聴覚障害児の学力を伸ばす教育
ドナルド・F・ムーアズ:編, デヴィッド・S・マーティン:編, 松藤 みどり:監訳, 長南 浩人:監訳, 中山 哲志:監訳
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 376ページ 並製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3115-7 C0037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2010年01月 書店発売日:2010年01月12日
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紹介

特別支援学校やインクルージョン教育など教育措置が多様化する中、現場教師は聴覚障害教育をいかに進めていくべきか。効果的な教科指導からカリキュラム構築、成績評価、進学・就労支援まで、児童・生徒の各々の特性に基づいた手法と心得を具体的に提言する。

目次

 日本語版刊行に寄せて
 まえがき
 謝辞

I 背景

 1 概観——一般教育および聴覚障害教育におけるカリキュラムと指導(ドナルド・F・ムーアズ/デヴィッド・S・マーティン)
 2 カリキュラムの選択——哲学的な立場(デヴィッド・S・マーティン/ドナルド・F・ムーアズ/パメラ・ラフト)

II 内容

 3 数学教育と聴覚障害の学習者(クローディア・M・パグリアロ)
 4 プリントリテラシー——読み書き技能の獲得(ドナルド・F・ムーアズ)
 5 科学教育(ハリー・G・ラング)
 6 社会科のカリキュラム(デヴィッド・S・マーティン)
 7 体育の役割の再考(デヴィッド・A・スチュワート/M・キャスリーン・エリス)
 8 巡回サービスの提供(ジョン・ラクナー)
 9 ろう文化についての指導(クローディン・ストーベック/ルーカス・マゴングワ)
 10 重複障害の生徒たち(トーマス・W・ジョーンズ/ジュリー・K・ジョーンズ/カレン・M・ユーイング)
 11 学校から就労への移行(バーバラ・ゲイル・ボンズ)

III カリキュラム全体にわたる指導配慮

 12 個別アセスメントと教育計画——適切な状況のもとでみた聴覚障害の生徒(マージェリー・ミラー)
 13 学業成績向上のために——学習方法と機会、その成果(マーク・マーシャーク/キャロル・コンヴァチーノ/ドニ・ラロック)
 14 認知方略の指導——全体に行きわたる原理(デヴィッド・S・マーティン)
 15 指導場面で実際的なコミュニケーション——教室内でのASLと英語に基づく手話(デヴィッド・A・スチュワート)
 16 古い問題に取り組む新しい方略——聴覚障害教育向上へのウェブに基づく技術・資源・アプリケーション(ハロルド・ジョンソン/ドナ・M・マーテンズ)

IV 最後のコメント

 まとめ(ドナルド・F・ムーアズ/デヴィッド・S・マーティン)
 執筆者紹介

 訳注
 監訳者あとがき
 索引

前書きなど

 まえがき

 (…前略…)


 構成

 テキストは4部に分かれている。第I部ではまず、ムーアズとマーティンが、一般教育と聴覚障害教育におけるカリキュラムと指導についてを、一般のカリキュラムを彼らが受けられるのか、また彼らが成功するのかに絞って述べる。マーティン、ムーアズおよびラフトによる、適切なカリキュラムと指導技術の精選についての短い章がこれに続く。
 第II部は、カリキュラムの内容への取り組みであり、本書の主要な部分である。パグリアロは全米数学教師協議会の基準を調べ、聴覚障害生徒の数学の成績が改善される可能性のある方法を示す。ムーアズは聴覚障害生徒のプリントリテラシーの発達について、背景となる情報を示し、論争となる要素である「フォニックス」に基礎を置いた手法ともっと包括的な手法について、落ちこぼれを作らない法(No Child Left Behind legislation)が要求する文脈の中で論じる。ラングは、学習の基本的理論はまだ開発されていないが、聴覚障害の学習者に合わせた指導法についての科学教育の分野には、知識がますます集積しつつあることを報告している。パグリアロの数学におけるアプローチと同様に、ラングも聴覚障害生徒の科学教育の改革を全米学術研究会議による全米科学教育基準と結びつけている。マーティンは、今日一般に社会科として知られているものの、歴史と地理に絞られていた頃から経済、政治学、社会学のような分野を含むようになるまでの発展をたどる。彼は聴覚障害の学習者の教育を、全米社会科協議会が立てた目標と関連づける。スチュワートとエリスは体力の必要性を強調し、私たちの学校の体育は過去の世代では「みにくいアヒルの子」であったと報告する。彼らは、聴覚障害児の体力が多くの場合、健聴児より劣っているとして、全米スポーツ・体育協会の支持する基準の実施を推薦している。ラクナーは聴覚障害生徒たちの教育的措置において、主として独立で完備した環境から現在の、少なくとも一部の時間、一般のクラスで教育を受ける環境まで、どう変化してきたかをたどる。ストーベックとマゴングワは、聴覚障害の歴史とろう文化は、聴覚障害児にも健聴児にもカリキュラムを構成するにふさわしい要素であると論じている。そして彼らは、ろう文化の指導をカリキュラムに組み込むことに関する情報を提供する。ジョーンズ、ジョーンズおよびユーイングは、重複障害のある生徒のための確実で、一体性のある、効果的なカリキュラムの基礎構造を確立し、2つ以上の障害を持つ子ども特有のニーズを強調する。知的障害のある聴覚障害児は、聴覚障害児のための典型的なカリキュラムでも知的障害のある子どもの典型的なカリキュラムでも扱われない学習ニーズを持つのである。ボンズは、その多くは実施されていないが、小・中学校から高等教育まで、そして就労までの子どもの進歩を促進するよう企図する法令と、聴覚障害者個人の関わり合いを概説する。
 第III部では、カリキュラムを横断する指導とアセスメントについて配慮すべきことを含んでいる。ミラーは、聴覚障害生徒にとって有意義な個別アセスメントと教育計画の提供について分析する。彼女は、基準、テストの調整、障害に合わせた調整、そして全般的な公平さの問題について論じるが、それらは標準化したテスト運動の要求に関わるものである。続いてマーシャーク、コンヴァチーノおよびラロックは、聴覚障害の学習者がもつ教育に関連する今日的な特性について書き、マーティンは認知方略の指導の重要性を指摘する。次にスチュワートが、手話による40年間のコミュニケーションを振り返り、彼が指導的・実際的なコミュニケーションだと特徴づける、指導場面で実際的なコミュニケーション(IPC)においては、ASLと英語に基づく手話が効果的な道具として使用できるという結論を出す。ジョンソンとマーテンズは、聴覚障害の学習者特有の応用を交えて、ウェブを基盤にした技術に焦点を当てた、21世紀の現在と未来の学習環境を探索する。
 第IV部で、ムーアズとマーティンは、絶え間ない変化と今まで予期していなかった最近の変化に焦点を当てて、この分野の発展を短くまとめる。
 このタイプの書物ではどの編集者も、何を含み何を含まないかという決断を迫られるが、カバーしないと決めた領域が重要である可能性がある。本書も同様である。通常の学級への措置が増加した観点から見れば、その可能性のある主要なものは通訳者の役割であろう。彼らの役割がますます重要になった今日、教育的通訳の訓練・活用・効果は、非常に変化している。残念ながらこの領域の研究は、今のところ枯渇している。本書では別のテーマを執筆したマーシャーク、コンヴァチーノおよびラロックによる研究で、この問題が解決されることを私たちは願っている。

(…後略…)

著者プロフィール

ドナルド・F・ムーアズ(ムーアズ,ドナルド・F)

ギャローデット大学教育学部教授をへて現在、北フロリダ大学特殊児童と聾教育学部教授。『アメリカン・アナルズ・オブ・ザ・デフ』(American Annals of the Deaf)誌編集長、『アフリカン・アナルズ・オブ・ザ・デフ』(African Annals of the Deaf)誌副編集長。

上記内容は本書刊行時のものです。

デヴィッド・S・マーティン(マーティン,デヴィッド・S)

ギャローデット大学教育学部名誉教授・名誉学部長。聴覚障害・高次の思考・社会科教育に関する論文・書籍を多数執筆。

上記内容は本書刊行時のものです。

松藤 みどり(マツフジ ミドリ)

1993年、筑波大学大学院修士課程教育研究科修了。筑波大学附属聾学校教諭を経て、1994年より筑波技術短期大学助教授。2005年より筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授。
著書に、中野善達・根本匡文編著『聴覚障害の基本と実際』(分担執筆、田研出版、2006年)、奥野英子編著『聴覚障害児・者支援の基本と実践』(分担執筆、中央法規出版、2008年)訳書に、ペール・エリクソン著『聾の人びとの歴史』(中野善達と共訳、明石書店、2003年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

長南 浩人(チョウナン ヒロヒト)

1995年、筑波大学大学院修士課程教育研究科修了。2001年博士(心身障害学)取得。
神奈川県立平塚ろう学校教諭、高知県立高知女子大学専任講師を経て、2008年より筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター助教授。2009年より筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター准教授。
著書に、『聴覚障害児の日本語指導における手話の使用に関する実験的研究』(風間書房、2005年)、『手話の心理学入門』(編著、東峰書房、2005年)、四日市章編著『リテラシーと聴覚障害』(分担執筆、コレール社、2009年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

中山 哲志(ナカヤマ サトシ)

1992年、筑波大学大学院修士課程教育研究科修了。筑波大学附属聾学校教諭を経て、2000年より東京成徳大学人文学部助教授、2001年より同教授。現在、東京成徳大学応用心理学部教授。
著書に、中野善達監訳『聾・聴覚障害百科事典』(分野別監修、明石書店、2002年)、『福祉心理学——援助を必要とする人のために』(岡田明・宮本文雄との共編著、ブレーン出版、2002年)、國分康孝監修『カウンセリング心理学事典』(第IX章編集、誠信書房、2008年)など。

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