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絵画と受容
クーザンからダヴィッドへ
原書: Ars Praemoderna in Francia II PICTURA ET RECEPTIO : Ex Cousin ad David
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年3月
- 書店発売日
- 2014年3月7日
- 登録日
- 2014年3月4日
- 最終更新日
- 2014年3月4日
紹介
頭脳的て観念的、しなやかに弧を描く曲線への愛着、異教の女神たちの官能的な姿態、イタリア人文主義に色濃く染められた難解な寓意表現、これらのフォンテーヌブロー派が切り拓いたフランス近世美術の誕生と展開の道程、クーザンからプッサンへ、ロランからヴァトーへ、シャルダンからフラゴナールへ、グルーズからダヴィッドへ、フランス近世美術の発展と精華を明らかにする。
目次
プロローグ フランス精神の輝き──古典主義絵画の誕生 大野芳材
第1章 ジャン・クーザン《エヴァ・プリマ・パンドラ》 田中久美子
第2章 技芸が自然を助ける(Ars naturam adiuvans)──ニコラ・プッサン《エリエゼルとリベカ》 望月典子
第3章 ニコラ・プッサン〈四季〉連作──その意味構造をめぐって 栗田秀法
第4章 クロード・ロランとタッソ──《エルミニアと羊飼い》を考える 小針由紀隆
第5章 雅宴画の変容──ヴァトーからフラゴナールへ 大野芳材
第6章 シャルダン《オリーヴの壜詰め》──光と色彩の知性、静物画の革新 船岡美穂子
第7章 フラゴナール《サン・クルーの祭》 吉田朋子
第8章 グルーズ事件──グルーズ《息子カラカラを叱責するセプティミウス・セウェルス帝》 伊藤已令
第9章 ダヴィッドの歴史画──《ホラティウス兄弟の誓い》の造形を中心に 矢野陽子
註
エピローグ フランス近世の絵画と受容──解説にかえて 大野芳材
人名索引
前書きなど
フランス美術を未知の沃野へ連れだしたものこそ、フォンテーヌブロー宮殿で活躍したイタリア出身の画家たちなのである。彼らと彼らの薫陶を受けてフォンテーヌブロー派と呼ばれるようになった画家たちはイタリアで澎湃として起こったマニエリスム美術の優れた実行者であって、きわめて頭脳的で観念的、独自な美意識を体現した作品を残した。それは自然主義、写実主義を尊重する北方美術の対極にある。頭の小さな細身の人物像、しなやかに弧を描く曲線への愛着、前景と後景の比例関係の極端な誇張などの造形的な特徴、さらに異教の女神たちの官能的な姿態は、北方の敬虔な宗教画家の知らない世界だった。イタリア人文主義に色濃く染められた難解な寓意表現とともに、フランスの画家には驚嘆すべき経験だったにちがいない。それがどれほど深く強く彼らをとらえたかは、ひとつの流派が形成されたことがなによりの証だろう。先走ったことを言えば、こうした特質は第二次フォンテーヌブロー派に受け継がれ、とりわけ女性像は一八世紀のブーシェや新古典主義の画家アングルの典雅で洗練された造型の祖型となるのである。フォンテーヌブロー派の特徴ある造型は、フランスの人々の知性や感性というフィルターを通して、独自の古典主義美術に結晶化し、それが時代の趣味や社会的な条件の洗礼を受けながら、次の世代の美術を生みだしていくことになったのである。
上記内容は本書刊行時のものです。