書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
教育を紡ぐ
大槌町 震災から新たな学校創造への歩み
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年4月
- 書店発売日
- 2014年4月7日
- 登録日
- 2014年3月27日
- 最終更新日
- 2014年3月28日
紹介
東日本大震災によって物的・人的・精神的に大きな打撃を受けた学校現場は震災時にどう対応し、それから3年でどのように教育現場を再生・創造していったのか。教育現場の復興に尽力する学校関係者の経験と語りによってそのプロセスを描く。
目次
まえがき
子どもたちの未来へ~よみがえれ教育(大槌町教育委員会 教育長 伊藤正治)
はじめに
適切な判断、迅速な避難
安否確認
卒業式
学校再開
応急仮設校舎
学校再編
今後の大槌町の学校教育のあり方
おわりに
第1章 あの日の学校と子どもたち
被災直後の学校の状況(沿岸南部教育事務所 指導主事 武藤美由紀)
終わりのない、答えのない自問の連続
2011年3月11日~遭遇時
2011年3月11日~大槌に向かって
学校はどうなっていたのか
「学校が無くなる」という現実
学校再開決定まで
南景元さんとの出会い
学校再開を迎えるまで
大槌町の子どもたちと出会って(大槌町スクールソーシャルワーカー 南景元)
自分自身の反応と韓国の友人らの反応
大槌町行きの背景
教育委員会との関わりと活動
大人との関わり
活動を終えて
そのとき、教師として考えたこと(大槌町立大槌小学校 教諭 芦澤信吾)
赤浜地区
3月9日(震災2日前)
3月11日(震災当日)
3月12日(震災2日目)
3月13日(震災3日目)
3月22日(震災11日目)
卒業式準備、卒業式
学校の再開に向けて
学校が子どもたちを元気にする(大槌町立大槌小学校 教諭 栗澤由紀)
高台の小規模校で
避難誘導
黒い海の記憶
長く冷たい夜
卒業式での再会
待ちに待った学校再開
二つの記憶(遠野市立青笹小学 校長 吉野新平)
一つ目の記憶――「子どもの涙」〈2011年3月12日〉
もう一つ目の記憶――「机」〈2011年6月〉
第2章 学校再開と子どもの心のケア
学校再開後の教育構想(沿岸南部教育事務所 指導主事 武藤美由紀)
学校と子どもたちの様子
仮設校舎建設と今後の方向性の模索
大槌町小中一貫教育の構想立案
2012年度仮設小学校の学級編成検討
2012年度に向けた心のサポート体制の構築
大いなる未来を信じて
スクールソーシャルワーカーとして活動する中で(大槌町スクールソーシャルワーカー 南景元)
大槌町のスクールソーシャルワーカーとなるまで
SSW活動を通して
学校で活動するということ
たくさんの人に支えられて
スクールカウンセラーとして(長崎県スクールカウンセラー 法澤直子)
学校を元気にしたい
自己紹介
子どもたちと仲良くなるために
先生方の仕事を増やさずに学校を元気にしたい
2つの出来事
子どもと先生の間で
3月11日
大槌を離れて1年
学校の再開と新たな課題に向けた協働へ(釜石市立平田小学校 教諭 及川朋子)
学校再開に向かって
学校の始動
子どもたちの変化
心のケアの専門家との協働
希望は子どもたち(大槌町立吉里吉里小学校 教諭 小野寺康典)
崩れた日常
悲しみの中で
合同授業の開始
「2分の1成人式」
震災と向き合う時間
ともに前を向いて
第3章 より良い教育を目指す新たな学校創造
子どもたちの健やかな育ちを願って(大槌町教育委員会 主任指導主事 小石敦子)
伝えたいこと
2013年度の各学校の児童生徒の現状
大槌町のスクールカウンセラー等の体制と今後の心のサポート体制について
子どもたちの健やかな育ちへ――小中一貫教育と「ふるさと科」
子どもたちの200字作文
夢をもって一歩前へ(大槌町立大槌小学校 校長 菊池啓子)
プロローグ――私自身のこと
ソーシャルワーカー南景元さんとの出会い
2度目の3月11日
怒濤の日々
夢をもって一歩前へ
3年目の大変さ――子どもたちの心の不安定
子どもたちの活躍がうれしい
大槌の話っこききたいな
夢を叶えるノート
奇跡の軌跡――未来への希望を(大槌町立大槌中学校 教諭 盛合晃敬)
結束とチームワークに支えられて
2つの校舎に分かれた学校
感謝の気持ちを伝えたい
ふるさと大槌へのエール
修学旅行の実施
希望ある限り
子どもたちは未来の設計者(大槌町立大槌中学校 校長 鈴木利典)
伝えなければならないこと
奇跡の生徒
復興教育の3つの柱
1 安全の確保
2 安心の確保
3 人材育成
豊かな体験が未来を変える
あとがき
前書きなど
まえがき
千年に一度あるかないかといった未曾有の体験をした人々の物語を前にして、その場に居合わせなかった者としては言葉を失ってしまう。いくら呻吟しても、出て来る言葉は軽く空疎だという気持ちにとらわれる。そのような者にとって、せめてできることは人々の脳裏から薄れてしまいそうな記憶を、改めて呼び戻すための努力をすることではないだろうか。過酷な体験をした人々の思いや言葉、そして営みの中から、私たちが学べること少なくないはずだ。
巷間では大震災の風化について語られる機会も増してきたが、甚大な被害を被った場においては風化などといった言葉は論外である。かつて家並みが立ち並んでいた街中は未だ更地のままだし、走っていた鉄道も駅舎も痕跡さえ留めていない。子どもたちは、冬の寒さや夏の暑さの影響をもろに受ける仮設校舎住まいを続けている。風化どころか、日々震災の爪痕と直面しながら暮らさざるをえないのである。
本書には、岩手県大槌町内の小学校と中学校の学校関係者の2011年3月から2013年秋までの約2年半にわたる思いや取り組みなどが綴られている。ひとりひとりの、どの言葉もインパクトが強く心に浸み渡ってくる。読む者は、大地震直後の状況について述べられた言葉にはその緊迫感に圧倒されるだろうし、最愛のわが子を失ったり、震える寒さの中で子どもたちの恐怖と不安を和らげるために必死に守り続ける教師らの文章には涙を抑えることができないだろう。だがだからといって、ここには哀しみの涙ばかりがあるわけではない。胸をかきむしられるような哀しみと同じく、執筆した人々の子どもたちに対する深い愛情や教育に対する熱い思いに出合い、温もりのある涙をも禁じることができないだろう。
自ら被災者であるにも関わらず、寝食を忘れて子どもたちを守ることに奔走する教師たちの姿、そして同時に子どもたちが彼らを支えるという相互の関係をも描かれている。そこには、何かにつけて子どもと教師の関係が希薄になりつつあるといわれる学校現場のありようとはまったく異なる現実があり、教師が子どもたちを思い、子どもたちが教師を信頼するといった教育のありうべき姿を見てとることができる。そしてその姿を通して、教育や子育て、さらには他者との関係全般について真に大切なことは何なのかを知ることができるに違いない。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。