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消滅の危機にあるハワイ語の復権をめざして 松原 好次(編著) - 明石書店
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消滅の危機にあるハワイ語の復権をめざして (ショウメツノキキニアルハワイゴノフッケンヲメザシテ) 先住民族による言語と文化の再活性化運動 (センジュウミンゾクニヨルゲンゴトブンカノサイカッセイカウンドウ)

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発行:明石書店
A5判
272ページ
上製
定価 5,000円+税
ISBN
978-4-7503-3151-5   COPY
ISBN 13
9784750331515   COPY
ISBN 10h
4-7503-3151-1   COPY
ISBN 10
4750331511   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年3月
書店発売日
登録日
2010年4月7日
最終更新日
2010年4月7日
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紹介

アメリカ合衆国の州となったハワイでは、観光地・保養地として一大発展を遂げる一方で、先住民族の言語や文化は衰退の一途をたどっていた。その失われつつあったハワイ語を再活性化し、文化の復権をめざす運動を紹介する。

目次


 プロローグ

第I部 ハワイ語の衰退、そして復権の兆し

第1章 なぜハワイ語は衰退したのか(松原好次)
 1.先住民族人口の減少
 2.ハワイ王朝の言語政策
 3.アメリカ合衆国の言語政策

第2章 どのようにハワイ語の復権が図られたのか(松原好次)
 1.ハワイアン・ルネッサンスの影響
 2.マーオリの影響
 3.プーナナ・レオの誕生とクラ・カイアプニへの発展

第II部 学校教育におけるハワイ語再活性化運動の進展

第3章 ハワイ語イマージョン教育の試み――ワイアウ小学校のクラ・カイアプニ(松原好次)
 1.クラ・カイアプニ誕生の経緯
 2.ハワイ語イマージョン・プログラムの実践状況
 3.クラ・カイアプニが抱える問題点
 4.ハワイ語再活性化運動を取り囲む状況
  4.1 議会による承認
  4.2 教育委員会・教育局による支え
  4.3 英語公用語化運動の影響

第4章 イマージョン一貫教育(K-12)の実践――クラ・アーヌエヌエの場合(松原好次)
 1.クラ・アーヌエヌエ誕生の経緯
 2.教育方針およびカリキュラム
 3.クラ・アーヌエヌエが抱える問題点

第5章 IT導入による先住民族言語再生の試み――ケアウカハ小学校のクラ・カイアプニ(松原好次)
 1.ケアウカハ小学校におけるIT導入の経緯
 2.ITを活用した授業の実践

第6章 ハワイ語イマージョン教育の現況――ナーヴァヒー校のケース(富田公子)
 1.はじめに
 2.「クム・ホヌア・マウリ・オラ(Kumu Honua Mauli Ola)」ハワイ先住民教育哲学
 3.カリキュラム
 4.ナーヴァヒー校の特色
 5.ハワイ語イマージョン教育に対する懸念
 6.ナーヴァヒー校の成功の鍵
 7.おわりに

第7章 イマージョン教育の成果と課題――ナーヴァヒー校卒業生の追跡調査(松原好次)
 1.ナーヴァヒー校誕生の経緯
 2.卒業生に対する追跡調査
  2.1 第1期生の現況
  2.2 第2期生の現況
  2.3 第3期生の現況
 3.ナーヴァヒー校が抱える課題
  3.1 学校教育重視派と家庭・コミュニティ活動重視派の対立
  3.2 ハワイ語使用環境の拡充

第8章 チャータースクール化によるハワイ語・ハワイ文化の復権――カヌ校の場合(松原好次)
 1.カヌ校誕生の経緯
 2.チャータースクールとしての特徴
 3.カヌ校が抱える問題点

第9章 “ハワイ人自身のために”――再度、ハワイ語イマージョン教育の利点を訴える(ウィリアム・H・ウィルソン&カウアノエ・カマナー)
 1.はじめに
 2.文化的つながりの確保
 3.固有の民族としてのアイデンティティ
 4.学業面での利点
 5.標準英語修得上の利点
 6.第3言語学習上の利点
 7.禁止令撤廃の更にその先へ向けて

第III部 学校の外に広がるハワイ語再活性化の波

第10章 ハワイ語復権に果たすハーラウ・フラの役割(塩谷亨)
 1.はじめに――今回行った二つの聞き取り調査について
 2.クムフラから見たフラ道場とハワイ語
  2.1 フラ道場におけるハワイ語の使用
  2.2 フラ道場で課されるリサーチ等
  2.3 フラ道場で伝授されるハワイ語の知識
  2.4 ハワイ語とフラ道場の関係
 3.ハワイ語イマージョンスクール教師から見たフラ道場とハワイ語
  3.1 フラ道場におけるハワイ語の使用
  3.2 フラ道場で学ぶハワイ語
  3.3 ハワイ語とフラの相乗効果
  3.4 フラ道場はどんな場所であり得るか
  3.5 フラ道場以外でハワイ語知識を高めることができる機会
 4.まとめ

第11章 ハワイ性の表象としてのフラ――ハワイ語再活性化運動との関わりについて(古川敏明)
 1.はじめに
  1.1 目的
  1.2 先行研究
 2.先住ハワイアンの伝統舞踊フラ
 3.ハワイ語の衰退と再活性化運動
  3.1 印刷文化の導入
  3.2 ハワイ語学校数と生徒数の減少
  3.3 ハワイ語再活性化運動の現状
 4.ハワイ性の表象としてのフラとハワイ語再活性化運動との関わり
  4.1 フラ再活性化が及ぼす影響の二面性
  4.2 フラ再活性化は言語再活性化より成功しているのか
 5.おわりに

第12章 ハワイアン音楽と言語イデオロギー(古川敏明・古賀まみ奈)
 1.はじめに
 2.ナー・ホークー賞
 3.グラミー賞ハワイアン部門
 4.ハワイ語とハワイアン音楽
 5.結び

第13章 ハワイ語再活性化におけるメディアの役割(古川敏明)
 1.はじめに
 2.学校教育以外の領域におけるハワイ語使用
  2.1 公共性の高いメディア
  2.2 私的な領域におけるメディアとハワイ語使用
 3.問題点
 4.他言語の事例からメディア利用における改善点を探る
 5.結論

第14章 社会の様々な領域に広がるハワイ語使用(古川敏明)
 1.はじめに
 2.公用語としてのハワイ語
 3.広がるハワイ語使用
  3.1 日常的に使われているハワイ語
  3.2 名前と名づけ
  3.3 詠唱およびスピーチ
  3.4 教会
  3.5 演劇
  3.6 観光業
 4.結び

 エピローグ

 あとがき
 引用文献

前書きなど

 プロローグ

(…前略…)

 本書は以下に示すとおり3部構成をとっている。
 第1部は、ハワイ語衰退の歴史を言語政策の観点から跡づけたのち(第1章)、なぜ1970年代初めにハワイ語復権の動きが生じたのかを考察する(第2章)。その際、ハワイにおける動きがニュージーランドのマーオリの動きと連動していたことを指摘する。
 第2部では、ハワイ語再活性化運動の核ともいうべき学校教育における取り組みを紹介する。まず、プーナナ・レオ卒園生の受け皿として1987年オアフ島パールシティのワイアウ小学校内に開設されたクラ・カイアプニ(ハワイ語イマージョン・プログラム)の教育実践を報告する(第3章)。次に第4章で、K-12(幼稚園から高校3年まで)のイマージョン一貫教育校としてホノルルに開設されたアーヌエヌエ校における取り組みを追う。更に、ITの導入が先住民族言語再生に果たした役割を、ハワイ島ヒロのケアウカハ小学校における実践で確認する(第5章)。第6章では、ヒロ近郊のナーヴァヒー校におけるハワイ語イマージョン教育について現況を報告する。また、同校卒業生たちが親となり、子どもをハワイ語で育て始めるという「ハワイ語母語化」の現象について追跡調査を基に報告する(第7章)。第8章では、ハワイ州教育局のプログラムであるクラ・カイアプニのくびきを脱し、チャータースクールとしてハワイ語・ハワイ文化の復権を探るハワイ島ワイメアのカヌ校に焦点を当てる。特に、教育言語として英語が採用された背景と意義を追究する。学校教育における先住民族言語・文化の復権運動が直面している大きな転換の様子を紹介したい。第2部の終章・第9章では、ハワイ大学ヒロ校ウィルソン教授とナーヴァヒー校カマナー校長の共著論文(翻訳)を所収する。「“ハワイ人自身のために”――再度、ハワイ語イマージョン教育の利点を訴える」と題されたこの論文は、2000年以降、ハワイ語イマージョン教育に向けられるようになった疑義への反論として書かれたものである。
 第3部は、学校の外に広がるハワイ語再活性化の動きを追う。まず、ハワイ語の保持・復権にハーラウ・フラ(フラ道場)が果たした役割の大きさについて、フィールドワークに基づいた報告をする(第10章)。「ハワイ語の表象としてのフラ」をハワイ語再活性化運動との関わりで論じたのち(第11章)、第12章では、「ハワイアン音楽と言語イデオロギー」について問いを投げかける。次に第13章では、メディアにおけるハワイ語使用に注目し、従来のマスメディアだけでなく、インターネットに代表されるITを活用した最新のメディアが少数言語の再活性化に寄与している実態を紹介する。第3部の最終章は、ハワイ社会に広がるハワイ語使用の実態をフィールドワークに基づいて報告する(第14章)。英語が圧倒的な優位を保つハワイ社会において、先住民族言語再活性化の進展は必ずしも順風満帆とは言えない。しかし、40年前、ネイティブ・ハワイアンの心に点った自尊心という灯火が静かに、しかし消えることなく燃え続けている様子を紹介したい。

(…中略…)

 本書のねらいはハワイ先住民族言語の再活性化運動について報告することであるが、ハワイの現況に触れることによって、読者の皆さまが少数言語や危機言語の置かれている窮状、あるいは「単一言語支配」や「英語一極集中」のもたらす弊害に関心を抱いてくだされば望外の喜びである。冒頭で述べた『英語はどんな言語か』の著者・中村氏は、別の論考(中村 2003)のなかで、「英語という“大言語”による一元化が持つ非倫理性・不平等性・非相互性を直視しない精神風土」が、日本の社会における“小言語”を不可視の状態に貶めていると警告している。この警告の意味するところを読者の皆さまと共有することができれば、編著者にとってこの上ない喜びである。

著者プロフィール

松原 好次  (マツバラ コウジ)  (編著

電気通信大学総合文化講座教授。専門は言語社会学、特に、少数民族言語(先住民族の言語
や移民の言語)の衰退・再活性化について研究。著書にIndigenous Languages Revitalized ?(春風社)、共編著書に『ハワイ研究への招待――フィールドワークから見える新しいハワイ像』(関西学院大学出版会)、訳書に『大地にしがみつけ――ハワイ先住民女性の訴え』
(春風社)他がある。

上記内容は本書刊行時のものです。