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トランスナショナルな「日系人」の教育・言語・文化 森本 豊富(編著) - 明石書店
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トランスナショナルな「日系人」の教育・言語・文化 (トランスナショナルナニッケイジンノキョウイクゲンゴブンカ) 過去から未来に向って (カコカラミライニムカッテ)

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発行:明石書店
A5判
264ページ
並製
定価 3,400円+税
ISBN
978-4-7503-3621-3   COPY
ISBN 13
9784750336213   COPY
ISBN 10h
4-7503-3621-1   COPY
ISBN 10
4750336211   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2012年6月
書店発売日
登録日
2012年6月25日
最終更新日
2012年7月3日
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紹介

子どもたちのトランスナショナルな移動と教育における問題点を戦前・戦中期ブラジルにおける日系移民子弟教育を中心に考察。さらに、ハワイ・米国・カナダの移民教育や在日ブラジル人児童・生徒教育、また、移民関係資料の保存と活用との視点も踏まえ、今後の日系人研究の可能性と方向性を示す。

目次

序章 トランスナショナルな「日系人」研究の意義と本書の内容構成
 1.本書刊行の経緯と意義
 2.本書のねらいと内容
 むすびにかえて

第1章 トランスナショナルな日系人――移住・帰還・再統合
 はじめに
 1.国内の枠組みを越えて
 2.トランスナショナルな決定的瞬間
 3.国際政治の中でのマイノリティとトランスナショナルな日系人
 おわりに

コラム1 「ローカル」のアイデンティティ・マーカーとしてのハワイ・クレオール語

第2章 カナダの日本語学校――日系教育の変遷と進化
 はじめに
 1.進化する日本語学校と児童の言語・文化習得――1900年代初頭~太平洋戦争勃発(1941年)
 2.進化する日本語学校と児童の言語・文化習得――戦後(1950年代~現在)
 おわりに

コラム2 帰還兵による「記憶の場」の形成と土地空間を巡る政治性――追悼と帰還の場を求めて

第3章 戦前期ブラジル日系移民子弟教育の先進的側面と問題点――サンパウロ市日系子弟の二言語・二文化教育に注目して
 はじめに
 1.先行研究の問題点
 2.サンパウロ市日系コミュニティの言語状況
 3.戦前期サンパウロ市日系教育機関における教育環境
 おわりに

コラム3 日系移民研究とユダヤ系移民研究からみえるもの――ロサンゼルスでの調査の可能性

第4章 ブラジル戦前期の日系移民子弟教育――アリアンサ移住地の教育を事例として
 はじめに
 1.永田稠の移住思想
 2.アリアンサ移住地建設の特徴
 3.アリアンサ移住地の日系子弟教育
 4.アリアンサ移住地における日系教育機関の変遷
 おわりに

コラム4 ふたつの学校に通う子どもたち――日本人移住地バストス(ブラジル・サンパウロ州)の場合

第5章 ブラジルにおける戦後の日本語学校と日本語教育
 はじめに
 1.戦後の日本語学校の復活と日学連・日文連の役割
 2.日系社会の多様化と日系人のバイリンガリズム
 3.「全伯日本語教師合同研修会」に見られる日本語教育の動向(1958~2008年)
 4.教育現場における言語能力
 おわりに――大学における日本語教育と研究及び今後の課題

コラム5 ブラジルを目指した女性

第6章 日本における言語教育環境の移民への影響――日系人帰国生家族の経験から
 はじめに
 1.日本での同化主義的教育に起因する困難
 2.学校でのいじめに見られる反移民感情
 3.長期的に見た親子関係における負の影響
 おわりに

コラム6 増加する中国人大学院留学生――問われる教育環境

第7章 日系ブラジル人と校舎のかかわり
 はじめに
 1.ブラジル人学校校舎
 2.ブラジル日系社会と校舎のかかわり
 おわりに

コラム7 人のつながりから育まれる地域社会――長野県上田市の日系ブラジル人を事例に

第8章 国境を越える在日ブラジル人の教育――ブラジル人保護者とブラジル人学校経営者の「戦術」に着目して
 はじめに
 1.研究の対象と方法
 2.デカセギとトランスナショナリズム
 3.「戦術」としての子どもの教育選択
 4.生き残りをかけるブラジル人学校経営者たち
 5.否定的に語られてきたデカセギたちの教育
 おわりに――ブラジル人の教育「戦術」からわれわれが学ぶこと

コラム8 日系ブラジル人の農業ビジネス

第9章 在日ブラジル人第二世代の教育――越境経験を活かす方途を求めて
 はじめに
 1.N校就学者が多く受講する日本語教室の事例
 2.越境経験を資源にするために
 3.「越境を日常とするための」教育
 4.越境する就学者へのブラジル人学校の対応――ブラジルとの繋がりの強化
 おわりに

コラム9 日本とフィリピンを越境する若者たちの言語習得

第10章 沖縄と「県系人」との紐帯――移民と郷里のトランスナショナルな繋がり
 はじめに
 1.先行研究――郷友会研究を中心に
 2.沖縄移民の郷里支援
 3.移民の郷里への寄付行為――浜比嘉島比嘉地区を中心に
 4.移民と郷里の紐帯、今とこれから
 結びにかえて

コラム10 まぼろしの「スバスタ日本人小学校」――フィリピン日系移民子弟教育史の一断片

第11章 ブラジル日本移民百周年記念行事にみる文化創造――サンパウロ市におけるグラフィッチと新世代日系ブラジル人の交わりから
 はじめに
 1.サンパウロ市のグラフィッチをめぐる状況
 2.ブラジル日本移民百周年記念行事とグラフィッチ
 3.百周年記念協会の思い――若者をとりこむための模索
 4.グラフィテイロの側の動き
 おわりに――ハイブリッド化する文化

第12章 ブラジル日本移民史料館所蔵レコードの非接触技術による読み取りとその意義
 はじめに
 1.円盤録音の歴史と物理的特性
 2.レコードの音情報読み取りと電子化手法
 おわりに

コラム11 日系ブラジル人とレコード

第13章 ブラジル日本移民史料館・ハイビジョン映像変換の意義とデジタル時代の映像保管について
 はじめに
 1.フィルムを取り巻く諸問題
 2.高画質の利点
 3.変換作業の考え方
 4.実際のフィルムからの変換作業の問題と映像修復
 5.マスター作成
 6.デジタル化に対応した組織作り
 おわりに

付録
 ハワイ・米国・カナダ・ブラジル日系教育史略年表
 参考地図

 あとがき
 編著者略歴
 執筆者略歴
 コラム執筆者略歴

前書きなど

あとがき(根川幸男)

 「トランスナショナル」ということばが人口に膾炙してから久しい。ドン・ナカニシ氏が最初にそのことばを耳にしたのは、本書の第1章にも記されているとおり1971年、当時ハーバード大学の大学院で政治学を学んでいたときだったという。ロバート・コヘインとジョセフ・ナイが担当する国際政治学の授業の内容が後に『トランスナショナルな関係と世界の政治』(Transnational Relations and World Politics)となって結実した。それからすでに40年以上の歳月が流れた今、政治学にとどまらず経済学、社会学、歴史学、文化人類学、文学などで頻繁に使用されるようになってきた。情報網・交通手段の発達により、国境を越えた人びとのトランスナショナルな関係性は深まり、広がり、高速化が進んでいる。
 「日系人」と本書でカギ括弧が付してあるのは、日系人の定義そのものが変化してきていることを示唆している。日系人とは誰なのか。五世、六世へと世代が重なるごとに、日本人を先祖にもつ者同士の婚姻よりも、そうでない組み合わせの方が多くなっている。今、海外の日系人団体では「日系人」という意識をもてば血統は問わないという立場をとるようにさえなっている。本書で扱っている「日系人」の多くはブラジルの日系人であるが、ブラジルではNikkeiであることに誇りをもっている人が多い。しかし、ブラジルの場合でも多くの沖縄出身者はNikkeiというカテゴリーではなくUchinanchu(沖縄出身者)、すなわち「日系人」よりも「県系人」としての意識の方が優先している。そういった多様性を包含する意味においても「日系人」なのである。
 本書の副題「過去から未来に向って」は、過去の出来事から学び未来に繋げてゆくという執筆者たちの姿勢をあらわす標語でもある。カナダ、ブラジルにおける日本語・日本文化教育の過去と現在、グラフィッチにみる若者文化、日本に住み南米に繋がる子どもたち、その子どもたちの学舎、過去の音源や映像を残し後世に伝える技術、それらすべてが過去から学び未来へと繋げていく地道な作業の一環なのである。
 諸般の事情により、国際会議に関わったすべての発表者の論考を載せることができなかった。しかし、ポスターセッションで発表した若手研究者たちの成果が、コラムという簡略な形式ではあるが掲載された。トランスナショナルな「日系人」を主に日本とブラジルとの関係性の中で教育、言語、文化の側面から時間軸をあてて考察することができたのは、人文科学、社会科学、自然科学を問わず学問の領域を横断して協力してくれた執筆者の方々の真摯な努力があったからこそである。中でも本プロジェクトの着想から本書の刊行に至るまで中心的な役割を果たされた根川氏に感謝したい。今後ますます重要になる移民研究の学際的な連携の輪が広がっていくことを願っている。最後になったが、国際交流基金、放送文化基金、早稲田大学の助成なしには本プロジェクトは実現しえなかった。関係者にあらためて謝意を表する。また、本書の刊行にあたっては、明石書店の大江道雅氏と清水聰氏には大変お世話になった。厚く御礼申しあげたい。

著者プロフィール

森本 豊富  (モリモト トヨトミ)  (編著

生年:1956年
所属:早稲田大学人間科学学術院・教授
主な業績:『移動する境界人――「移民」という生き方』(編著)現代史料出版、2009年。『越境する民と教育――異郷に育ち 地球で学ぶ』(共編著)アカデミア出版会、2007年。Morimoto, Toyotomi. 1997. Japanese Americans and Cultural Continuity: Maintaining Language and Heritage, New York: Garland Publishing.

根川 幸男  (ネガワ サチオ)  (編著

生年:1963年
所属:ブラジリア大学文学部・准教授
主な業績:『海を渡った日本の教育――戦前期ブラジルにおける日本的教育文化の越境と再創――』国際日本文化研究センター、2010年。“Tipologia e Caracterstica das Instituies Educacionais Nikkeis no Brasil do Perodo Pr-Guerra”,Anais do XX ENPULLCJ no Brasil vol. 20, 2010. 「ブラジルにおけるエスニック日系新伝統行事の創出」『移民研究年報』第14号、2008。

上記内容は本書刊行時のものです。