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ダニーディン 子どもの健康と発達に関する長期追跡研究
ニュージーランドの1000人・20年にわたる調査から
原書: From Child to Adult : The Dunedin Multidisciplinary Health and Development Study
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2010年2月
- 書店発売日
- 2010年2月18日
- 登録日
- 2010年3月25日
- 最終更新日
- 2010年3月25日
紹介
1000人を対象に、誕生直後から成人までを様々な角度から長期的に調査した貴重な研究結果を紹介。身体面・精神面・家庭環境・飲酒喫煙など、普通ではそこまで調査されない要素を各々、また総合的に分析しており、他では見られない驚くべき発見もある。
目次
日本語版への序文
序文
謝辞
著者一覧
第1章 ダニーディン健康と発達に関する学際研究(フィル・A・シルバ、ミシェル・マッキャン)
第2章 人生初期の健康と発達(フィル・A・シルバ)
第3章 知能の連続性と変化(アバシャロン・カスピ、アラン・R・ハークネス、テリー・E・モフィット、フィル・A・シルバ)
第4章 喘息(M・R・シアーズ、E・M・フラナリー、G・P・ハービソン、M・D・ホールドアウェイ)
第5章 血圧(イアン・セント・ジョージ、シェイラ・ウィリアムス)
第6章 子どものけが(ジャネット・E・ガフォード、フィル・A・シルバ、ジョン・D・ラングレー)
第7章 子ども期の中耳炎:滲出性の中耳炎について(イアン・スチュアート、フィル・A・シルバ)
第8章 歯の健康(R・ハーヴェイ・ブラウン)
第9章 メンタルヘルス(ロブ・マッギー、マイケル・フィーハン、シェイラ・ウィリアムス)
第10章 非行:反社会的行動の自然な経過(テリー・E・モフィット、ホナ・リー・ハーリントン)
第11章 物質使用:タバコ、アルコール、その他の薬物使用の進行(ワレン・R・スタントン)
第12章 成長に伴う飲酒経験の変化:1980年代のダニーディンの子どもの調査から(サリー・キャスウェル)
第13章 性行動(ニゲール・ディクソン)
第14章 子どもの自己評価:肯定的な自己像について(シェイラ・ウィリアムス、ロブ・マッギー)
第15章 家族と養育(ジャン・プライアー、ライアン・ウッドワード)
第16章 ダニーディン縦断研究の将来(フィル・A・シルバ)
訳者あとがき
刊行物一覧
参考文献
索引
前書きなど
日本語版への序文
(…前略…)
本書は、対象者が21歳時点の調査(1993年から1994年にかけて実施)の直後である1996年に初版が刊行されました。それ以降、私たちの研究ユニットでは、1998年から1999年にかけて26歳時点の調査を、2004年から2005年にかけて32歳時点の調査を実施してきました。いずれの調査に関しても、サンプルが脱落することもほとんどなく実施することができています。
刊行物は、いうなれば研究の活力源です。ダニーディン健康と発達に関する学際研究では刊行物を豊富に生産し続け、2009年現在では論文と報告書を合わせて1000本を数えるまでになりました。この本数は本書が出版された時点の倍以上であり、近年では遺伝子に関する研究など扱うテーマの幅もさらに大きく広がってきています。
私たちの研究に関する情報を伝えるという意味で最も大きく進歩したのは、ウェブサイトを改良し、それを利用することで以前よりもコミュニケーションを取りやすくしたことでしょう。ウェブサイトは現在更新中ですが利用は可能です。研究に参加している対象者をはじめ、同僚、研究者、学生、教育機関、助成団体、その他の関係機関、政府機関、メディア、一般の人々がそれぞれの立場から私たちとコミュニケーションを図れるように設計されています。ウェブサイトのなかで最も重要な部分は刊行物リストです。このリストをご覧いただけば、著者やキーワードで検索し、目的とする刊行物の出典とアブストラクトを見ることができます。また、研究の途中経過や最新の情報、今後の計画についても知ることができます。たとえば、38歳時点の調査は2010年中旬に開始する予定ですが、近いうちに具体的なアセスメントの内容がウェブサイト上に掲載される予定です。ウェブサイトの使い勝手は格段に進歩しており、www.otago.dmhdru.otago.ac.nzにアクセス頂ければだれでも私たちの研究について知ることができます。
ダニーディン健康と発達に関する学際研究は将来どこに向かっていくのでしょうか。この研究は、おそらくこれまでで最も生産的で、脱落者が少なく、長期に継続している研究であるといえるでしょう。また、調査で使用するアセスメントには、回を重ねるごとに解析のために必要不可欠な情報が追加されていきます。もともとの豊富なデータセットにこうして情報を加えていく作業を通じて、個人の健康、行動、発達に関するあらゆる側面の特徴と重要性に光を当てることができるのです。私たちの研究に関わる研究者は皆、最新の科学技術を利用できることを誇りとしており、この姿勢が結果として最良の質のデータを収集することにつながっています。こうした基盤と実績、そしてあらゆる面で研究を広くサポートしてくれる人々や組織が存在しているので、この先もずっと研究を続けていくことが期待できるのです。もちろん、研究を継続するためには、科学の発展に貢献する極めて優れた結果を提出し、助成団体への申請内容を満たす知見を提供していくことが必要です。しかし、そうした作業はさらなる研究助成を得ることにつながるばかりでなく、人類への利益につながることでもあると考えられます。
私と同じように学際的な縦断研究を実施したいと考えている日本の研究者の皆さんにエールをお送りしたいと思います。こうした縦断研究を実施するのは不可能ではないですが、とても困難であることは事実です。しかし、事がうまく運んだときに得られる利益は非常に大きなものです。研究から多くを学ぶことができますし、当該分野でかなり重要な知見を報告することもできます。また、研究の専門性や方法論が異なる研究者達との協働作業はとても楽しいものであり、私にとってはこれも大きな収穫のひとつとなっています。
(…後略…)
2009年5月8日 フィル・A・シルバ
上記内容は本書刊行時のものです。