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現代イラクを知るための60章 酒井 啓子(編著) - 明石書店
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現代イラクを知るための60章 (ゲンダイイラクヲシルタメノロクジッショウ)

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発行:明石書店
四六判
368ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-7503-3777-7   COPY
ISBN 13
9784750337777   COPY
ISBN 10h
4-7503-3777-3   COPY
ISBN 10
4750337773   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0336  
0:一般 3:全集・双書 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年3月
書店発売日
登録日
2013年3月22日
最終更新日
2013年3月22日
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書評掲載情報

2013-04-28 朝日新聞
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紹介

権威主義が潰えた一方、国際社会からの孤立、うち続いた戦闘やテロによって、イラクは“ポテンシャル”開花の機会を失っていた。大河が育んだ文明、多様な民族が織りなす歴史と文化、生産力の高い灌漑農業、石油が支える経済、高度な教育。この国のもつ可能性と希望ある未来を多面的に描き出す。

目次

 巻頭言
 はじめに
 イラク地図〔都市と地理〕
 イラク地図〔行政区〕


I 国の成り立ち――地誌と歴史

第1章 河と砂と山の国――イラクの地理
第2章 モザイク社会――複雑な民族・宗派構成
第3章 チグリス・ユーフラテス河の恵みとともに――危機にさらされる南部湿原地帯
第4章 乾いた国のアツい農業と水利用――国際河川流域国としてのイラク
第5章 農業国から産油国へ――生業の歴史
第6章 メソポタミア文明とシュメール――古代イラクの文明概観
第7章 メソポタミア考古学の成立――考古地理と諸国の貢献
第8章 黄金期のイスラーム帝国――アッバース朝
第9章 バグダードの栄枯盛衰――多文化社会を生んだ南部移民
第10章 独自性を誇る南と北の都市――バスラとモスル


II 繰り返される戦争と苦難

第11章 不毛な戦争――イラン・イラク戦争
第12章 クウェート解放からアメリカの新世界秩序へ――湾岸戦争
 【コラム1】捕虜になった日本人――湾岸危機のエピソード
第13章 解除されなかった制裁――1990~2003年の国連経済制裁
第14章 イラク戦争と泥沼化する米国の対イラク政策――踏みにじられた国際法
第15章 消えない負の遺産――経済制裁の今日的影響
第16章 向けられた大きな期待――イラクの戦後復興と日本の役割
第17章 劣化ウラン弾被害者に支援の手を――声なき声に耳を澄まして
第18章 政治に翻弄される文化遺産――アイデンティティの保存と継承


III 建国から現在まで

第19章 脆弱な国家の始まり――英国の委任統治とイラク建国
第20章 翻弄された王制――激動の中東政治とファイサル政権
 【コラム2】砂漠の女王――ガートルード・ベル
 【コラム3】作られた英雄像――アラビアのロレンス
 【コラム4】流浪の王――ファイサル国王
第21章 1958年共和革命とカーシム政権――軍人政治の始まり
第22章 一党独裁制からフセインの個人独裁へ――バアス党政権
 【コラム5】イラクの独裁者――サダム・フセイン
第23章 革命と亡命、そして地下活動――イスラーム主義運動の政治史
第24章 トロイの木馬――戦後イラクのイスラーム主義政権の現状と課題
 【コラム6】ムクタダ・サドル――戦後イラク政治を左右する男


IV 文化と生活

第25章 黄金時代を取り戻せ――イラク近現代教育史序説
第26章 大統領の芸術家――芸術と映画
第27章 歌曲の匠――イラク音楽概観
第28章 アラブらしさとらしくなさ――イラクの料理
第29章 詩の国の作家たち――現代の文学
第30章 都市の住まい、地方の住まい――近代化と都市化が変える建築様式
第31章 スポーツの新しい幕開け――イラク戦争後の変化と新たな課題
第32章 国家に支配されたメディア――新聞・テレビ事情
 【コラム7】インターネットとSNS――膨張する公共空間


V 社会の基層にあるもの

第33章 政治的安定の鍵を握る部族――イラク社会における位置づけとその変容
第34章 砂漠の民――政治を動かした西部地帯の部族・遊牧民
第35章 「人工国家」――宗派と民族は本当に対立しているのか
第36章 イマームに思いをはせて――シーア派宗教行事の政治社会的役割
第37章 台頭するシーア派宗教界――その政治社会的役割
第38章 女性の社会進出――宗教、そして戦争
第39章 政治に向かう青年――ナショナリズム、左派運動、イスラーム主義


VI 統治機構

第40章 よみがえった亡霊――「人工国家」と国民はいかに統合されてきたのか
第41章 2つのナショナリズム――汎アラブとイラク一国主義の間で
第42章 「恐怖の共和国」――バアス党政権の支配メカニズム
第43章 イスラーム国家を樹立せよ――オルタナティブな国家構想
第44章 権威主義体制の遺産――戦後イラクの民主主義体制


VII クルド民族の歩んだ道

第45章 豊かなる辺境――クルディスタンの地理概観
第46章 辺境の歴史――クルディスタンの近現代
第47章 クルディスタンの山に抱かれて生きる――人々、生活、文化
第48章 契約を求め続けた民族闘争――クルドと中央政府の軋轢の歴史
第49章 もうひとつのイラク――戦後の繁栄とその影


VIII 石油に支えられた経済

第50章 列強支配からの脱却――石油が国有化されるまで
第51章 飛躍できなかった石油産業――戦争と制裁に阻まれた開発
第52章 石油は誰のものか――中央政府と地域政府の熾烈な綱引き
第53章 「最後の楽園」での石油開発――イラク石油開発の現状
第54章 石油依存と負の遺産――直面する経済課題


IX 外交

第55章 イラクを取り巻く国際関係――米国の「くそったれの息子」
第56章 孤立するイラク――冷え切ったアラブ諸国との関係
第57章 近くて遠い隣国どうし――イランから見たイラク
第58章 超大国との複雑で特別な関係――米国とイラク
第59章 経済復興への貢献が最優先――戦後イラクの外交政策
第60章 「友好の貯金」を胸に――日本とイラク
 【コラム8】活躍した日本企業――1970~1980年代のイラク進出
 【コラム9】Imagine IRAQ '70s――写真展「イマジン・イラク」プロジェクト
 【コラム10】アカデミアの架け橋――日本とイラクの学術交流


 あとがき
 現代イラクを知るための文献案内

前書きなど

はじめに

 イラクと聞いて多くの人々が思い浮かべるのは、戦争やテロ事件といったきな臭い話題ではないかと思う。残念ながら、イラクにおいて幾度もの戦争やテロ事件が繰り返されてきたこともまた事実であり、イラクは危険な国というイメージが、日本ではすっかり定着してしまった。
 しかし、イラク国内から続々と人々が避難するような非常事態ともいうべき状況は、すでに過去のものになりつつある。ここ数年に限って言えば、イラクの人々のあいだには、毎朝仕事に出かけ、学校に通い、道端でサッカーに興じ、近所で井戸端会議に花を咲かせる日常生活が戻ってきている。バグダードでは夜遅くまでレストランが賑わい、きらびやかな新しいショッピングモールも登場した。未だにテロ事件が散発的に発生する状況は続いているものの、多くの人々がもはや最悪の状態は脱したと感じている。イラク戦争から10年という時が経とうとしている今、ようやく本格的な戦後復興と新たな開発に向けて、イラクは大きく動き出そうという時期を迎えている。
 本書は、そんなイラクの現状を、政治や経済はもちろん、歴史文化遺産や人々の暮らし、社会事情など、幅広く知ってもらいたいという意図のもとで編纂された。60の章は、以下のとおり9つの部に分かれている。第1部では、地理や歴史、考古学、都市の様子など、現代イラクの「国の成り立ち」を取り上げた。第2部は、1980年からの度重なる戦争と経済制裁、そしてそれらが今に至るまで与えている影響と戦後復興への取り組みという「繰り返される戦争と苦難」を描いている。第3部はイラクという国の誕生から、その後の革命、独裁、そして新たなイスラーム主義者の時代へと至る「建国から現在まで」の政治史だ。第4部は、教育、映画、音楽、料理、文学、建築、スポーツ、メディアと、幅広くイラクの「文化と生活」を紹介している。第5部は、部族、宗教界、宗派・民族問題、青年運動など「社会の基層にあるもの」を取り上げた。第6部は、この複雑な国家をどうやって一つの国として治めていくのかという難題への対処の軌跡を、「統治機構」としてまとめている。第7部は北部の少数民族であるクルド人の歴史や暮らし、そして自治の今を伝える「クルド民族の歩んだ道」だ。第8部では、イラク最大の富である石油をめぐる困難な歴史、そしてこれからの開発への期待と課題を「石油に支えられた経済」としてまとめた。最後の第9部「外交」は、大国や周辺国との関係、そして、学術文化やビジネスなど幅広い関係を通じて育まれてきたイラクと我が国との関係を取り上げた。
 こうした章立てが、現代イラクのすべてを網羅しているとはもちろん言えない。それでも、包括的にイラクという国をとりあげた日本語の書籍がこれまでほとんどなかったことを踏まえて、なるべくさまざまな側面を切り取ろうと試みたつもりである。教育やスポーツといった、日本では専門家が見当たらない分野については、イラクからも寄稿してもらった。

 (…中略…)

 このエリア・スタディーズ・シリーズは、やや硬派な観光ガイド副本としても人気がある。残念ながら今のイラクに観光に行くことはなかなか難しい。だからこそ、紙幅の許す限り、なるべく多くの写真を配置した。豊かな自然、イラクが誇る価値ある文化遺産、戦渦の傷跡の記録、指導者の横顔、何気ない日常の暮らしや町並み……紙面に配置されたそうした写真の1枚1枚が、読者にイラクという国を身近に感じてもらえる一助になればと願っている。そして、写真の提供に快く応じてくださった方々に、改めて御礼申し上げたい。

 (…後略…)

著者プロフィール

酒井 啓子  (サカイ ケイコ)  (編著

千葉大学法経学部教授。専攻・専門:イラクを中心とした中東現代政治。おもな著書・論文:『〈中東〉の考え方』(講談社新書、2010年)、『イラクで私は泣いて笑う――NGOとして、ひとりの人間として』(めこん、2009年)、『イラクは食べる』(岩波新書、2008年)、『イラク 戦争と占領』(岩波新書、2005年)、『イラク・フセイン政権の支配構造』(岩波書店、2003年)、『イラクとアメリカ』(岩波新書、2002年)〔以上単著〕、『中東政治学』(有斐閣、2012年)、『アラブ大変動を読む――民衆革命のゆくえ』(東京外国語大学出版会、2011年)〔以上編著〕。

吉岡 明子  (ヨシオカ アキコ)  (編著

日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究員。専攻・専門:イラクの現代政治・経済。おもな著書・論文:「イラク共和国」(松本弘編『中東・イスラーム諸国民主化ハンドブック』明石書店、2011年)、「飛躍するイラク・クルディスタン――イラク戦争から10年、自治区成立から20年の今」(『中東情勢報告』、2013年)、「イラク戦後移行期のアラブ諸国とイラクの冷たい関係――安全保障環境とアラブ主義の変容の視点から」(『国際政治』159号、2010年)、「イラクにおける米国の六年――治安状況の変遷とその政治的影響」(『海外事情』第57巻4号、2009年)、「イラクの石油産業――積み重なる負の遺産と「地域」を巡る新たな課題」(『発展途上国における石油産業の政治経済的分析――資料集』、2008年)、“Siyasa al-Yaban al-Kharijiya tujaha al-Iraq ba'da 2003(2003年以降の日本の対イラク外交政策)”, Ara, No.33, 2007。

山尾 大  (ヤマオ ダイ)  (編著

九州大学大学院比較社会文化研究院専任講師。専攻・専門:イラク政治、中東政治、比較政治、国際政治。おもな著書・論文:『現代イラクのイスラーム主義運動――革命運動から政権党への軌跡』(有斐閣,2011年)、「外部介入によるイラクの民主化―戦後民主体制の運営」(酒井啓子編『中東政治学』有斐閣,2012年)、“Iraqi Islamist Parties in International Politics: The Impact of Historical and International Politics on Political Conflict in Post-War Iraq”, International Journal of Contemporary Iraqi Studies, 6(1), 2012、“Sectarianism Twisted: Changing Cleavages in the Elections of Post-war Iraq”, Arab Studies Quarterly, 34 (1), 2012、「反体制勢力に対する外部アクターの影響――イラク・イスラーム主義政党の戦後政策対立を事例に」(『国際政治』166号,2011年:第5回国際政治学会奨励賞受賞)、“An Islamist Social Movement under the Authoritarian Regime in Iraq during 1990s: A Study on the Shi'ite Leadership of Sadiq al-Sadr and its Socio-political Base”, AJAMES, 25 (1), 2009。

上記内容は本書刊行時のものです。