国境のこっちと向こうマレー鉄道で朝食を Ⅰ
伊藤 伸平
発行:凱風社
この版元の本一覧
四六判 224ページ 並製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7736-2509-7(4-7736-2509-0) C0026
在庫あり
奥付の初版発行年月:2001年04月
書店発売日:2001年04月28日
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紹介

近代化と伝統文化が混ざり合うシンガポール、マレーシア、タイ。著者は、発展途上の渦中にあったこの3国を、マレー鉄道を途中下車し、乗り継いで国境を越えながら旅をする。旅人を温かく包み込んだ多様な文化や人々との出会いは、いつしか旅の素晴らしさを伝える感動のエッセイに結実した。国境を歩いて越える不思議さ、国境の内と外が垣間見せる残酷さなどに旅人の心は揺れる。1991年発行の旧版『マレー鉄道で朝食を』の新訂版。

目次

●多様な世界へ プロローグ

【シンガポール】
◆乾杯! マイ・エイジアン・フレンド〔シンガポール〕
◆獅子をつくる老人〔チャイナタウン〕
◆歩いて国境を渡る〔コーズウェイ〕
◆マレー鉄道で朝食を〔マレー鉄道〕

【マレーシア】
◆ふたつの中国正月〔クアラ・トレンガヌ〕
◆バリハイの島は遙かに遠し〔ティオマン島〕
◆オランウータンの森〔サンダカン〕
◆サンダカンの丘〔サンダカン〕
◆ふたつの時間が流れる〔パダン・ブサール〕

【タイ北部】
◆強制送還に国境の緊張を知る〔メーソット〕
◆山岳民族を訪ねて〔メーホーンソン〕
◆タイ北部を彩る水かけ祭り〔メーサイ/チェンマイ〕
◆ああ罰金3000バーツ〔メーサイ/タチレク〕
◆インケオ一家に招かれて〔チェンセン〕
◆三つの国の接する地〔ゴールデン・トライアングル〕

【タイ東北部】
◆ラオス語できなきゃナンパもできず〔ウドンタニ〕
◆メコンを行き来する人々〔チェンカーン〕
◆夕陽を見にきた少年僧〔ノンカイ〕

【タイ中部とバンコク】
◆カンボジア行きはマイペンライ〔クロンヤイ〕
◆コ・チャンのサソリ〔コ・チャン〕
◆ああ、バンコクから動けない〔バンコク〕
◆タマサート大学のダンス教室〔バンコク〕
◆王様が通る〔バンコク〕

●ミネラルウォーターのメッセージ エピローグ

前書きなど

◆多様な世界へ——プロローグ

 初めて東南アジアと呼ばれる地域を訪れたのは、一九八二年の冬だった。オーストラリア、ニュージーランドを旅し、「帰りに少し寄ってみようか」という軽い気持ちでシンガポールのチャンギ空港に第一歩を踏み出した。
 チャンギ空港は、当時の成田空港よりもはるかに大きく、しかも入国までのルートもわかりやすかった。市内に向かうために、熱帯である東南アジアを実感させないほどエアコンのよく効いた空港内から地下バスターミナルへと降りた。いきなりねっとりした湿気がまとわりつくように全身を包み込み、汗が体中から吹き出た。あの瞬間、それは忘れられない感覚として頭の中に鮮明に残っている。
 シンガポールは今でこそ、街中に高層建築が並び、緑の多い、しかも清潔な都市国家としてよく知られているが、僕が初めて訪れた時は、まだ経済成長が始まったばかりのころで、高層の建築物はほとんど工事中という状況にあった。路上屋台の禁止された現在とは違い、チャイナタウンの狭い路地には、通りを埋め尽くすくらいいろいろな屋台が出ていた。衣料品やミュージック・テープ、雑貨などの屋台に混じりながら、食べ物屋台が薄汚れたショップハウスを背に、通りの一画を占めていた。食い意地のはった僕は、これ幸いと、シャツを汗だらけにしながら、屋台の間をうろつき、食べ歩いた。
 何がどんな食べ物かもわからずに、ただ屋台の前でうまそうな物を食べている人がいれば、それを指差して注文した。中華もあれば、マレーもインドもあった。屋台主は、カキ油や香辛料の匂いの中で、汗まみれになりながら次から次へと料理をつくっていた。夕方になると、それこそ祭りの縁日のように大勢の人が集まり、夜が更けるまで大きな声で談笑しながら食事を続けていた。また別の一画に目を移すと、屋台主と衣料品を買い求める客が大声で「まけろ」「まけない」といった値切りあいに興じていた。
 匂い、汗、喧騒……屋台街は混沌としていた。人の少ないオーストラリア、ニュージーランドの旅のあとだっただけに、屋台街の中に渦巻く熱気がよけいに僕を圧倒した。
(後略)→凱風社ホームページに全文があります。

版元から一言

旅から帰ってきた友人や恋人から旅の体験を楽しく語ってもらったことはありませんか? 本書は、そうした旅の記憶そのものがお土産となったようなエッセイです。

著者プロフィール

伊藤 伸平(イトウ シンペイ)

1959年秋田県生まれ。明治大学在学中からヨーロッパ、オセアニア、アジアなどへ出かけるようになる。大学卒業後も旅を繰り返し、年数か月を海外で過ごす。なかでも東南アジア、オーストラリアへの旅は、今でも毎年欠かすことがない。そうした体験を生かし旅行ガイドブックの執筆・編集に関わるようになり、現在は海外関係の仕事を中心とするフリーのエディター・ライターとして多忙な生活を送っている。
 著作には、『スチームボート シンガポール』『旅大陸オーストラリア』(いずれも凱風社)、『達人の旅行術アジア』(宝島社)、共著に『ワールドカルチャーガイド オーストラリア』(トラベルジャーナル社)などがある。

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