弁護士と児童精神科医の対話少年事件 心は裁判でどう扱われるか
高岡 健:編著
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 280ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3118-8 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2010年01月 書店発売日:2010年01月13日
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紹介

少年事件を手がける弁護士4人と少年の鑑定を行う精神科医が、2000年以降に起こった少年事件を取り上げ、加速度的に進んできた厳罰化の問題性と少年を取り巻く司法状況とともに、少年の心や生育環境にも目を向けて総合的に考えていくことの重要性を問う。

目次

 はじめに

第 I 部 心は少年法でどう扱われるか(相川裕×高岡健)

 1.非行少年の法と精神障害者の法
  永山則夫事件と神戸市小学生連続殺傷事件
  少年法の理念について
 2.少年法とはどういうものか
  少年事件の類型と処遇の流れ
  捜査段階での付添人活動
  家裁送致後の付添人活動
  審判開始後の付添人活動
 3.少年法で扱われる心
  人間は物質か関係か
  精神鑑定と調書漏示事件
  決定要旨公開の是非/保護処分の中味
 4.少年法「改正」・再「改正」・再々「改正」
  少年法「改正」へ至る流れ
  少年法「改正」の動きの背景にあるもの
  二〇〇〇年「改正」——被害者への配慮
  二〇〇〇年「改正」のもう一つの柱——厳罰化
  二〇〇〇年「改正」三つめの柱——少年審判手続きの変更
  日弁連の見解
  二〇〇七年「改正」のポイント
  二〇〇八年「改正」のポイント
  加害少年の人権は守れるか
  少年審判のあとの民事訴訟について

第II部 子どもは小さな大人ではない(川村百合×高岡健)

 1.逆送と五五条移送
  家裁の審判のあり方は変わったか
  家裁調査官・鑑別所技官が調べた資料と裁判結果の関係
  五五条移送を目指す弁護活動と情状弁護活動
 2.少年刑事裁判——模擬裁判を通して
  模擬裁判について
  裁判員制度下での社会記録はどうなるか
  調査官はきちんとした調査をやっていないのではないか
  調査票は何のためにあるのか
  裁判員制度の意義
 3.高田馬場事件をめぐって
  高田馬場事件とは
  高田馬場事件の争点とは
  鑑定留置への抗告
  鑑定の目的
  多動性行為障害?
  非行に至る動機を的確に認定できず
 4.板橋事件の意味するもの
  板橋事件
  少年院と少年刑務所

第III部 少年事件の背景と動因(多田元×高岡健)

 1.昭和区事件をめぐって
  少年事件と虐待
  介入すれば防止できた
  真面目な少年がなぜ
  女性への暴力は実の母との関係の反復
  実の母親から得られなかったものを求めて
  少年時代のいじめ
  情状鑑定
  プライバシーと裁判員制度
  情状鑑定の機能——社会復帰の促進
  昭和区事件の判決に対する評価
  同居女性への判決——虐待の幇助
 2.子どもセンター「パオ」とシェルター
  シェルター「丘のいえ」
 3.岡崎市ホームレス連続襲撃事件の少年たち
  少年C
  少年の気持ち
  事実認定と処遇決定とのひらき
  少年法で処遇を決める場合と児童福祉法で決める場合の違い
  厳罰化と遺族の感情
  C少年が通っていた学校のいじめ問題
  裁判官や調査官は変わったか
  少年へのまなざしは裁判官たちに共有されているか
  C少年の変化
 4.児童自立支援施設——愛知学園事件
  少女たちの乱

第IV部 少年事件の付添人・弁護人活動(高森裕司×高岡健)

 1.再び岡崎市ホームレス連続襲撃事件について
  ホームレス襲撃事件の弁護を引き受けるきっかけ
  K青年の第一印象と精神鑑定でわかったこと
  周囲にあわせて供述を変える
  殺意の有無を争点にせざるをえない現実
  コミュニティでのK青年——排除の構造
  ホームレスをめぐる状況
  裁判員制度における危惧
  一審判決について
  控訴事由
  人間関係の豊かさと貧しさのせめぎあい
  居場所がない、帰る場所がない
 2.「小さな」事件における付添人・弁護人活動
  付添人活動の実際
  少年とかかわる人たち
  裁判官・調査官とのカンファレンス
  審判の場での付添人の役割
  試験観察中の付添人の活動
  医療少年院に処遇された理由
  その後、少年との関係性
  夏に事件を起こしたわけ
  地裁における判決
  元付添人としての活動
 3.少年事件に携わる弁護士の誕生
  少年事件に関する勉強
  子どもの体系と大人の体系

 おわりに

前書きなど

はじめに

(…前略…)

 少年法の中に心を復権させることは可能なのか。これこそが、本書を上梓する最大のモチーフだった。
 そのために、この本の第 I 部では、相川裕弁護士との対話を通して、少年法の理念・非行少年をめぐる審判と処遇の流れ・三度にわたる少年法「改正」の論点を概観する。この部分は、本書のいわば総論に相当するものだ。
 第II部の前半では、川村百合弁護士との対話を通じて、検察官送致(いわゆる逆送ないし検送)が行なわれた後の少年刑事裁判について、詳細な検討を加える。後半では、具体的な事例として、刑事責任能力のない年齢の少女によって引き起こされた高田馬場事件と、原則逆送に満たない年齢でありながらも逆送された板橋事件を取り上げる。
 第III部では、多田元弁護士との対話を通じて、児童虐待と密接な関連を持つ少年事件(昭和区事件)を取り上げるとともに、子どもセンター「パオ」とシェルター設立の試みを紹介していただく。加えて、少年集団によって引き起こされた岡崎市ホームレス連続襲撃事件と、児童自立支援施設を舞台にした愛知学園事件の検討へと進んでいく。
 第IV部では、森裕司弁護士との対話を通じて、再び岡崎市ホームレス連続襲撃事件を取り上げ、その背景に横たわる構造を明らかにしていく。さらに、日常的にしばしば見られる「小さな」少年事件を素材に、付添人・弁護人活動の実際を語っていただく。そして、最後に私たちは、少年事件に携わる弁護士が、どのようにして誕生するかを知ることになる。

(…後略…)

著者プロフィール

高岡 健(タカオカ ケン)

精神科医。1953年徳島県生まれ。岐阜大学医学部卒。岐阜赤十字病院精神科部長などを経て、現在、岐阜大学医学部准教授。
著書に、『16歳からの〈こころ〉学』(青灯社)、『発達障害は少年事件を引き起こさない』(明石書店)、『自閉症論の原点』(雲母書房)、『やさしい発達障害論』(批評社)、『引きこもりを恐れず』(ウェイツ)など、共著に『殺し殺されることの彼方』(雲母書房)、『孤立を恐れるな!』(批評社)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。
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