書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
障害者権利擁護運動事典
原書: The ABC-CLIO Companion to The Disability Rights Movement
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2015年5月
- 書店発売日
- 2015年5月31日
- 登録日
- 2015年5月21日
- 最終更新日
- 2015年5月21日
紹介
アメリカの障害者権利運動を理解する上で重要な概念・数値をはじめ貢献した人物・組織・機器・道具から法律・判決まで全467項目で解説。障害者のエンパワメントや当事者主体の視点から描かれた読む事典。巻末には19世紀から現代までの障害者権利運動の進展がわかる詳細な年表と索引を付す。
目次
まえがき
序
障害者権利擁護運動事典
年表
参考文献
監訳者あとがき
索引
前書きなど
序
障害者が解放運動の真っ最中でさえ、抑圧されたマイノリティであったことは、多くの人にとっては新しく、驚愕することである。障害者は、歴史を通してさまざまな存在として特徴づけられてきた。神罰を受けて当然の犠牲者、嘲笑の対象、大道芸人、医学の事例研究、慈善の受け手、障害の象徴的な存在である。文献や映画、劇や子ども向けの物語において、障害は、邪悪または子どもっぽい純真さの隠喩として利用されている。また、障害者は、邪悪だったり、滑稽だったり、あるいは死よりも悪い運命の犠牲者として描かれている。アメリカの障害者は、障害があるというだけの理由で、いつも決まって施設に拘束されてきたし、それが終生続くこともあった。19世紀から20世紀の初め、多くの州では、特定の障害をもつ人が結婚することを禁止する法律を可決したし、障害者の中には大人でも子どもでも、強制的に断種された人々がいた。シカゴ市の条例は、「何らかの点で目障りであるか、不快な対象であるほど奇形」な何びとに対して、犯罪とするとまで規定したのである。
アメリカの障害者は、1世紀以上にわたって組織化を図り、このすべてを変えようとしてきた。1850年代初め、聾者は地方の組織を結成し、1880年に全米聾者協会に合同した。大不況の間、身体障害者連盟は、連邦政府の反障害者差別政策に抗議するために、連邦政府の省庁で座り込みを展開した。全米盲人連合とアメリカ身体障害者連盟は1940年代初めに、アメリカ身体まひ退役軍人会は第2次世界大戦後に故国に戻った傷痍軍人により結成された。同じ頃、障害児の親が自ら団体を結成し、1950年代には全国的な権利擁護団体に成長した。1960年代には、ポリオ後遺症と脊椎損傷の障害者が、コミュニティでの学習・就労・生活を明確に要求し、精神疾患者が大規模保護施設に収容されていることに抗議した。この全期間を通じて、少数だが熱意ある理想に燃えたリハビリテーション専門家が、障害者をアメリカ人の生活の主流に入れることに献身した。最後には1970年代初めに、一連の障害者の権利訴訟において、最初で最大のペンシルヴェニア州精神遅滞児親の会(PARC)対ペンシルヴェニア州裁判が、公民権問題としての障害を結晶化させた。1960年代のアフリカ系アメリカ人および女性運動に刺激されて、さまざまな障害者コミュニティが合体して、現在の障害者権利運動を起こした。
それ以降の数十年において、障害者の権利擁護者たちは、重要な法律および立法上の勝利を勝ち取り、1990年のアメリカ障害者法の可決において頂点に達した。政治運動と並んで、障害文化の成長が始まったが、それは、障害を恥辱の源として考えたり、障害者を人間以下であるという障害観に挑戦するものである。障害をもつ芸術家、著作家、演奏者、そして運動家は今や、人間の多様性の不可欠な一面として障害を讃えている。彼らは、社会が障害をどのように見ているのか、また、障害者が自身をどのように見ているのかということにおいて、革命的な段階に到達したのであった。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。