差別のカラクリ
奥田 均:著
発行:解放出版社 この版元の本一覧
A5判 217ページ 並製
定価:1,700円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7592-1028-6 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年10月 書店発売日:2009年10月09日
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紹介

著者は、現代の<部落問題>理解のパラダイム、新たな解放運動のあり方などに積極かつ大胆に主張を展開。これまで積み上げてきた理論を本書にわかりやすく総合的・体系的にまとめ上げた。今後の解放理論の創造に向けた必読書。

目次

第1章 差別の現実認識の発展
1.部落問題を考える基本的な組み立て
2.「差別の現実に学ぶ」ことの大切さ
3.これまでの差別の現実認識
4.3領域論―戦後の部落差別の現実認識論

第2章 5領域論―差別の現実の全体像にせまる
1.学生たちが発見した部落差別の現実
2.差別の現実認識における第4の領域
3.差別の現実認識における第5の領域
4.「外縁領域」の設定

第3章 5領域論からの提起と差別の現実の検証
1.5領域論からの提起
2.5領域論に沿った差別の現実の検証
3.5領域論を社会的認識へ

第4章 存在論―差別のとらえ方・その1
1.「差別のとらえ方」をなぜ重視するのか
2.「存在論」という差別のとらえ方
3.部落問題における「存在論」

第5章 状態論―差別のとらえ方・その2
1.「状態論」といる差別のとらえ方
2.「状態論」に立脚した取り組みの展開
3.「状態論」に立脚した取り組みの成果
4.「状態論」の限界
5.「存在論」「状態論」と疎外の構造

第6章 関係論―差別のとらえ方・その3
1.「状態論」ではとらえきらない差別の現実との遭遇
2.「違い」への着目から「共通性」への関心へ
3.「関係論」という差別のとらえ方
4.介護保険問題に見る「関係論」の実際
5.デジタル・ディバイド問題に見る「関係論」の実際
6.「関係論」をイメージする

第7章 なぜ部落に矛盾が集中するのか
1.「縦」の悪循環構造―なぜ部落に矛盾が集中するのか(1)
2.「横」の悪循環構造―なぜ部落に矛盾が集中するのか(2)
3.矛盾の集中を加速させる住宅問題

第8章 「関係論」からの提案―部落解放運動の社会貢献
1.小中学校における教科書無償制度の実現
2.奨学金制度の改革
3.就職差別撤廃への歩み
4.地域就労支援事業の創設
5.個人情報の保護

第9章 「関係論」からの発展―新たな差別論の構築
1.差別の機能と発動
2.障害者問題での「社会モデル」と「関係論」
3.「協働」による啓発効果
4.排除と忌避

前書きなど

これまで当たり前だと受け止めてきたことがらが、ふと周りを見渡すと、当たり前でもなんでもないことに気づかされます。半信半疑で眺めているうちに、ゾッとさせられる現実にゆきあたることも珍しくありません。
 例えば小学校や中学校に関わる「自由校区」の議論です。「越境通学は差別だ! 差別越境を根絶しよう!」とのスローガンを掲げて、通学校区制度の徹底を教育行政は推進してきました。ところが今、教育活性化の切り札として、「校区の自由化」が堂々と主張され、導入されはじめています。
 「不安定就労の実態こそが差別の現実だ」と告発し、「安定した 仕事の確保は部落問題解決の中心的課題である」と訴えて、仕事保障の取り組みを進めてきたのは周知の通りです。ところが世の中はいつの間にか、日雇い労働者や臨時工を「フリーター」と呼び、社外工を「派遣」と読み替えて、新しい働き方のトレンドにしてしまったのです。
 主権在民、象徴天皇制と並ぶ、日本国憲法の3本柱の1つとして世界に誇ってきた平和主義でさえ、そのシンボルをなす第9条が改憲論議の焦点となっています。
 雰囲気に流されずに、もう一度、きちんと考えてみることの大切さをひしひしと感じます。こうした作業を怠るところに、反動の疫病神はスルリと入り込んでくるに違いありません。
 隔世の感を覚えるそんな社会動向のひとつに、部落問題をめぐる議論が位置しています。「今昔物語」ではありませんが、「今昔(今は昔)・・・となむ語り伝えたるや」と口にしたくなるような変化が、部落問題を取り巻く状況として進行しています。
 「部落差別はまだあるのですか」と真顔で尋ねる人とあちこちで出会います。行政の方から、「『地対財特法』という同和対策事業に関わる法律が2002年3月に期限切れを迎えたので、同和行政を続けることがむつかしくなりました」と話されることもあります。
 「部落差別はまだ残されているかって?そんなの当たり前じゃないですか」と簡単に片付けるのではなく、「部落差別は本当に残されているのだろうか。だとすれば、それはどんな形で残されているのでしょう」と一つ一つ丁寧に押さえ直していく作業が改めて問われているような気がします。「何をつまらない心配をしているのですか。いい加減にしてください」と切り捨てるのではなく、もう一度、きちんと考えてみることが今、部落問題に求められています。
 ただしそれは、これまでどおりのことを単に再確認することではありません。社会は変化しているのですから、社会問題にもまた、発展的にリニューアルした理解が問われてきます。急速な状況の変化は、「部落問題認識の創造的再整理」の作業を求めているのだと感じています。
 本書は、そんな大それたテーマに、ひとつチャレンジしてみようと蛮勇をふるいたたせて取り組んだものです。「反動の疫病神につけ込む隙を与えてなるものか」と念じながらの挑戦です。・・・」

版元から一言

理論書にありがちな小難しさはなく、いろんなデータを用い、当事者の証言を引用するなど、わかりやすく、一つひとつ論理を積み上げていく文章は、著者の人柄。奥田ワールドの集大成。模索する解放運動にあって、本書は必読書。

著者プロフィール

奥田 均(オクダ ヒトシ)

近畿大学・人権問題研究所教授。博士(社会学)。
[主な著書]
『部落解放への挑戦――「補償」から「建設」へ』(解放出版社、1994年)
『人権のステージ――夢とロマンの部落解放』(解放出版社、1998年)
『「人権の宝島」冒険――2000年部落問題調査・10の発見』(部落解放・人権研究所、2002年)
『土地差別問題の研究』(解放出版社、2003年)
『土地差別――部落問題を考える』(解放出版社、2006年)
『結婚差別――データで読む現実と課題』(部落解放・人権研究所、2007年)
『見なされる差別――なぜ、部落を避けるのか』(解放出版社、2007年)
『同和行政がきちんとわかるQ&A』(共著、解放出版社、2008年)など

上記内容は本書刊行時のものです。
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