版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
番犬の流儀 東京新聞市川隆太遺稿集編纂委員会(編) - 明石書店
.
【利用可】

書店員向け情報 HELP

書店注文情報

注文サイト:

在庫ステータス

在庫あり

取引情報

直接取引:なし

出版社への相談

店頭での販促・拡材・イベントのご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。

番犬の流儀 (バンケンノリュウギ) 東京新聞記者・市川隆太の仕事 (トウキョウシンブンキシャイチカワリュウタノシゴト)

このエントリーをはてなブックマークに追加
発行:明石書店
四六判
268ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-7503-4215-3   COPY
ISBN 13
9784750342153   COPY
ISBN 10h
4-7503-4215-7   COPY
ISBN 10
4750342157   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2015年7月
書店発売日
登録日
2015年7月8日
最終更新日
2016年3月9日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

54歳で突然この世を去った東京新聞の反骨記者・市川隆太。「こちら特報部」で反共謀罪キャンペーンを展開し世論をリードして廃案に追い込むなど、権力を監視する「番犬(ウオッチ・ドッグ)」を生涯貫いた。報道の危機が叫ばれる中、あらためて市川氏の仕事を振り返り、ジャーナリズムの本質を問う。

目次

 はじめに――今も信じられない不在[瀬口晴義]

第1章 安倍政権を嗤う
 Ⅰ メディアは希代の悪法に立ち向かえるか
 Ⅱ これは「始まり」にすぎない
 Ⅲ 憲法は誰のもの
 Ⅳ 取材の品格
 ○追悼コラム[海渡雄一]
 ○追悼コラム[田島泰彦]

第2章 反共謀罪キャンペーンとこちら特報部
 Ⅰ 疑問だらけの共謀罪法案
 Ⅱ それでも美しい国?
 ○追悼コラム[田原牧]

第3章 初心を忘れず、流されず
 Ⅰ 私たちは良い番犬だろうか
 Ⅱ 若者いじめの国
 Ⅲ 問われる社会の度量
 Ⅳ 事件報道――新聞 vs 検察
 ○追悼コラム[魚住昭]

第4章 追悼 市川隆太
 もっと沖縄を 背中を押した市川さん[赤井朱美]
 市川隆太記者と人権擁護法案[小林健治]
 流星のごとく[澤木範久]
 市川さんとわたしと東京新聞[清水勉]
 社会部記者の理想を体現[菅沼堅吾]
 市川さんが書いてくれた記事[田口嘉孝]
 永遠の月光仮面[貫田直義]
 「共謀罪」の強行採決を止めた市川記者のペンの力[保坂展人]
 外国人の人権問題と市川さん[師岡康子]

 おわりに――あとから続くために[中山洋子]

 市川隆太略歴

前書きなど

はじめに――今も信じられない不在[瀬口晴義(東京新聞社会部長)]


 つい一週間前、電話で冗談を言っていた先輩が集中治療室のベッドに横たわっていた。そり上げた頭部に急病の痕跡をとどめているものの、呼吸は規則正しく、ぐっすりと気持ちよさそうにしている。ご家族が盛んに声を掛けていた。反応はなくても深層意識には届いていると聞いたことがある。私も耳元で話し掛けた。
 「夜回りに行く時間ですよ。起きてください」。反応はない。「○○新聞に抜かれてますよ!」。やはり、ぴくりともしない。体をさすったり、手を握ったりしたが反応はなかった。それでも自発呼吸を取り戻したとご家族からうかがい、最悪の状態は乗り越えたという安心感とともに病院を後にした。「○○さんが怒っていますよ」。怖かったキャップの名前を挙げたら飛び起きたんじゃないかな、と冗談めいたアイデアが浮かんだのは金沢から東京に戻る車中だった。だが、楽観はあっけなく砕かれることになる。
 北陸本社報道部長の市川隆太さんが倒れたという知らせを同僚の蒲敏哉記者から聞いたのは二〇一四年七月十日夜だった。命は助かっても重い障害が残る可能性が高いと聞いた。電話を切った後、胸に込み上げたのは「悔しい」という思いだった。特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認など、戦前回帰が強まる中、市川さんは週一回の部長コラムで厳しい論陣を張っていた。中日・東京新聞にとどまらず、日本のジャーナリズム界にとっても大きな損失だからだ。
 訃報が届いたのは帰京した翌日だった。天を仰ぐ。一目会えただけでも良かった、と気を取り直すしかなかった。脳出血で倒れてから四日目の七月十四日の夜、市川さんは旅立った。辛い報せを受け、社内外の関係者への葬儀の連絡に追われた。悲しみに向き合うこともできず時が流れていったというのが実感だ。あれから一年が経つ今も、例の調子で電話が掛かってくるような気がしてならない。その不在が信じられないでいる。
 市川さんと最初に仕事をしたのは一九九二年の夏だ。もう四半世紀近く前になる。テレビ東京の記者から二十代後半に東京新聞に移った市川さんは、横浜支局を経由して社会部に上がってきた。当時の社会部は他社出身の猛者が三分の一ぐらいを占め、個性の強い記者たちが競い合って記事を書いていた。その中でも飛び抜けて優秀な記者が市川さんだった。

 (…中略…)

 この本は市川隆太さんが生前、東京新聞特報部時代や北陸中日新聞報道部時代などに書いた記事やコラム、法律雑誌や新聞研究のための書籍に寄稿した文章から選んだ遺稿集です。市川さんと親しかった社内外の皆さまからの追悼文も収録しました。深く感謝申し上げます。
 後進の若い記者の皆さんに市川さんの思いが届くように祈っています。

著者プロフィール

市川 隆太  (イチカワ リュウタ)  (

1960年2月神奈川県鎌倉市生まれ。1982年3月早稲田大学政経学部経済学科卒業後、テレビ東京を経て1987年に中日新聞社に入社。東京新聞横浜支局を皮切りに、東京本社社会部で司法担当や事件遊軍などを歴任。共和汚職事件や金丸脱税事件、ゼネコン汚職事件などを取材した。2005年からは特別報道部に移り、反共謀罪キャンペーンを展開。2006年の日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞大賞を受賞した。川崎支局長を経て2012年7月に北陸本社報道部長に就任。金沢から特定秘密保護法案や集団的自衛権の行使容認を急ぐ安倍政権の「戦時法制」を厳しく批判。2014年7月14日永眠。

上記内容は本書刊行時のものです。