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ニューギニアから石斧が消えていく日 畑中 幸子(著) - 明石書店
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ニューギニアから石斧が消えていく日 (ニューギニアカラセキフガキエテイクヒ) 人類学者の回想録 (ジンルイガクシャノカイソウロク)

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発行:明石書店
A5判
320ページ
上製
定価 3,300円+税
ISBN
978-4-7503-3913-9   COPY
ISBN 13
9784750339139   COPY
ISBN 10h
4-7503-3913-X   COPY
ISBN 10
475033913X   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年10月
書店発売日
登録日
2013年10月24日
最終更新日
2013年10月24日
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書評掲載情報

2013-12-29 東京新聞/中日新聞
評者: 大石芳野(写真家)
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紹介

1967年、文明との接触を拒んでいたパプアニューギニアのシシミン族のなかで、単身フィールドワークを行なった著者が、未開社会を回想する。その後文明を受け入れ、鉱山開発という大波のなかで急速に変わりゆく現地の社会から人間の進化とは何かを考える。

目次

 はじめに
 プロローグ
1 オクサップミン――西に三〇〇〇メートルを超える連峰を望む
2 オクサップミンからオム川へ――探検を考える
3 初めての出会い――緊張の瞬間
4 オム川流域遠征――自然への挑戦
5 ヒトと自然の共存――熱帯雨林に生きる
6 未開社会における交易――交易の道を文明が流れる
7 部族社会と開発の出会い――新しい価値観と世界観の誕生
8 シシミンとの再会――新しい知識がヒトの表情をかえる
9 新しい世界へ――時計が猛スピードで動き出す
 エピローグ

前書きなど

はじめに

 ニューギニア高地の未開社会が何者にも邪魔されず、時間の流れない世界であった頃、私は一介の人類学者としてこの異文化の社会に入った。未開社会での現地調査が初めてであった私にとって教室で学んできたことがどれほど役に立つか試練に立たされた。筆舌に尽くしがたい苦労があったとはいえ、そこには地球上に健全な人間がいることを自身の目で見ることができ、人類学者として冥利に尽きる思いをしたことが今も昨日の如く脳裏をめぐる。
 一〇〇万年以上の長い年月、進化の一途を辿ってきた人類が昨今では絶え間のない戦争での殺戮、核の恐怖、自然環境の破壊から来る公害などに悩まされている。自然環境を破壊し、天然資源を争奪してきた主役が文明社会の人間であることを思う時、未開社会の人間を思い出さずにはおれない。
 私は一九六四年、ポリネシアでの現地調査を終えて帰国の途上、オーストラリアが統治していたニューギニアを訪れた。当時、私は人類学徒である以上、一度は文明に損なわれていない未開社会の研究をしたいと夢見ていた。ニューギニアを訪れて以来、私はこの国のとりこになってしまった。私に限ったことではない。ニューギニアの土を一度踏んだ人類学者や現地調査に携わった研究者で再び戻ってこなかった者はいなかった。ニューギニアの魅力は言葉で言い尽くせるものではない。
 二〇世紀も終わりに近づく頃、北半球では国家が崩壊するという未曾有の歴史が展開していた。一方、南半球ではかつて歴史に記されたことのなかったことが起きていた。二〇世紀半ばを過ぎても様々な石器が流通していた未開社会をかかえるパプアニューギニアが独立し、世界史にユニークな足跡を残したことであった。パプアニューギニアは宗主国オーストラリアに指導されて、一九七五年に独立した。独立宣言以来、パプアニューギニアでは止まっていた時計の針が猛スピードで回りだした。社会の激変による部族社会の消滅が時間の問題となる一方、新しい世界が展開し始めた。私は人類学者として二度と経験できない世界に入ったのである。
 一九七三年の自治政府の樹立、パプアニューギニアの独立を目前にして私たち研究者はオーストラリア政府の行政下での現地調査を急いだ。私は初めて政府の行政を受け入れた高地周縁部の未開社会の予備調査を終え、一旦日本へ帰国、準備を整えニューギニアへ戻ってきた。私の選んだ地域は旧ドイツ領のニューギニアで、第一次世界大戦終結でドイツが撤退して以来、旧ドイツ領は国連の委任統治下でオーストラリアが行政権を委ねられていた。領域の一部は、調査はおろか踏査すら行なわれていないため立ち入り禁止地区とされ、そこへ入るためには一般人は勿論のこと、役人でもパプアニューギニアの現地政府の特別許可が必要であった。私はパプアニューギニア最後の行政長官L・W・ジョンソン氏に面会し、立ち入り禁止地区に住むシシミンの調査に対して詳しく説明して許可が得られた。運の良いことに最後に残った立ち入り禁止地区が間もなく開放されることになるということも長官から聞いた。間もなくというのは自治政府の誕生前ということであった。ジョンソン氏の西セピック州の高等弁務官(知事)への指令のおかげで、地方で活動していたパトロールオフィサーから予期しなかった多大の協力を現地調査で得たのであった。

 (…後略…)

著者プロフィール

畑中 幸子  (ハタナカ サチコ)  (

大阪市生まれ。
1968年東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。
オーストラリア国立大学高等研究所太平洋地域研究部。
金沢大学文学部教授、国立民族学博物館併任教授。
中部大学国際関係学部教授、同大学国際地域研究所長。
現在、中部大学名誉教授、専攻・オセアニア研究、民族問題研究。
リトアニア国立ヴィトータスマグナス大学客員教授。

【主要著書・訳書】
『南太平洋の環礁にて』(岩波新書、1967年)、Leadership and socio-economic change in Sinasina, New Guinea Highlands (New Guinea Research Bulletin 45), Australian National University Press, 1972、『われらチンブー─ニューギニア高地人の生命力』(三笠書房、1973年)、A Bibliography of Micronesia compiled from Japanese publications 1915-1945(学習院大学東洋文化研究所、1979年)、『ニューギニア高地社会』(中央公論社、1981年)、『リトアニア─小国はいかに生き抜いたか─』(NHKブックス、1996年)、以上単著。『東北アジアの歴史と社会』(名古屋大学出版会、1991年)、『憎悪から和解へ─地域紛争を考える─』(2000年、京都大学学術出版会)、『リトアニア─民族の苦悩と栄光─』(2006年、中央公論新社)以上編著・共著。『サモアの思春期』(マーガレット・ミード著、蒼樹書房、1976年、共訳)、『フィールドからの便り』(マーガレット・ミード著、岩波書店、1984年)、『ニューギニア紀行─19世紀ロシア人類学者の記録─』(ニコライ・ミクロホ‐マクライ著、平凡社、1989年、共訳)、以上訳書。その他、論文多数。

上記内容は本書刊行時のものです。