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ジャパン・イズ・バック 安冨 歩(著) - 明石書店
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ジャパン・イズ・バック (ジャパンイズバック) 安倍政権にみる近代日本「立場主義」の矛盾 (アベセイケンニミルキンダイニホンタチバシュギノムジュン)

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発行:明石書店
四六判
288ページ
並製
定価 1,600円+税
ISBN
978-4-7503-3969-6   COPY
ISBN 13
9784750339696   COPY
ISBN 10h
4-7503-3969-5   COPY
ISBN 10
4750339695   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年3月
書店発売日
登録日
2014年2月26日
最終更新日
2014年2月26日
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紹介

「立場」が主役の社会、日本。立場を失うことを極度におそれ、立場に与えられた役を必死に果たす「立場主義」は経済成長をもたらした一方で、戦争と原発事故を招いた。世界が変わった今、すでに立場主義は時代遅れの遺物となっているが、強固にこのシステムを守ろうとする人物がいる。それが安倍晋三である。立場主義という観点から、安倍政権の本質とそれを生み出した日本社会を分析。安倍政権を乗り越え、豊かで幸福な社会を創造するために一人ひとりが何ができるかを問う。

目次

はじめに
 立場主義が引き起こした戦争、そして経済発展
 実現不可能な立場主義国の復興
 世界を変える唯一の道とは

プロローグ
 「奇跡の一本松」にみる言葉の歪み
 安倍首相が「トレモロ」したいのは何か

第一章 体制派に「トレモロ」された「政治」――安倍政権誕生までの軌跡
 日本に繁栄をもたらした「田中主義」という政治システム
 新しいシステムを構築できなかった小泉改革
 非体制派の政治家ゆえにつぶされた小沢・鳩山政権
 民主党が惨敗した理由
 安倍政権の支持基盤
 自民党ハト派はどこへ行った?
 自民党を中心とした総翼賛体制の完成
 安倍政権の本質とその行く末
 安倍晋三の祖父、岸信介の政治
 「保守」「右翼」の定義の混乱
 アメリカのネオコンとの強いつながり
 暴走する国家機構
 財閥解体で起きた官僚という権力の細分化
 戦争に向けての歯車が動き出す
 安倍首相は全世界に向けてなぜ堂々と嘘をついたのか
 特定秘密保護法は戦争準備の法律
 立場主義人民共和国成立のための法律
 ぼくちゃんが立場を決める
 コミュニケーションを整えるのが政治
 政治の最前線があなたの心の中にある
 今後、安倍政権や日本の政治システムはどうなるのか
 近世江戸に範を求める政治改革
 まとめ――真のコミュニケーションが社会をつくる

第二章 アサッテに矢を放つ「経済」政策――ヴィジョンなきアベノミクス
 アベノミクスは成功すればするほど失敗する
 構造的変化をもたらす外的要因
 中国の世界的地位向上で薄らぐ日本の存在感
 景気は条件であって目的ではない
 「お金をジャブジャブ刷ると景気がよくなる」は幻想
 本当に必要な人にお金が回っていない現実
 「決信分離」で金融機能を取り戻す
 国家予算の私物化
 無駄なモノに無分別に投入される税金
 コミュニケーションの結節点に利益が生まれる
 国家資本主義の肥大化
 感覚を麻痺させなければ出世はできない
 日本経済活性化の処方箋とは
 成長とは何かをとらえなおす
 本当の安全保障とは何か
 多様性の確保こそが成長をもたらす
 ブランドを築き上げて生き残る
 五〇年前にはもう戻れない
 まとめ――私たちが生き残るための成長戦略とは

第三章 「立場主義」という「文化」――「立場の国」復興を目論む安倍立場王
 日本の急成長を支えてきた「立場主義」
 日本経済が行き詰まった理由
 財政支出によって支えられる「官」経済の受益者たち
 無理矢理立ち上がらされている一本松と日本経済
 立場主義と靖国神社の見え透いた嘘
 靖国神社は立場主義の総本山
 靖国神社は戦没者墓地ではない
 日本人の多くは「靖国チルドレン」
 立場主義とタガメ女
 日本一のカエル男
 「息を吐くように嘘をつく」のは誰なのか
 時代遅れの徴兵制を導入したい理由
 安倍首相の施政方針演説にみる福沢諭吉の亡霊
 オイディプス王にみる「意志」の問題
 安倍晋三が国民に求めている覚悟
 『学問のすゝめ』を読み解く
 本当の「強さ」とは
 まとめ――通用しなくなった「勝ちパターン」とこれから

エピローグ
 古いシステムの断末魔
 人々を勇気づける、映画『先祖になる』

 あとがき

前書きなど

はじめに

 二〇一三年一二月六日、特定秘密保護法案が衆議院に続き参議院でも可決されました。私はその模様を、暗澹たる思いで眺めていました。
 この法案には穴が多く、もしも恣意的な運用がなされれば国家運営はもちろん国民生活にも多大な悪影響がでます。しかしそれよりも私の心を暗くしたのは、なにがなんでもこれを通さんとする人々の、立ち居振る舞いでした。
 この不備だらけの法律に対して与党自民党・公明党の議員は、衆院で一人が退席しただけで、あとは造反もなく全員が賛成。みんなの党や日本維新の会も、修正協議の名の下に尻尾を振って擦り寄る。
 与党の幹事長は国民の反対デモを「テロ行為」呼ばわりし、与党議員らは青筋を浮かべて反対する党や議員をただただ罵倒する。
 この大問題に対してTVの生中継はなく、ネットでは反対する人々を指して「サヨク」「反日」「非国民」といった言葉までもが踊る。
 このぶざまな姿を見て、私は安倍晋三首相がアメリカで言った言葉を思い出しました。彼は二〇一三年二月二二日に、ホワイトハウスでオバマ大統領と初の日米首脳会談を行った後、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で、

   “Japan is Back”

と題する講演を行ったのです。この言葉は、官邸でも成長戦略のタイトルとして使われています。
 これは「日本は戻ってきた」という意味で使っているのだと思いますが、それであれば、“Japan has come back.”などと言えば、もっとはっきりと伝えることができます。
 一方、“Japan is back.”と言うと、「日本は後れている」とか「日本は後戻りしている」とかいう意味にも受け取れるのです。わざわざ彼がこういう言い方をしたのは、無意識のうちに、そういう意味を含ませていたからではないか、と私は感じます。

 (…後略…)

著者プロフィール

安冨 歩  (ヤストミ アユム)  (

1963年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、ロンドン大学政治経済学校(LSE)滞在研究員、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、東京大学東洋文化研究所准教授、2009年より同教授。博士(経済学)。主な著書に、『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』『親鸞ルネサンス』〈共著〉『原発ゼロをあきらめない』〈共著〉(以上、明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』『学歴エリートは暴走する』(以上、講談社α新書)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『今を生きる親鸞』(共著、樹心社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『超訳 論語』(ディスカバー21)、『経済学の船出』(NTT出版)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『複雑さを生きる』(岩波書店)、『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。