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自閉症のある人のアニマルセラピー メロピー・パブリデス(著) - 明石書店
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自閉症のある人のアニマルセラピー (ジヘイショウノアルヒトノアニマルセラピー) 生活を豊かにする動物たちのちから (セイカツヲユタカニスルドウブツタチノチカラ)
原書: Animal-assisted Interventions for Individuals with Autism

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発行:明石書店
四六判
356ページ
並製
定価 2,500円+税
ISBN
978-4-7503-3411-0   COPY
ISBN 13
9784750334110   COPY
ISBN 10h
4-7503-3411-1   COPY
ISBN 10
4750334111   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2011年6月
書店発売日
登録日
2011年5月31日
最終更新日
2012年2月20日
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紹介

自閉症の人にアニマルセラピーはどのような効果をもたらすのか。自閉症の子をもつ母であり、ペットトレーナーでもある著者が、犬、馬、ラマ、イルカなどのセラピーを実践している団体や個人を取材。多数の事例を紹介しつつ、アニマルセラピーの世界に迫る。

目次

 謝辞
 日本語版への序
 序文

第1章 イントロダクション
 自閉症スペクトラム障害
 動物を使った介入の概観
 動物を使った介入の種類

第2章 介助犬
 自閉症介助犬の役割
 介助犬を組み入れるにあたってのよい点、悪い点
 介助犬の入手
 介助犬提供者候補に聞く質問
 介助犬の生涯
 介助犬の引退
 公共の場に出入りすることへの課題
 自閉症のあるクライエントへの犬の提供
 紹介 ナショナル・サービス・ドッグス
 事例 ブローディー・モリンの場合
 事例 ローラ・カーティスの場合
 紹介 オール・パーポス・カニーネ
 事例 カイル・ワイスの場合

第3章 AAT(動物介在療法)とAAA(動物介在活動)
 AATの歴史
 AATの効果
 自閉症への特性
 AATの最良の実践
 AATサービスの評価
 紹介 モナ・サムス
 紹介 ハンナ・モア・スクール
 事例 カイレイ・マコーネルの場合

第4章 コンパニオンアニマル
 ペットを迎えると決めるとき
 ペットの選択
 トレーナーの選択
 トレーナー候補への質問
 自閉症の特性とペット飼育
 自閉症の人とのトレーニング作業を助ける
 成果のデータ
 事例 ロビン・パールの場合
 事例 ウィン・キルチネルの場合
 事例 ジョナ・スローンの場合
 事例 カイル・エムシュの場合

第5章 治療的乗馬
 定義と歴史
 治療的乗馬の過程と効果
 最良の実践
 自閉症への特性
 サービスにアクセスする
 治療的乗馬サービスへの問い合わせ事項
 紹介 ローズ・オブ・シャロン
 紹介 スペシャル・イクウエストリアンズ
 紹介 サラ・グリフィス

第6章 イルカセラピー(イルカ療法)
 イルカについて
 イルカ介在療法の歴史
 イルカ療法の方法
 批判と懸念
 DATの方法
 DATサービス提供者に聞く質問
 自閉症児をDATプログラムへ受け入れること
 紹介 アイランド・ドルフィン・ケア
 事例 ジョーダン・グリーンフィールド
 紹介 イーライ・スミスとグレッチェン・トマソン

第7章 おわりに
 モデルとなるプログラム
 QOL(生活の質)について

 付録
 参考文献

 監訳者あとがき

前書きなど

 監訳者あとがき(古荘純一)

 本書は、Animal-assisted Interventions for Individuals with Autismの全訳である。
 私はこれまで、広汎性発達障害の人の親御さんが、子育ての苦労や悩み、喜びなどをつづった本を何冊か読んできた。医師として、教育者として、親御さんの悲喜こもごものエピソードはたいへんに参考になる。じつは本書の翻訳の話をいただいたとき、著者のメロピーさんが自閉症のあるお子さんの親御さんだと知って、これもまた、体験談なのだろうと考えていた。
 ところが、翻訳を始めてみると、すぐに違うことがわかった。実際、著者の体験もさまざまに織り交ぜられてはいるのだが、それだけにとどまらず、動物介在療法、いわゆるアニマルセラピーを実践している何人もの当事者やその家族、そしてセラピーを提供している人たちにも話を聞いて、アニマルセラピーが子どもや家族にどんな影響を与えているか、生活がどう変わったのかを丁寧に掬いあげ、まとめているという点が本書の1つの大きな特徴である。
 しかも、著者はこれまで発表されたアニマルセラピーの研究書や論文にも目を通し、実際は研究が追い付いていない現実、つまりアニマルセラピーの効果についてはまだはっきりとした学問的根拠(エビデンス)がないことをきちんと押さえている。わかっていないことはわかっていないと明白に述べられているし、今後の研究課題についての提起もある。単なる体験談ではなく、学術的なニュアンスを含んだ、読み応えのある本なのだ。自閉症のある子どもをもつご家族だけでなく、支援者、研究者、それからアニマルセラピー全般に関心のある方にもたいへんに参考になる本だと言えるだろう。
 アニマルセラピーについては、欧米に比べて、日本ではまだまだ認知度は低いし、研究も進んでいない。親御さんや子どもたちを支援するNPOなどから、犬や馬やイルカをつかったセラピーをやってみたいという声があがっても、医師や心理学者は、「感染症や事故などの不安がある」「エビデンスがないことは勧められない」「期待して始めてみたものの、たいして効果がなかったときの落胆を考えると踏み切れない」「効果がはっきりしないのに、動物の世話や費用など負担が重い」といった、ネガティブな反応を返すことがまだまだ少なくない。私も含めて、根拠がはっきり出ていないものに関しては、どうしても躊躇してしまうところがあるのだ。もしかしたら、個人的には、「やってみてもいいかもしれない」と心では思っていても、根拠がないという意見にあらがうのはなかなか難しく、それを押し切ってまで実践を進めることが少ないために、研究も積み重ならず、エビデンスも明らかにならないという悪循環に陥っていると言えるかもしれない。
 著者はそうした現実も十分にわかっていながら、それでもなお、もし条件が合うのであれば、やってみてはどうかと読者に勧めている。著者が注目しているのは、アニマルセラピーによって生活の質がどの程度向上したのかということ。子どもも親もハッピーになればそれだけでも行う価値があるのではないかというのが、著者の考えだ。もちろん、コストや時間的な負担を考えて、それでも行う価値があるのかどうかについては検討しなければならないとは付け加えているが、私もそれは確かにそうだと思う。たとえば、アニマルセラピーを実施したからといって、広汎性発達障害の中核障害である、対人性の障害やコミュニケーションの障害は簡単にはよくなるとは思えないし、評価尺度を用いても変化が出るとは考えにくい。
 私自身、自閉症のある人とその家族を対象としたドルフィンキャンプ(家族同伴の宿泊を伴ったイルカセラピー)を実施してきた経験から、親子ともども幸福になるという効果はあるのではないかと思っている。たとえば、表情が明るくなった、挨拶ができた、思い出をお絵かきで説明した、など。1人ひとり内容は異なるが、自閉症のある子どものご家族でイルカのセラピーを経験した方たちの話を聞くと、とてもよかったとおっしゃる方が多い。
 しかし、ドルフィンキャンプでのエビデンスのある評価はできなかった。この時の評価はすべて子どもを対象としたものであり、親御さん自身の評価は行わなかった。私たちの行ったドルフィンキャンプでは、親御さんが動物とかかわる子どもの様子を見ることで、子どもをポジティブに見られるようになったことが大きいと思う。親子で楽しむことができ、その結果、生活の質が改善されるのであれば、支援の1つの方法としてアニマルセラピーを考えてみてもよいのではないかと私は思っている。
 ただし、どの子にも勧められるかというとそうではない。たとえば、イルカなどの動物に関してのこだわりが強く、イルカ自体に強い関心が向けられた場合には動物の福祉については心配な面がある。ただ、私の見聞きした範囲ではあるが、これまで大きな問題とはなっていないようだ。イルカ自身がいやなときには自由に逃げられる環境が用意されているからだろう。逆に恐怖感があるものを無理強いするのは厳に避けるべきである。今後は、どのような子にどんな動物をつかうのか、動物の福祉と併せて検討していく必要があるだろう。
 このような理由から、本書は、自閉症のある子の家族はもちろんのこと、サポートにかかわる人、そして一般向けの本としても非常に読み応えのある良書であると確信している。
 最後に、この本は横山先生の並々ならぬ情熱と赤井さん、石坂さんの尽力、そして明石書店の皆さま、とくに編集部の大野祐子さんのサポートがあったからこそ完成したものである。この場を借りてお礼を申し上げたい。

   2011年4月

著者プロフィール

メロピー・パブリデス  (パブリデス,メロピー)  (

ジョン・ホプキンス大学で、自閉症と発達障害の子どもに対する特別支援教育を学び、修士を取得。家庭犬トレーナーの資格をもち、治療的乗馬も教える。現在、主に成人の自閉症を対象に活動を続けている。アメリカ・ヴァージニア州在住。

上記内容は本書刊行時のものです。