版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
うつと不安のマインドフルネス・セルフヘルプブック トーマス・マーラ(著) - 明石書店
.
【利用可】

書店員向け情報 HELP

書店注文情報

注文サイト:

在庫ステータス

在庫あり

取引情報

直接取引:なし

出版社への相談

店頭での販促・拡材・イベントのご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。

うつと不安のマインドフルネス・セルフヘルプブック (ウツトフアンノマインドフルネスセルフヘルプブック) 人生を積極的に生きるためのDBT(弁証法的行動療法)入門 (ジンセイヲセッキョクテキニイキルタメノディービーティーベンショウホウテキコウドウリョウホウニュウモン)
原書: Depressed and Anxious: The Dialectical Behavior Therapy Workbook for Overcoming Depression & Anxiety

このエントリーをはてなブックマークに追加
発行:明石書店
B5判
304ページ
並製
定価 2,800円+税
ISBN
978-4-7503-3436-3   COPY
ISBN 13
9784750334363   COPY
ISBN 10h
4-7503-3436-7   COPY
ISBN 10
4750334367   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0011  
0:一般 0:単行本 11:心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2011年8月
書店発売日
登録日
2011年8月22日
最終更新日
2012年4月11日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

不安障害とうつ病が混在する人に向けたDBT(弁証法的行動療法)によるセルフヘルプブック。感情を制御し、感情を恐れることなく向き合い、アイデンティティに対する自覚を高め、判断力を培い、観察力を研ぎ澄まし、人生に対する危機感を抑える援助をする。

目次

 謝辞

第1章 不安とうつが混ざり合って同時にある:DBTがどう有用か
 混ざり合い、同時にある
 不安とうつが混在する理由
 不安障害
 うつ病性障害
 不安とうつが混ざり合って同時にある状態
 薬の役割
 DBTとは何か?
 DBTが期待される理由
 逃避と回避の役割
 このワークブックの使い方

第2章 不安とうつの弁証法
 対立
 不安とうつが混ざり合って同時にある場合の弁証法
 弁証法的な場面
 対立と自分の感情
 対立は人生につきもの
 矛盾する感情
 妥協点を見出す

第3章 感情を抱く権利の否定
 感情をとらえる
 感情の妥当性の否定
 不安、うつ、そして妥当性の否定
 妥当性の否定を特定する
 罪悪感と自己非難
 課題に取り組む

第4章 私はどこかおかしいに違いない
 感情面の問題
 精神疾患に対する偏見
 混合性不安うつ症候群
 不安による変化への恐怖:取り込まれる恐怖
 うつによる変化への恐怖:見捨てられる恐怖
 感情と行動対アイデンティティ

第5章 意義を生み出す
 意義を生み出す理由
 あなたにとっての意義のあること
 「間違った」意義を生み出すことへの恐怖
 人生の意義を生み出す
 意義は本当に必要か?
 意義あるものとするうえでの障害
 実践し始める

第6章 マインドフルネススキル
 名前をつけたいという衝動
 マインドフルネスとは何か?
 マインドフルネスを高める戦略
 マインドフルネススキルのトレーニング
 実践記録をつける

第7章 感情制御スキル
 感情を受け止めて、前に進む
 感情理論
 感情を制御するスキルの前提
 現在の感情にマインドフルネスになる
 苦痛に満ちた感情にマインドフルネスになる
 一次的感情と二次的感情
 ポジティブな感情体験を増大させる
 マインドフルネスとポジティブな体験
 ネガティブな感情へのマインドフルネス
 反対の行動を起こす
 スキルを記憶する
 気分を良くするための6つのステップ

第8章 苦悩耐性スキル
 苦痛がやまない場合
 効果的な対処法
 マインドフルネスと苦悩耐性
 マインドフルネスによる不安とうつの軽減または受容
 自分を落ち着かせる
 気分を紛らわすスキル
 その瞬間を向上させる
 受容と批判的な思考

第9章 戦略的に行動するスキル
 切迫感と時機
 行動は、気分を反映したものか、戦略を反映したものか?
 感情への感受性と不信感
 行動の重視
 感情至上主義
 まとめ

 巻末付録 症状およびその対処法
 参考文献
 監訳者あとがき――とくに一般の読者の皆様方に

前書きなど

 監訳者あとがき――とくに一般の読者の皆様方に(永田利彦)

 うつと不安を同時に患っている方に、その泥沼のような毎日から、どのようにして抜け出るのか、その方法の詳細が本書には書かれています。
 最初の章には現在のアメリカでの精神科診断基準と、それに基づいた気分障害や不安障害の分類が書かれています。この診断と、それに基づいた医療に関して、混乱がますます加速しています。その混乱の原因を医学的な観点のみで説明することはできず、やはり、社会情勢に目を向けなければなりません。
 気分障害は、従来は躁うつ病やうつ病と呼ばれていました。専門家でなくては診断が困難でした。それが1980年にアメリカでDSM-IIIという現代に通じる診断基準が登場し、精神科医でなくても診断ができるようになったのです。その当時のアメリカの状況を思い浮かべてください。1960年以降のベトナム戦争の大きな出費のために1970年、1980年代には莫大な貿易赤字(経常赤字)と財政赤字のいわゆる「双子の赤字」に苦しめられます。産業構造は大きく変わり、若年者層の失業率が急激に上がりました。フォーディズムと言われる、自動車産業を初めとする工場労働者が中産階級をなし、老後の不安を感じず、借金をしてでも消費するアメリカ経済の大量生産・大量消費の産業・経済構造が崩れたのです。富を持つものがシリコンバレーで会社を作り、証券市場でその株を売ることで巨万の富を得、さらに投資を繰り返すという、貧富の差がとてつもなく大きくなる構造に変化したのです。ジョブセキュリティーという言葉があります。仕事を失う危険への対処のために、常に転職に向けて資格などを用意しておく努力が必要になったのです。家族の形態も大きく変わりました。というより、いつ職を失うのかだけでなく、いつ離婚になるのかもわからなくなってしまいました。
 不安で仕方なくなり、どうすることもできなくなって、人々がバタバタと倒れていったのです。本当に少数の人の問題であった、それまでの「本当の病気」の「うつ病」や「躁うつ病」が、誰でもが、いつ倒れるかも知れない、不安と抑うつ気分の混合した現代の「うつ病」、Depressionの登場です。もう他人事ではなくなったのです。
 そして、日本にとっては、対岸の火事と決めつけていた、この社会の急速な流動化が、バブル経済の破綻とともに1998年頃から日本を襲い始めました。産業構造の変化も急激すぎます。企業の存亡をかけた生産拠点の海外移転の結果、物作りの国であるとのプライドが危なくなってきているのを、ヒシヒシと肌に感じておられるでしょう。若者の失業率・非正規労働人口が急速に上昇し、急に悪い意味合いで欧米並みになりました。ひきこもりの問題が顕在化したのもその頃です。そして貧困率で表されるように、貧富の差も急に欧米並みになり、自分たちは全員、中流家庭だという意識が崩れています。家族の形態も大きく変わりました。それまで子どものために辛抱するのが東洋的でしたが、今はすぐに離婚になります。一方で、生涯独身の男性の存在、「弧族」が話題になるようになりました。子どもの養育環境は、虐待の問題に代表されるように、待ったなしの状況です。そして、日本でも、「うつ病」は誰しもがかかる可能性のある「心のかぜ」として一般化しました。このように急激に社会が変化し厳しさが増すなかで、職場・学校、そして家族の中でバタバタと人が倒れていく以上、当然です。

 (…中略…)

 世の中は不条理に満ちています。アメリカという国は、ヨーロッパの国で宗教上の理由やその他の種々の理由で新天地を求めた人たちの国です。アフリカ系アメリカ人にはもっとひどい歴史がありました。隣の朝鮮半島では、何度も他の国に攻められてきました。中国の民衆の歴史も苦難に満ちています。それに比べて日本は、そこまでの悲劇を経験したことがないのではないでしょうか(確かに虐げられた民族、人々はいらっしゃるのですが)。その意味合いで、いかにして耐えきれないような精神的な苦痛を受け止めるのか、そのような苦痛があっても、生き延びるのか、それにはこのような本を使って学習していくことが重要です。つい先日、アメリカの精神科医と自分たちの子どもの話をしました。我々はよく、若い人のことを新人類と言います。その価値観の落差についていけなくなったからです。で、そのアメリカの精神科医の高校生の息子さんは、「この10年で違う星に来たみたいだ」と言っているそうです。日本で若い人を新人類というのは中高年の愚痴ですが、アメリカでは高校生が「違う星」と言うのです。アメリカの青年たちが置かれた状況が推し量られます。そこまで、流動的なのです。
 この本を校正のために読んでくれた何人かが、「普通にしていることですね」との感想を言ってくれました。自己実現をすることが人生の至上命令のように思っていると、自分らしく、淡々と生きることが困難になり、バタバタと倒れる周りの人たちの1人になってしまいます。この本に書かれていることは、実は、精神的な苦痛にあって、気持ちにまだ余裕があるときには誰もが行っていることなのです。しかし、苦痛に押しつぶされてしまっていると、何が何だか分からなくなってしまいます。そこで、この本の助けや、この本の内容を理解する治療者の助けが必要となります。マインドフルネスは私たちの忘れてしまった、しかし、自分らしく生きていくうえで重要で、実は誰もが持っている術です。ここが最も重要なのですが、誤解を恐れずに単純に言いますと、認知行動療法では、「出来事」があったときに、その「出来事」を必要以上に悪く考えて、必要以上に心配するのを変えられます。ですが、職を失う、(突然の離婚で)家族を失う、さらに生涯孤独でいることは現実で、それに伴う激痛は真実です。不安と抑うつに襲われるのは自然で当然なことです。考え方を変えるだけでなく、不条理な「出来事」をどのようにして受け止めるかが重要なのです。マインドフルネスを実践し、心に変化が起こるまでには忍耐が必要ですが、あきらめないでやりましょう。

著者プロフィール

トーマス・マーラ  (マーラ,トーマス)  (

カリフォルニア州モントレーにある弁証法的行動療法センターの所長であり、モントレー精神医療施設およびモントレー精神保健ネットワークの創始者兼臨床責任者でもある。

永田 利彦  (ナガタ トシヒコ)  (監訳

1990年大阪市立大学大学院医学研究科修了。大阪市立大学医学部神経精神医学教室講師、ピッツバーグ大学精神科客員助教授(Visiting Assistant Professor of Psychiatry)を経て、1999年より大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学准教授。
主な著作に、Seedat, S. & Nagata, T.(2004). Cross-Cultural Aspects of Social Anxiety Disorder. In Social Anxiety Disorder - More Than Shyness; Psychopathology, Pathogenesis, and Management(Eds, Bandelow, B. and Stein, D. J.), Marcel Dekkker: New York. 、『パーソナリティ障害の認知療法』(分担執筆、岩崎学出出版社、2011)など多数。

坂本 律  (サカモト リツ)  (

米国サザン・コネチカット州立大学大学院心理学修士課程修了。心理測定や精神療法を中心に心理学、教育学の分野の翻訳、執筆に携わる。訳書に、『診断・対応のためのADHD評価スケール』(明石書店、2008)、『Conners3 日本語版マニュアル』(金子書房、2011)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。