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インドネシア 創られゆく華人文化 北村 由美(著) - 明石書店
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インドネシア 創られゆく華人文化 (インドネシアツクラレユクカジンブンカ) 民主化以降の表象をめぐって (ミンシュカイコウノヒョウショウヲメグッテ)

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発行:明石書店
四六判
264ページ
上製
定価 3,800円+税
ISBN
978-4-7503-3994-8   COPY
ISBN 13
9784750339948   COPY
ISBN 10h
4-7503-3994-6   COPY
ISBN 10
4750339946   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年3月
書店発売日
登録日
2014年3月28日
最終更新日
2014年4月22日
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書評掲載情報

2014-04-27 日本経済新聞
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紹介

1998年にスハルト大統領が退陣した後、インドネシアは民主化の過程を歩んだ。その中でインドネシア華人をめぐる政治的・社会的環境はどう変化し、またかれらはどのように自己表象を行っていったのか。豊かなフィールドワーク経験を踏まえた、精緻な分析。

目次

 序

第一章 インドネシアの国民文化の形成と華人
 はじめに
 一 新国家における国民文化と華人政策
 二 スハルト体制下の文化政策
 三 スハルト体制下の対華人政策
 四 インドネシア華人とは
 五 インドネシア華人に関する先行研究
 六 「華人性」という問題
 七 本書の位置づけと構成

第二章 インドネシアにおける華人の歴史
 はじめに
 一 中国と東南アジアの歴史的関係
 二 インドネシア華人史
  1 華商の時代と鄭和の到来
  2 オランダ植民地下における華人の役割
  3 外島への移民と華工の時代
  4 プラナカンとトトックのアイデンティティ形成
  5 スハルト時代の華人文化
 三 スハルト体制の崩壊と新時代の幕開け

第三章 言語――ジャカルタ言語景観にみられる中国語使用と変化のきざし
 はじめに
 一 中国語の表出しないジャカルタのチャイナ・タウン
 二 言語景観の定義と先行研究
 三 ジャカルタのインドネシア華人
  1 華人と中国語をめぐる歴史的背景
  2 改革の時代と中国語
 四 調査地内の言語景観
 五 漢方薬局と中国語
  1 インドネシア中医学史
  2 パンチョラン通り周辺の漢方薬局
 まとめ

第四章 宗教――儒教の再公認化と華人
 はじめに
 一 二〇〇六年二月の春節行事
 二 インドネシアの儒教に関する先行研究
 三 歴史的背景
  1 儒教をめぐる運動のはじまり
  2 蘭領東インドにおける儒教の宗教化
  3 公認宗教の成立と宗教の政治化
  4 スハルト体制とインドネシア儒教最高評議会
 四 儒教の再公認化
  1 転換点と仕掛け人
  2 スハルトの失脚と儒教の華人問題化
  3 イムレック・ナショナル――新たな華人と政府の交渉の場
  4 地方や個人にみられる変化
 まとめ

第五章 表象――華人文化表象の場としての印華文化公園
 はじめに
 一 エスニシティ創成と文化表象の必要性
 二 印華文化公園
  1 立案者
  2 立地
  3 計画の経緯
  4 印華文化公園計画の全体像
  5 チャンドラ・ナヤ
  6 ミュージアムの展示と活動計画
 まとめ

第六章 華人文化表象のもうひとつの方向性――プラナカン概念の再浮上
 はじめに
 一 百花繚乱の華人メディア
  1 華人メディアを検討する意義
  2 中国語ルネッサンスとその展開
 二 華人メディアにおけるインドネシアの社会と華人
 三 新たな華人メディア―コーヒー・テーブル・ブック
  1 『インドネシア・チャイニーズ・プラナカン』出版の背景
  2 東南アジア華人に関するコーヒー・テーブル・ブック
  3 描かれる華人像とメッセージ
  4 目録としてのコーヒー・テーブル・ブック
 四 プラナカン文化のその後
 まとめ
 付録:Coffee Table Book の目次

終章
 一 民主化後の華人文化
 二 華人の変化からみえる民主化後のインドネシア
 三 スハルト時代の歴史と未来――九・三〇事件と大粛清の再検討
 四 グローバル化の影響と華人性の行方
  1 中国の台頭と華人文化の表象
  2 グローバル化と「インドネシア性」・「華人性」
 結びにかえて

 註
 あとがき
 参考文献
 索引

前書きなど



 (…前略…)

 本書は、一九九八年五月二一日にスハルト大統領が退陣した後のインドネシアが民主化する過程で、インドネシア華人をめぐる政治的・社会的環境がどのように変化し、その中でインドネシア華人文化の表象がどのように形成されていったかを分析している。
 民主化の直後に、インドネシア各地でエスニック・グループや宗教をめぐって紛争が勃発したことからも明らかなように、スハルト体制の崩壊は、中央集権型の権威主義体制のもとで長年押さえ込まれてきた様々な差異が表面化する契機となった。スハルト時代には、民族(Suku)、宗教(Agama)、人種(Ras)、階層関係(Antargolongan)などの差異は、SARAの略称で呼ばれ、公然と議論することが禁じられていたが、民主化を迎え、紛争にならないまでもそれらの差異を公の場で論じ表現することが許される社会へと変化していったのだ。本書では、そのような変化の中で、華人文化の実体と表象がどのように現れていったのか検討している。
 本書が対象とするインドネシア華人とは、中国系の出自をもち、インドネシアを生活の場としている人々である。インドネシアでは、同国がオランダの植民地、蘭領東インドであった時代から、華人は先住民とは区別された上で統治されていた。第二次世界大戦後は、インドネシアの独立と同時期に、中華人民共和国が成立し、冷戦構造が深まる中で、華人の立場は不安定なものとなっていった。戦後次々と独立していった東南アジア諸国が、中華人民共和国の影響を受けて共産化するのではないかといったアメリカをはじめとする西側諸国の懸念は、インドネシアやマレーシア、シンガポール、フィリピンなど東南アジア島嶼部においては、国内政治における対華人政策にも反映されていった。このような脱植民地化と冷戦が進行する過程で、インドネシアでは、一九六七年以降権力を掌握したスハルトによって、同化政策の名のもとに、包括的な対華人政策が実行されていった。華人文化の表象に関して言えば、「中国的」とされる言語や儀礼などの表現を、公の場において実践することを禁じられた。

 (…中略…)

 本書では、このような新たな華人文化の表象がどのようなどのような人々によって、どのような交渉プロセスを経て表舞台に出てきたのかを検討している。ひとくちに華人文化の表象といっても、それぞれの立場や背景によって、その目指すところや思い描く像は様々である。北京語が華人の言語といえるのか、カリマンタンなどの外島に比べて、インドネシアにおける歴史の長いジャワの華人が形成してきた混交文化こそ華人文化の中心と考えるのか、外島の華人人口の高い地域の文化を、新たな観光資源として開発するのかなど、多くのアクターによって様々な考え方に基づいて文化表象の再創成と発信がされてきた。また、その過程においては、インドネシアにおいて民主化が進んでいったことに加えて、経済発展を遂げた中国の国際社会におけるプレゼンスが急上昇したことも、大きな影響を与えた。

 (…後略…)

著者プロフィール

北村 由美  (キタムラ ユミ)  (

一橋大学大学院言語社会研究科修了(学術博士)。
京都大学東南アジア研究所・助教を経て、2012年より京都大学附属図書館研究開発室・准教授(現職)。
インドネシア華人研究・東南アジア地域研究・図書館情報学専門。主な著作は、Words in Motion: Language and Discourse in Post-New Order Indonesia(共著、NUS Press、2012年)、「『西』への道――オランダにおけるインドネシア出身華人の軌跡」『地域研究』(2014年)。

上記内容は本書刊行時のものです。