に何を学ぶか
 【補記】シンポジウム——韓国の米軍基地問題

[III]米軍用地強制使用の現在——特措法改定から地方分権委勧告へ
1 特措法改定から地方分権委勧告へ
2 公開審理から見た米軍用地強制使用の現実
3 米軍用地強制使用反対闘争のこれから
4 軍用地料を考える
5 基地労働者とともに基地の整理縮小を
 【補記】基地労働をどう考えるか——玉城清さんに聞く 

[IV]政治を民衆の手に——名護市民投票から沖縄県知事選挙へ
1 基地と振興策 わたしたちは何を求めているのか
2 FTZ構想と海上ヘリポート
3 それでも名護市民は勝った
 【補記1】名護市民投票と一一・二一式典
 【補記2】三〇年前の出来事——海上ヘリ基地に二・四ゼネストを想う
 【補記3】名護市民投票の結果に思う
4 振興策と不在者投票
5 安保の歪みと苦闘する沖縄——一つの中間総括
 【補記1】反対表明以外の結論はない
 【補記2】名護市民投票から市長選挙へ
6 基地・安保を国民投票に問おう
7 住民投票・国民投票で政治を民衆の手に
8 住民投票は民主主義の学校——【対談】ダグラス・ラミスVS新崎盛暉
9 知事選で問われた沖縄の進路・日本の安保
10 新知事誕生と米軍基地の行方
11 「県政不況」とは何か
12 知事選の結果とその後

【コラム】
◆阿片戦争と湾岸戦争
◆水爆実験と劣化ウラン弾——正義・公正・平和とは何か
◆民衆の闘いは時空を超える

前書きなど

■はじめに

 この巻が対象とする一九九七年七月から九八年末までの一年半は、世界的な規模で、力の誇示・暴力化の傾向がいっそう強まった時期といえるかもしれない。インドやパキスタンの核実験も、頻発するテロも、そうした暴力化の拡がりとみることができる。だが、いうまでもなく、暴力化傾向の頂点に立ち、それを誘発しているのは、世界唯一の超大国アメリカである。軍事的な対抗勢力をもたなくなったアメリカは、自らの政治的経済的利益の追求や価値観の押し付けのために、安易に軍事力を行使する傾向をますます強めつつある。そして、軍事力行使の口実に、自由・人権・民主主義などの理念が使われる場合も、それは一皮むけば、政治的経済的利益の追求を覆い隠すかくれみのであることが多く、そうでなくとも、身勝手な思い上がりにすぎない。

 九八年年頭の米英によるイラク攻撃の試みは、国連を舞台とする駆け引きによってかろうじてくいとめられたが、この年十二月、米英は、国連内部の反対意見を無視し、国連の活動を妨害するイラクを懲罰するためと称して、これを攻撃した。偽証疑惑による大統領弾劾訴追を回避しようとする政治的思惑も秘めながら。

 また、ケニアやタンザニアの米大使館が爆破されると、その報復として、明確な証拠があるとしながら何の証拠を示すことなく、スーダンやアフガニスタンにミサイルを撃ち込んだ。それはやがてNATOのユーゴ空爆へと発展していく。

 こうしたアメリカを中心とする理不尽な軍事行動を、いち早く支持したり、これに理解を示すのが、日本政府である。

 「イラクが日本に原爆を落としたとでもいうのか」と激怒するイラク政府高官の発言はさておき、経済制裁下のイラク民衆に医薬品を届けるために湾岸戦争後一五回もイラクを訪れている伊藤政子さんは、自分自身がアラブの民衆から日本人としての責任を問われた、と証言している。

 かつて、海外を旅行する日本人が、日本の豊かさ故に犯罪の対象となったことがあるが、いまや一人ひとりの日本人が、思いもかけない地域の民衆から、日本の戦争協力の責任を問われる時代がやってきたのかもしれない。いや、自らそうした時代を招き寄せようとしている。

 日本の政治的リーダーたちは、もはや、日本国憲法が、戦争はもちろん、「武力による威嚇」すら禁止していることも、国会議員やその他の公務員が憲法を「尊重し擁護する義務」を負っていることも、念頭にはないらしい。それは、国益を口にしながら私益をむさぼる高級官僚たちの底しれぬ腐敗・汚職と、どこかでつながっているのかもしれない。

 こうした現実のなかで、NATOのヨーロッパにおける役割を、東アジアにおいては日米安保同盟によって果たさせるべく、新ガイドラインが策定され、関連法が整備されようとしている。それを可能にする状況は、むき出しの強権によってではなく、テポドン騒動や不審船騒ぎを使った世論操作によってつくり出されている。

 こうした状況に規定され、それと深く関連し合いながら、沖縄の米軍基地再編統合強化政策とこれに対する闘いがある。

 これまでの沖縄の反基地闘争の一つの柱は、反戦地主を主軸とする米軍用地強制使用反対闘争であった。その法的よりどころは、さかのぼれば憲法に行きつくが、米軍用地特措法それ自体でもあった。

 戦争を放棄した日本国憲法の下にある土地収用法は、軍用地を公共用地と認めていない。したがって、米軍に土地を提供するための特別の土地収用法としての米軍用地特措法が必要であった。しかし、収用法体系に整合性をもたせるため、米軍用地特措法による土地収用・強制使用の手続きは、土地収用法を準用することになっていた。

 だが、九七年四月の特措法改定、さらに九九年三月国会に上程された「地方分権整備一括法案」による特措法改定は、米軍用地特措法の性格を、特別の土地収用法から有事立法へと大きく転換させようとしている。米軍用地は、他の公共用地と違って、総理大臣の権限のみで、新規接収も、強制使用も可能にしようというのである。そうなれば、日本国憲法下の米軍用地特措法は、米軍政下の布令・布告と同じ性格をもつことになる。

 一方、政府は、振興策の大盤振舞いや、一見非政治的と見えるイベントの政治的利用をおりまぜながら、沖縄基地の再編統合強化政策を、県内移設という手段で実現させようと全力をあげている。

 こうした攻勢のなかで、沖縄の反基地闘争は、既成の法や議会制民主主義をこえ、政治を民衆の手にとり戻すべく、住民投票という自己決定権行使の方法で、闘いの新たな地平を切り拓き、豊かさとは何かを問うことで振興策の内実に切り込もうとしている。さらに、この数年、軍事基地に反対し、平和を求める民衆の国境を越えた交流が、顔の見える関係を確立しつつある。とりわけ、沖縄と韓国の米軍基地に反対する運動が、日本各地の平和を求める人びとを巻き込みながら、着実に連携を深めつつある。わたしは、そこに、たとえ、わずかではあっても、東アジアにおける平和創造の希望を託したいと思う。

一九九九年五月

版元から一言

沖縄戦後史研究第一人者・新崎盛暉の評論集第8巻。新ガイドラインの策定や米軍基地の質的強化など、「戦争協力」に向けて驀進する日本に、鋭い警鐘を鳴らす。

関連リンク

凱風社ウェブサイト

著者プロフィール

新崎 盛暉(アラサキ・モリテル)

 1936年東京生まれ。1961年東京大学文学部卒。東京都庁勤務のあいだに、中野好夫主宰の「沖縄資料センター」の主任研究員として沖縄戦後史の研究にたずさわる。中野好夫との共著『沖縄問題二十年』で沖縄戦後史研究の端緒を開き、『戦後沖縄史』においてその基礎を確立した。沖縄の日本復帰に際して、沖縄大学存続闘争に関わり、74年に同大に赴任、83年4月から89年3月まで学長として同大再建に尽力する。2001年4月、再度学長となる。

 沖縄移住当初からCTS(石油備蓄基地)建設に反対する住民運動に関わり、その支援のため「CTS阻止闘争を拡げる会」(のち「琉球弧の住民運動を拡げる会」)を組織し、代表世話人となる。82年には「一坪反戦地主会」を組織、93年からは沖縄発の問題提起と情報交換の場として、季刊誌『けーし風』の刊行にかかわっている。99年8月から「沖縄平和市民連絡会」代表世話人。現在、沖縄大学学長。

◆著作一覧——『沖縄問題二十年』(共著・岩波新書、1965)、『沖縄返還と70年安保』(現代評論社、1968)、『ドキュメント沖縄闘争』(編・亜紀書房、1969)、『沖縄・70年前後』(共著・岩波新書、1970)、『沖縄の歩いた道』(ポプラ社、1973)、『戦後沖縄史』(日本評論社、1976)、『沖縄戦後史』(共著・岩波新書、1976)、『沖縄・世替わりの渦の中で』(毎日新聞社、1978)、『沖縄現代史への証言』(編・沖縄タイムス社、1982)、『沖縄自立への挑戦』(共著・社会思想社、1982)、『観光コースでない沖縄』(共著・高文研、1983)、『沖縄考 琉球弧の視点から』(凱風社、1984)、『沖縄・反戦地主』(高文研、1986)、『日本になった沖縄』(有斐閣新書、1987)、『沖縄・天皇制への逆光』(共編・社会評論社、1988)、『新版 観光コースでない沖縄』(共編・高文研、1989)、『戦後沖縄の社会変動と家族問題』(共編・アテネ書房、1989)、〈沖縄同時代史・第一巻〉『世替わりの渦のなかで 1973〜1977』、〈同・第二巻〉『琉球弧の視点から 1978〜1982』、〈同・第三巻〉『小国主義の立場で 1983〜1987』、〈同・第四巻〉『柔らかい社会を求めて 1988〜1990』(以上、凱風社、1992)、『沖縄修学旅行』(共著・高文研、1992)、〈沖縄同時代史・第五巻〉『「脱北入南」の思想を 1991〜1992』(凱風社、1993)、『新版 沖縄・反戦地主』(高文研、1995)、〈沖縄同時代史・第六巻〉『基地のない世界を 1993〜1995』(凱風社、1996)、『沖縄現代史』(岩波新書、1996)、『沖縄を知る 日本を知る』(解放出版社、1997)、『第三版 観光コースでない沖縄』(共編・高文研、1997)、〈沖縄同時代史・第七巻〉『平和と自立をめざして 1996〜1997.6』(凱風社、1997)、『琉球・沖縄写真絵画集成(全5巻)』(監修・日本図書センター、1998)、『沖縄のこれから』(ポプラ社、1999)、〈沖縄同時代史・第八巻〉『政治を民衆の手に 1997.7〜1998』(凱風社、1999)、『本当に戦争がしたいの!?——新ガイドラインの向こうに見えるもの』(共著・凱風社、1999)、『〈和英両文〉沖縄の素顔』(編・テクノ、2000)、『現代日本と沖縄』(山川出版社、2001)、〈沖縄同時代史・第九巻〉『公正・平等な共生社会を 1999〜2000』(凱風社、2001)

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