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滅びゆく季語
自然環境変化と歳時記
- 出版社在庫情報
- 在庫僅少
- 初版年月日
- 2011年10月
- 書店発売日
- 2011年10月31日
- 登録日
- 2011年9月27日
- 最終更新日
- 2013年2月28日
目次
はじめに
1 自然環境と歳時記
2 季語に見る自然環境変化の影響
2.1 地球温暖化とその影響
流氷、梅雨、台風、凩、雪
2.2 生物多様性の喪失
(1)動物の種および個体数の減少
諸子、蛙、蜂、水鶏、仏法僧[木葉木菟]、山椒魚、蛍、糸蜻蛉、源五郎、
鼓虫、雷鳥、岩魚、斑猫、髪切虫、雁、蜻蛉、轡虫、鵙、鷹、梟、鶴
(2)植物の種および個体数の減少
若緑[松の花、松落葉、新松子]、桜草、翁草、敦盛草、杜若、鷺草、桔梗、藤袴、竜胆、福寿草
(3)動物の生息域の移動・拡大
鰆、蝶[夏の蝶、秋の蝶、冬の蝶]、鰯、鮭、鹿、猪
(4)植物の芽吹き、開花、紅葉などの時期の変化
柳、紅葉
(5)外来種および栽培・飼育種の増加
いぬふぐり、蒲公英、シクラメン、目高、松虫
2.3 開発による影響
(1)ダムの建設による生物種の変化
鮎、蜉蝣
(2)干潟の減少による生物種の変化
五郎、鴫
おわりに
文献
前書きなど
人類社会が発展し豊かさや利便性を増す一方で自然環境は大きく変化した。歳時記における季語とその記述には、こうした自然環境の変化にともなって実態との間に乖離の恐れやすでに乖離を生じている例が少なくない。その主たる要因には地球温暖化による気候の変化、並びに温暖化や化学物質汚染、開発などに起因する生物多様性の喪失がある。このいずれもが、よりよい生活を求めて人間が行う産業・経済・社会活動と深く関わっている。
俳句界ではこれまで環境問題に直接向き合うことはほとんどされて来ていない。しかしながら、最近になって具体的な取り組みが見られるようになった。すなわち、平成二十年には(社)俳人協会が環境委員会を発足させ、環境問題に俳人がどう関わるかの議論を一年半に亘って行っている。その結果は「自然環境と俳句に関する提言」(「俳句文学館」第468号、平成二十二年四月)として纏められた。提言の内容は、協会が創立五十周年を迎える平成二十三年に、《花と緑》をテーマに各地で俳句大会を開催し環境問題への関心を高めようとするものである。併せてこれを契機に、「吉野の桜を守る会」の活動を始めとする地域の環境問題への取り組みに協力することや、「俳句文学館紀要」第十七号において環境小特集を組むことなどが具体的施策として掲げられた。
本書の企画案も上記環境委員会において、活動への協力の一環として討議がなされたものである。したがって、本書の主たる目的は環境問題の要因の究明にあるのではなく、顕在化しつつある自然環境変化の現状を季語あるいは歳時記との関わりという観点から見直すことにある。それによって俳句に対する環境変化の影響を再認識するとともに、歳時記改訂の際の参考資料として活用されることを期待している。
対象とした個別の項目には、『山本健吉 基本季語五〇〇選』講談社学術文庫(1989年)およびその他の歳時記や季寄せに記載されている季語の中から、特に環境変化の影響が大きな季語をとりあげた。それらの季語の多くは季語の分類における「天文」、「地理」、「動物」、「植物」に属するものである。なお、各項目冒頭の歳時記抄録は既存の複数の歳時記における記述の概要である。その末尾の関連季語には、対象とした季語に関係が深く対象季語と同様に環境変化の影響を受けると考えられる季語を列記した。それぞれの季語の現状は歳時記抄録の後に本文として記述してある。
上記内容は本書刊行時のものです。