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ロシアの歴史【下】 19世紀後半から現代まで
ロシア中学・高校歴史教科書
原書: History of Russia: Textbook for the 8th form/History of Russia: Textbook for the 9th form
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2011年7月
- 書店発売日
- 2011年7月3日
- 登録日
- 2011年8月1日
- 最終更新日
- 2012年4月11日
書評掲載情報
2014-03-30 |
朝日新聞
評者: 佐藤優(作家、元外務省主任分析官) |
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紹介
本書は、農奴制廃止前夜から、幾多の曲折を経てそれを達成し、次第に民衆の声が重きをなしていく19世紀後半から始まる。その流れのなかでついに20世紀人類に大きな影響を及ぼしたロシア革命と社会主義国家ソ連の成立とその崩壊までを描く。
目次
【ロシアの歴史 19世紀 8年生】
第2章 19世紀後半のロシア
19.農奴制廃止の前夜
20.1861年の農奴解放
21-22.1860~1870年代の自由主義的改革
23.農奴制廃止後の社会・経済の発展
24.社会運動 自由主義者と保守主義者
25.革命的ナロードニキ運動の発生とその思想
26.1860年代後半~1880年代初期の革命的ナロードニキの運動
27.アレクサンドル2世の外交政策
28.ロシア-トルコ(露土)戦争(1877~1878年)
29-30.アレクサンドル3世の国内政策
31.アレクサンドル3世治世時代の経済発展
32-33.主要な社会層の状態
34.1880~1890年代の社会運動
35.アレクサンドル3世の外交政策
36.教育と科学
37.文学及び美術
38.建築、音楽、演劇、工芸
39.生活様式――都市と農村の新しい生活の特徴
まとめ
年表
【ロシアの歴史 20世紀から21世紀初頭 9年生】
第1章 19世紀と20世紀の境期におけるロシア
1.19世紀末~20世紀初頭、国家とロシア社会
2.ロシアの経済発展
3.1894~1904年におけるロシアの社会・政治発展
4.対外政策 ロ日戦争、1904~1905年
5.第1次ロシア革命 政治体制の改革
6.経済改革
7.1907~1914年 政治活動
8.銀の時代の精神的活動
9.第1次世界大戦におけるロシア
まとめ
第2章 大ロシア革命 1917~1921年
10.君主制の転覆
11.ロシア、1917年春から夏にかけて
12.10月革命
13.ソヴィエト国家体制の形成
14.内戦の始まり
15.内戦の戦線にて
16.赤色と白色の経済政策
17.1920年代初めの経済と政治危機
まとめ
第3章 新たな社会の建設へ向かうソ連
18.新経済政策(ネップ)への移行
19.ソヴィエト社会主義共和国連邦の形成
20.1920年代の国際情勢と対外政策
21.1920年代の政治の発展
22.1920年代のソ連の精神的活動
23.社会主義的工業化
24.農業の集団化
25.1930年代のソ連の政治システム
26.1930年代のソ連の精神的活動
27.1930年代ソ連の対外政策
まとめ
第4章 大祖国戦争(1941~1945年)
28.大祖国戦争前夜のソ連
29.大祖国戦争の始まり
30.1942年ドイツ軍の攻撃と転機の前提条件
31.大祖国戦争における銃後
32.大祖国戦争の根本的転機
33.ドイツ・ファシズムとの闘いにおけるソ連の諸民族
34.第2次世界大戦の最終段階におけるソ連
第5章 1945~1953年のソ連
35 経済復興
36.政治的発展
37.イデオロギーと文化
38.外交政策
第6章 1953~1960年代中期のソ連
39.政治システムの変化
40.ソ連の経済(1953~1964年)
41.精神活動における「雪どけ」
42.平和共存政策――その成功と矛盾
第7章 1960年代中期~1980年代中期のソ連583
43.政治体制の保守化
44.「発達した社会主義」経済
45.1960年代中期~1980年代中期の社会生活
46.緊張緩和政策――その希望と結果
第8章 ソ連におけるペレストロイカ(1985~1991年)
47.政治システムの改革――その目的、段階、結果
48.1985~1991年の経済改革
49.グラスノスチ政策 プラス面とマイナス面
50.新思考の弁証法
第9章 20世紀末~21世紀初頭のロシア
51.市場経済へ移行するロシア経済
52.政治活動――民主主義社会と法治国家へ向かうロシア
53.ロシアの精神的活動
54.新生ロシア連邦の建設
55.地政学的状況とロシアの外交政策
56.21世紀直前のロシア
年表
前書きなど
まえがき(上巻より)
本書はロシアで出版された4巻からなる歴史教科書『ロシア史――古代から16世紀末まで 6年生』、『ロシア史――16世紀末から18世紀まで 7年生』、『ロシア史――19世紀 8年生』、『ロシア史――20世紀から21世紀初頭 9年生』の日本語訳である。
ロシアにおける学校教育制度は日本の教育制度と異なり11年制をとっており、初等教育課程(1~4年生)、基本教育課程(5~9年生)、中等教育課程(10~11年生)となっている。2007年までは初等教育課程及び基本教育課程が義務教育と位置づけられていたが、現在は全教育課程が義務教育になっている。
歴史の授業は、5年生から「古代の世界史」の科目で始まり、6年生からは「ロシア史」を、それと並行して「中世史」(6年生)、「近代史」(7~8年生)、「現代史と法」(9年生)を学ぶ。10年~11年生は、より理論的なレベルで歴史の再学習が実施され、「古代から19世紀末までのロシア史」及び「ロシア史、20世紀から21世紀初頭」と同時に「世界史――古代から19世紀末」及び「諸外国の現代史」を学ぶ。これら歴史科目は必修科目となっている。
社会主義政権時代、ソヴィエト連邦のすべての学校が、ひとつの歴史教科書シリーズを用いていた(他科目も同様)。ソ連邦崩壊後、ロシアの教育状況にも変化の兆しが現れ、様々な教科書の出版が許可された(ただし教育現場においては、ロシア教育省による教科書推薦リストのなかから採用)。ただ、圧倒的多数の学校は、以前同様「教育(Просвещение)出版社」(1930年に国営企業として設立され、2005年から株式会社となる)の教科書を用いている。
本書は、同出版社から出版されたロシア史の教科書を翻訳原本として採用した。また、基本教育課程の教科書は、ロシアの歴史、近隣諸国及びその他の諸外国との相互関係の歴史、世界文明史におけるロシアの位置等に関する現代ロシア人の基本的世界観、思想、価値観の形成の基礎となっているため、その教科書を翻訳に用いた。
ソヴィエト政権以前には、ロシア史は明らかにイデオロギーの殻に包まれ伝えられてきた。そして、儀式や神に選ばれたロシア民族の思想、専制政治の思想、ロシア正教の偉大な役割の思想が、それらの基になっていた。したがって、そこでの歴史は、大公・皇帝や諸侯、ロシア正教の高位聖職者の伝記や行伝に帰着していた。
ソ連時代の世界史やロシア史の教育も、イデオロギー化されたものであった。社会発展でのすべての事象が、階級闘争と物質的・経済的要因の優位性を盛り込むマルクス・レーニン主義のプリズムを通して論じられてきた。
ポスト・ソヴィエト期に入り、歴史プロセスの全体的流れと個々の出来事や史実について、より客観的で多様な解釈と評価を行う余地が生まれ、歴史観に対するイデオロギー的抑圧は著しく緩和されている。現代のロシアの歴史家たちは、ロシアの国家と社会の進化を、より客観的に、多様に捉えようとし、全世界的な歴史の歩みの中でより有機的に書き加えようと試みている。
過去数年間に、個々の歴史的出来事やある時代(例えば、キエフ・ルーシ形成のノルマン学説、モンゴルのくびき、イワン雷帝の時代、ピョートル大帝の改革、十月革命、レーニン及びスターリンの役割など)について、非常に独創的な数多くの研究が生まれた。それに伴って、学術界のみならず、それらの問題やその他の諸問題を巡って社会的に熱烈な議論が行われている。
このような変化は、当然ながら中等教育における歴史教育分野にも影響を及ぼすことになった。ロシア史の教育課程は、脱イデオロギー化、歴史プロセスをより客観的に分析するという観点から見直されてきた。さらに、教科書の執筆者たちは、10~11年に満たない生徒たちの年齢や教育水準を考慮して、ロシアの歴史の歩みやロシアの諸民族の運命、ロシア史における最重要の出来事やもっとも代表的な人物に関する客観的で一貫した理解を生徒たちに促すことに主要な注意をはらい、極端な評価や概念は使用していない。慣習や風習の歴史、教育や科学技術、文化・芸術、宗教の歴史に関連する資料が著しく増大したことは、肯定的評価に値する。
読者にとって、いくつかの史実に関する解釈や評価が、難解で、あるいは単純化されているように感じるかもしれない。しかし、読者は、本書の次の主要な特徴を考慮に入れる必要がある。第一に、本書は専門家向けの学術研究書ではなく、ロシア史を初めて学習する生徒向けの教科書である。そのため、叙述方法も、史実や人物の解釈と評価も、特定の年齢層(12~16歳)向けに書かれている。第二に、他のどの国の教科書でもそうであるように、国家の視点から歴史が描かれている。そうすることにより、ロシア人のメンタリティや世界観、歴史や世界を、より明瞭な理解へ繋げることを意図している。
読者がロシア人の解説によるロシア史を学ぶことにより、近くて遠い隣国を一層理解し、何よりも日本とロシアの相互理解の深化に役立つことを心から期待する。
最後に、翻訳諸氏の尽力なくしては、本訳書の上梓は実現されなかったことを銘記し、心から感謝申し上げたい。同時に、本書の刊行を決意された明石書店の石井昭男社長、出版過程で励ましと助力をいただいた佐藤和久氏に深い謝意を表したい。
上記内容は本書刊行時のものです。