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アホウドリと「帝国」日本の拡大 平岡 昭利(著) - 明石書店
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アホウドリと「帝国」日本の拡大 (アホウドリトテイコクニホンノカクダイ) 南洋の島々への進出から侵略へ (ナンヨウノシマジマヘノシンシュツカラシンリャクヘ)

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発行:明石書店
A5判
284ページ
上製
定価 6,000円+税
ISBN
978-4-7503-3700-5   COPY
ISBN 13
9784750337005   COPY
ISBN 10h
4-7503-3700-5   COPY
ISBN 10
4750337005   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2012年11月
書店発売日
登録日
2012年11月5日
最終更新日
2014年6月10日
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書評掲載情報

2013-12-22 読売新聞
評者: 星野博美(ノンフィクション作家、写真家)
2013-01-27 朝日新聞
2013-01-13 読売新聞
評者: 星野博美(ノンフィクション作家、写真家)
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紹介

尖閣諸島、南鳥島、大東諸島…。明治以降にブームとなった無人島探検。その目的は世界市場で高値で売買されるアホウドリであった。この行動は「帝国」日本の領土拡大を導き、はるか太平洋の島々へも進出させた。「アホウドリ史観」という新概念を打ち出した労作。

目次

 はじめに――研究の足跡と分析視角


第Ⅰ部 アホウドリと日本人の無人島進出

1 アホウドリを求めて――「南進」への行為目的
 (1)小笠原諸島の領有とアホウドリ――「南進」へのプロローグ
 (2)鳥島開拓とアホウドリ撲殺事業
 (3)榎本武揚と玉置半右衛門を取り巻く人々
 (4)海洋小説と無人島開拓──ユートピアの実現
 (5)南洋ブームと日本人の北太平洋の認識

2 マーカス島から南鳥島へ――発見から領有へ
 (1)島の発見から日本領有へ
 (2)南鳥島事件の発生と展開
 (3)羽毛採取からはく製業、鳥糞(グアノ)・リン鉱採掘へ

3 アホウドリと尖閣諸島
 (1)尖閣諸島の調査と日本人の進出
 (2)古賀辰四郎の尖閣諸島への進出過程6
 (3)尖閣諸島の産業の変遷と古賀村

4 羽毛輸出の拡大と鳥資源の減少
 (1)羽毛とはく製鳥の輸出拡大
 (2)鳥島の借地継続の曲折と官有地払い下げ
 (3)鳥島大噴火と玉置半右衛門
 (4)アホウドリの減少から新たな島を求めて

5 幻の島 中ノ鳥島の発見と領有
 (1)ガンジス島の発見から中ノ鳥島へ
 (2)志賀重昂と幻の中ノ鳥島開拓
 (3)幻の島の借地・開拓願書――権利獲得競争の果て


第Ⅱ部 バード・ラッシュと日本人の太平洋進出

1 グアノ・ラッシュとバード・ラッシュ――太平洋への日米の進出
 (1)太平洋へのアメリカの進出――グアノ・ラッシュ
 (2)太平洋への日本の進出――バード・ラッシュ
 (3)『龍睡丸漂流記』とバード・ラッシュ

2 ミッドウェー諸島の借り入れと主権問題
 (1)ミッドウェー諸島の借り入れ問題
 (2)日本人の居住と主権問題

3 北西ハワイ諸島における1904年前後の鳥類密猟事件
 (1)アメリカ政府「鳥類捕獲禁止」を発令
 (2)リシアンスキー島の鳥類密猟事件
 (3)その後の展開と「鳥類保護法」の発布

4 バード・ラッシュ――鳥類密猟の構図と悲劇
 (1)パール・アンド・ハームズ環礁での日本人漁夫救助の一件
 (2)レイサン島における日本人密猟者拿捕の一件
 (3)バード・ラッシュの悲劇


第Ⅲ部 バード・ラッシュから無人島開拓へ――大東諸島とその後の展開

1 南大東島の開拓とプランテーション経営――アホウドリからサトウキビへ
 (1)探検から開拓へ
 (2)開拓の進展――玉置商会時代
 (3)独占資本の進出とプランテーション化の進展
 (4)社会構造と植民地経営――会社時代

2 北大東島における開拓とその後の展開――サトウキビ農業とリン鉱採掘
 (1)遅れた開拓着手
 (2)糖業生産と社会階層
 (3)リン鉱採掘と鉱業空間

3 ラサ島の領土の確定とリン鉱採掘事業
 (1)探検から領土の確定へ
 (2)アホウドリからリン鉱採掘へ――行為目的の転換
 (3)リン鉱事業の進展とスプラトリー(南沙)諸島への進出
 (4)リン鉱事業の終焉と単一企業島社会


第Ⅳ部 南洋の島々への進出から侵略へ――アホウドリからグアノ・リン鉱採掘へ

1 台湾島北部の無人島への日本人の進出――出願文書を中心にして
 (1)海鳥生息地と彭佳嶼への田部井重次郎らの借地出願
 (2)依岡省輔らの借地願いと台湾総督府の決定
 (3)その後の棉花嶼――グアノ・リン鉱採掘へ

2 東沙島への日本人の進出と西澤島事件
 (1)東沙(プラタス)島への日本人の進出
 (2)台湾総督府による「プラタス島」の調査
 (3)西澤島事件とその顛末

3 南洋群島アンガウル島への武力進出とリン鉱争奪
 (1)南進論の高揚と南洋群島
 (2)南洋群島の占領と企業出願
 (3)リン鉱利権の争奪――南洋経営組合から海軍直営に


 おわりに
 参考文献

前書きなど

はじめに――研究の足跡と分析視角

 (…前略…)

 かつてカール・シュミットが、人間の海洋進出の契機としての鯨の重要性を説き、地球という空間に海洋を取り込んだ活動、いわゆる「空間革命」を演出したのは狩猟者であり、「鯨が彼らを大洋へと誘い出し、海岸から解放したのだ」「鯨というものが存在しなかったら、漁夫たちはいつまでも海岸にしがみついていたであろう」と指摘したが、長い鎖国から解放された明治期、日本人は小さな船を操り、数々の危険を冒し、大海原を越えて太平洋の島々へと進出した。その原動力(行為目的)となったのは、世界市場、とくにヨーロッパ市場で極めて高い価格で売買される「アホウドリ」の羽毛や鳥類のはく製であった。
 この時点で筆者は、研究のフレームワークをアホウドリなどの鳥類と設定し、日本人の太平洋への進出とその背景を解き明かす作業を進展させていた頃、アメリカ経済史を専攻するジミー・M・スカッグスが『グレイト グアノ ラッシュ』(1994年)という書物を刊行した。新大陸の農業が拡大するなか、良質な肥料であるグアノ(鳥糞)を求めてアメリカ人が太平洋や大西洋に進出し、それを機にアメリカの領土が拡大したと主張するものであった。
 これに対して日本人の場合は、まさにアホウドリなどの鳥類を求めて海洋進出したもので、スカッグスの「グアノ・ラッシュ」と対比して、筆者は「バード・ラッシュ」と定義した。事実、日本人の鳥を求めての太平洋への進出は、空間的にも一層拡大し、1897(明治30)年頃にはミッドウェー諸島を含む北西ハワイ諸島全域に及び、領土問題や密猟、漂着事件など様々な問題を引き起こした。アメリカ政府の強い警告にもかかわらず、これらの島々への日本人の侵入が続き、ついに1909年、当時のアメリカ大統領Th. ルーズベルトは鳥類捕獲禁止の「ハワイ諸島鳥類保護地域」を設定したが、日本人による鳥類の密猟は依然として続いた。
 また、これらの鳥を追った日本人の行動は、日清戦争でわが国が台湾を領有(1895年)し、外地という空間が創出されたことから、南シナ海など西太平洋にも拡大したが、その行為目的として、1905(明治38)年前後からアホウドリなどの鳥類だけではなく、さらにグアノ・リン鉱が加わる。その後、行為目的はグアノ・リン鉱に転換する。
 羽毛や鳥類のはく製などは極めて軽量で、輸送するには小さな船で十分であったが、重量のあるグアノ・リン鉱は、多くの労働者や重機、汽船が必要であり、行為の主体は山師的な人々、すなわち前期的な商業資本から独占資本へと移行する。また、鳥類と同じくグアノ・リン鉱の場合も、資源の枯渇の恐れから、例えばラサ島燐鉱会社が、ラサ島からスプラトリー(南沙)諸島など他の島々に資源を求めたようにさらなる島を求め続ける。加えてリン鉱が軍需資源として重要性を増すなか、国家による南洋群島アンガウル島などのリン鉱島への武力進出に至るのである。
 南洋進出の行為目的とその主体が、アホウドリなどの鳥類(山師的な人々・商業資本)から、グアノ・リン鉱(商業資本・独占資本)、リン鉱(国家による武力進出)へと展開したという分析スキームを確立し、実証が進展した2005年、九州大学で開催された人文地理学会大会で、それまでの研究をまとめて「アホウドリと日本人の南洋進出――新たな太平洋の歴史地理の構築に向けて」という特別発表を行った。また、史学雑誌の2007年度の歴史学会の「展望」で、私の論文の1つを「明治期における日本人による南洋進出の動機をアホウドリの捕獲欲求に求める、いわば『アホウドリ史観』というべき視点を打ち出しており興味深い」と論評していただいた。

 (…後略…)

著者プロフィール

平岡 昭利  (ヒラオカ アキトシ)  (

1949年 広島県呉市に生まれる
1978年 関西大学大学院文学研究科博士課程修了
現在 下関市立大学経済学部 教授
専門 人文地理学・島嶼地域研究
《主要著書》
『離島研究Ⅰ~Ⅳ』(編著 海青社,2003~2010年)
『離島に吹くあたらしい風』(編著 海青社,2009年)
『地図で読み解く 日本の地域変貌』(編著 海青社,2008年)

上記内容は本書刊行時のものです。